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しおりを挟むチャールズは一縷の望みを水晶に託すように、毎日水晶を撫でまわし、よくわからない祈りを捧げ、執務そっちのけで過ごす日々が続いた。
やがて、他の女性に邪な性欲を抱くのが恨みを買っているのであれば、妻であるキアラに一途になればよいのではないかと思うようになった。
この際、キアラ一人だけになってもいいじゃないか。
今の自分には、一人抱けるだけでも僥倖なのではないだろうか。
しかし、キアラはもうチャールズに触れられたくないという。
その考えを変えさせなければならない。
チャールズがキアラ一筋になったとわかれば、以前のように僕を愛してくれるだろう。
今思えば、チャールズしか男を知らないキアラの体は真っ新だったのだ。
どの男の手垢もついていないのだ。
時間をかけて、自分の好みに育てていけばいい。
自分の妻だからこそ、それが可能であることをようやく思い出した。
まず、キアラの信頼を取り戻さなければならない。
呪ったなどと言って遠ざけていた息子ルインも可愛がってやらなければ。
チャールズは、キアラとルインに接触し始めた。
キアラは、急にお茶や食事、息子との時間を共に過ごそうと近寄ってくるチャールズが不思議だった。
不能になっているチャールズは外に遊びに行くことはなくなった。
だけど、今更キアラに擦り寄ってきてもチャールズとは閨を共にする気はないと伝えているし、不能なので出来やしない。
そして、不能を治してやる気もない。
キスを迫られても嫌なので、さりげなく距離を開けたりルインを抱いて誤魔化している。
次期侯爵として、あまりにもだらしない女遊びをやめさせたかったけれど、これはこれで鬱陶しい。
遊べないように不能になる仕返しをして満足していたけれど、これは想定外だった。
キアラは週2度ほどの外出を3度にしてしまうほどチャールズとの時間に拒否感を覚えた。
愛情は綺麗サッパリと消えたので、お互いに仮面夫婦のように過ごせばいいと思っていた。
単なる家族として同じ空間にいるのであれば問題ない。
だが、チャールズからは邪な感情が溢れているのがわかり、近づきたくなかった。
チャールズはチャールズで、キアラの外出を疑問に思い始めて後をつけるようになった。
結果、毎回同じ場所を訪れて帰ってくる。
特に怪しい動きはないけれど、その場所で何をしているのかがわからない。
何度か見張ってみたが、他に出入りしている者がいないのだ。
「あの部屋は誰の部屋だ?キアラは何をしに訪れている?」
毎回連れているのは、キアラが実家から連れてきた執事のような侍従のような護衛のようなレナード。
もちろん、レナードも部屋から出てこないことから中にいる誰かとキアラが2人きりなわけではない。
そもそも部屋に何人いるかも不明だ。男か女かも。
わかるのは、キアラが最後に入って、キアラが最初に出てくるという事実。
チャールズは侍従のクルスに、あの部屋の契約者を調べさせた。
すると、契約者はなんとレナードだった。
「どういうことだ?レナードが契約している部屋にキアラが訪れている。
キアラの指示で借りている部屋か?
キアラの秘密の趣味のための部屋とか?それとも何かを隠している?」
キアラと数年婚約者であったにも関わらず、キアラの好みを知らなかった。
刺繍や読書であればわざわざ隠すようなことでもない。
では何だ。
隠し事。隠すようなこと。……浮気?……まさか。でも、だとすると相手は……レナード?
いや、まさか。キアラがそんな……ない、よな?
キアラは結婚当初とは雰囲気が変わった。
僕を愛していた気持ちが冷めたのか、言いたいことはハッキリ言うし穏やかな空気感がなくなった。
出産して母になったこともあるだろうが、余裕や自信が感じられる。
正直言って、前よりも今のキアラの方が好みだし色っぽく見える。
ん?色っぽい?
僕が抱いていた時よりも、色っぽいとはどういうことだ?
……まさか、本当に?
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