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藤之津の落とし穴
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今日は強めの南風が吹いていた。
正に追い風であり、小舟で早月川を下って行った新九郎たちは、半刻もせずに河口の藤之津に到着した。
藤之津は、海辺に整備された港に沿って長い大路地が開かれており、その両脇に船問屋や大きな商家、小さな青物屋や居酒屋まで様々な店がずらりと立ち並び、大きな賑わいを見せている町である。
数多くの商店により藤之津の経済は回っているが、何と言っても河川交通、海上交易がその繁栄の源泉であるので、この町ではやはり船問屋の存在が目立つ。どの店も立派な構えで、多くの客や奉公人たちの出入りが忙しい。
そんな多くの船問屋の中でも、最も大きいのが鹿島屋と言う問屋であり、その次に大きいのが田中屋であった。
それ故に、韮沢、兼木らは、
「二手に分かれて鹿島屋と田中屋へ行こう」
と、一行を二組に分けてその二つの船問屋へと向かった。
新九郎と今井一馬は、韮沢万次らと共に鹿島屋へ向かい、他の者らは兼木に従って田中屋へ向かった。
しかし、彼らは鹿島屋、田中屋を徹底的に調べたが何も出て来なかった。
偶然にも、その二軒とも今日の船はちょうどこれから出ると言うことであり、その船に立ち入って積荷を調べたのだが、青苧や縮、金銭などの類、その他に怪しい物などは一切出て来なかった。
「おかしい。何も出て来なかった。怪しいところも一切ない」
田中屋を出た兼木たちが、鹿島屋へ来て韮沢たちに困った顔を見せると、
「こっちもだわ……藤之津ではなかったのかのう」
と、韮沢も腕を組んでため息をつき、一行は鹿島屋の軒先であれこれと話し始めた。
その時、新九郎は少し前から喉の渇きを覚えていたが、とうとう我慢できずに鹿島屋の中へ入り、たまたまいた一人の女中に声をかけた。
「お女中、すまぬが水の一杯なりもらえぬか? 茶ではなく水でいい」
まだ幼い面差しの残る、少女と言える年ごろの女中であった。彼女は頬を少し赤くして、
「はい、ではすぐにお持ちしますのでこちらでお待ちくださいませ」
と言って、奥へ向かった。
鹿島屋はとても広い。
中央に広く長く奥へと続く土間が通っており、それを囲んで三方に一段高い板の間と座敷がある。そこには帳場や机がいくつもあって、奉公人が客と商談をしたり、頭を抱えながら算盤を弾いたりし、その間を丁稚や女中たちが忙しく動き回って繁盛している様子を見せている。
新九郎はその座敷の片隅に腰を下ろし、そんな彼らの仕事ぶりをじっと眺めていた。
郡方小物成役の新九郎には興味深い光景であった。
「どうぞ」
少女のような女中が、水を入れた茶碗をお盆に乗せて持って来た。
「あいすまぬな」
新九郎がにこりと微笑んで礼を言い、茶碗を取った時であった。
店の軒先で騒ぎ声がした。
韮沢、兼木、今井一馬らは、軒先でこの後どうするか話し合っていたのだが、そこへ足音を響かせて数人の男たちがやって来た。
「お前たちか。鹿島屋と田中屋に入って勝手なことをしていると言うのは」
先頭に立つ大柄な男が黒漆塗の陣笠を上げて鋭い目を左右に光らせた。長羽織に袴をつけ、二刀も差している。
「私は藤之津町奉行の林である」
と、林は先に自ら名乗ると、
「失礼だがどなたかな。この町で勝手なまねは許されませぬぞ」
「おお、藤之津奉行の林様でしたか。それがし、馬廻り組の兼木と申します」
一行を代表して、兼木が進み出た。
「同じく馬廻り組の韮沢と申します」
と、兼木、韮沢が名乗り、続けて今井一馬たちを指して名前を挙げると、
「ふむ、兼木どの、韮沢どの、ご尊名は伺っております。しかし、ご両所、このように大勢を引き連れてここで何をなさっておられるのか」
林は一行の者たちの顔を記憶するようにゆっくりと見て行った。
「実は、藩内で抜け荷を行っている者がいるとの疑いがあり、大鳥家老の指示で調べをしております」
「ほう、大鳥様のか」
林は、再び細い目を光らせた。
藤之津奉行の林はその態度を明らかにはしていないが、城に来た時には小田内膳と言葉を交わしているところを度々見られており、小田派に取り込まれているのは確実との噂であった。
「しかし、大鳥様よりそのような連絡は来ておりませぬが」
林は、確かめるように背後の部下たちを見た。部下たちは皆、頷いた。
「ええ、緊急のことですので。しかし、我々はこのようにご家老から書状をいただいて来ております。どうかお許し願いたい」
と言って、韮沢万次が大鳥順三郎の手紙を差し出した。
だが、それを広げた藤之津奉行の林は眉を動かした。
「確かに抜け荷の調べの事が書かれており、大鳥様の署名もある。しかし、ここには坂下の関所のことしか書いておりませぬな。これではここ藤之津で勝手に調べ回るのは許可できませぬ」
韮沢、兼木らは、顔色を変えた。
大鳥順三郎の手落ちと言える。大鳥が出した書状には、坂下の関所のことしか書いていなかった。領内全ての地においての調べを許可する、と書いておけば良かったのだが、江戸への道は陸路、としか頭になかった大鳥は、坂下の関所の名前だけを書いていた。
しかし、兼木は食い下がった。
「ですが、これは抜け荷に関すること。藩の一大事であります故、どうかお許し願いたい」
「ふむ、しかしご存知の通り、ここ藤之津は領内でも城下の次に重要な町。ご家老衆からの指示と許可を私が確認しなければ勝手な行いはできない掟となっておる」
「そのようなことは……」
「そして、勝手な行いをした者は町奉行である私が捕縛できることになっておる」
林は冷静な話しぶりであったが、口端に薄笑いが浮かんだ。
その表情で、皆察した。林は確実に小田内膳に取り込まれている。そして、韮沢、兼木らを邪魔するつもりである。と言うことは、ここ藤之津で城戸流斎、小田派による何らかのことが行われており、林もそれに関わっている可能性が高い。
これは何としても、と思った兼木が、
「林様、火急のことでござります。坂下のことしか書いておりませぬが、この通り大鳥様の書状もある。何とか許してもらえないでしょうか」
「そうは言っても、掟は掟。私が勝手なことを許したことがわかれば奉行である私が罰せられる」
「いや、我々が抜け荷のことをつきとめれば罰せられることはないでしょう」
「つきとめられなかった場合はどうなる。やはり勝手なことを許した罪で私が咎められるではないか。それどころではない。お主らも処罰を受けるのだぞ」
これは埒が明かない、と兼木がため息をついて何気なく右を向くと、店内の通り土間の最奥で、こちらを見ながら立ち上がった新九郎の姿が目に入った。
新九郎の方は、軒先で何が起きているのかと兼木たちの方をじっと見ていたのだが、水を飲み終えてすぐに自分も向かわねば、とちょうど茶碗を置いて立ち上がったところであった。
だが、それを見た兼木は咄嗟に何かを思いつき、新九郎に向けて目をぱちぱちさせながら下げた右手だけを動かして「向こうへ行け」と言うような合図を出した。
新九郎は、兼木の目配せと手の動きを見て、また兼木の前に立っている武士たちの身なりの立派さを見て、何が起きているのか凡そを理解した。
新九郎は気づかれぬように静かに座敷に上がり、先ほど水を持ってきてくれた少女のような女中を見つけて再び声をかけた。
「すまぬが、水を飲んだら今度は用を足したくなった。厠を借りたいのだが」
少女はまたも両頬を赤くして、
「はい、裏庭にございます。こちらから行けますのでご案内いたします」
「すまぬ」
新九郎はさっと履物を取って、少女の後に着いて奥へと向かった。
それを見届けた兼木は、今度は韮沢万次、今井一馬らと押し問答になっていた林に向かって、
「林様、わかり申した。では城下の大鳥様に向けて許可をいただく早馬を出していだけませぬか? 戻って来るまで、我々は勝手なことをせずに奉行所でお待ちいたします。これならば文句はありますまい」
「ふむ、まあそれならばよい」
林は頷いたが、陣笠の下の目にはやはり薄笑いが浮いていた。
「おい、兼木」「兼木様……」
と、韮沢、一馬らは顔色を変えたが、振り返った兼木が「仕方あるまい。まあ、ご家老の許可が来るまで一刻ほど待つだけだ」
と言いながら目配せをした。
正に追い風であり、小舟で早月川を下って行った新九郎たちは、半刻もせずに河口の藤之津に到着した。
藤之津は、海辺に整備された港に沿って長い大路地が開かれており、その両脇に船問屋や大きな商家、小さな青物屋や居酒屋まで様々な店がずらりと立ち並び、大きな賑わいを見せている町である。
数多くの商店により藤之津の経済は回っているが、何と言っても河川交通、海上交易がその繁栄の源泉であるので、この町ではやはり船問屋の存在が目立つ。どの店も立派な構えで、多くの客や奉公人たちの出入りが忙しい。
そんな多くの船問屋の中でも、最も大きいのが鹿島屋と言う問屋であり、その次に大きいのが田中屋であった。
それ故に、韮沢、兼木らは、
「二手に分かれて鹿島屋と田中屋へ行こう」
と、一行を二組に分けてその二つの船問屋へと向かった。
新九郎と今井一馬は、韮沢万次らと共に鹿島屋へ向かい、他の者らは兼木に従って田中屋へ向かった。
しかし、彼らは鹿島屋、田中屋を徹底的に調べたが何も出て来なかった。
偶然にも、その二軒とも今日の船はちょうどこれから出ると言うことであり、その船に立ち入って積荷を調べたのだが、青苧や縮、金銭などの類、その他に怪しい物などは一切出て来なかった。
「おかしい。何も出て来なかった。怪しいところも一切ない」
田中屋を出た兼木たちが、鹿島屋へ来て韮沢たちに困った顔を見せると、
「こっちもだわ……藤之津ではなかったのかのう」
と、韮沢も腕を組んでため息をつき、一行は鹿島屋の軒先であれこれと話し始めた。
その時、新九郎は少し前から喉の渇きを覚えていたが、とうとう我慢できずに鹿島屋の中へ入り、たまたまいた一人の女中に声をかけた。
「お女中、すまぬが水の一杯なりもらえぬか? 茶ではなく水でいい」
まだ幼い面差しの残る、少女と言える年ごろの女中であった。彼女は頬を少し赤くして、
「はい、ではすぐにお持ちしますのでこちらでお待ちくださいませ」
と言って、奥へ向かった。
鹿島屋はとても広い。
中央に広く長く奥へと続く土間が通っており、それを囲んで三方に一段高い板の間と座敷がある。そこには帳場や机がいくつもあって、奉公人が客と商談をしたり、頭を抱えながら算盤を弾いたりし、その間を丁稚や女中たちが忙しく動き回って繁盛している様子を見せている。
新九郎はその座敷の片隅に腰を下ろし、そんな彼らの仕事ぶりをじっと眺めていた。
郡方小物成役の新九郎には興味深い光景であった。
「どうぞ」
少女のような女中が、水を入れた茶碗をお盆に乗せて持って来た。
「あいすまぬな」
新九郎がにこりと微笑んで礼を言い、茶碗を取った時であった。
店の軒先で騒ぎ声がした。
韮沢、兼木、今井一馬らは、軒先でこの後どうするか話し合っていたのだが、そこへ足音を響かせて数人の男たちがやって来た。
「お前たちか。鹿島屋と田中屋に入って勝手なことをしていると言うのは」
先頭に立つ大柄な男が黒漆塗の陣笠を上げて鋭い目を左右に光らせた。長羽織に袴をつけ、二刀も差している。
「私は藤之津町奉行の林である」
と、林は先に自ら名乗ると、
「失礼だがどなたかな。この町で勝手なまねは許されませぬぞ」
「おお、藤之津奉行の林様でしたか。それがし、馬廻り組の兼木と申します」
一行を代表して、兼木が進み出た。
「同じく馬廻り組の韮沢と申します」
と、兼木、韮沢が名乗り、続けて今井一馬たちを指して名前を挙げると、
「ふむ、兼木どの、韮沢どの、ご尊名は伺っております。しかし、ご両所、このように大勢を引き連れてここで何をなさっておられるのか」
林は一行の者たちの顔を記憶するようにゆっくりと見て行った。
「実は、藩内で抜け荷を行っている者がいるとの疑いがあり、大鳥家老の指示で調べをしております」
「ほう、大鳥様のか」
林は、再び細い目を光らせた。
藤之津奉行の林はその態度を明らかにはしていないが、城に来た時には小田内膳と言葉を交わしているところを度々見られており、小田派に取り込まれているのは確実との噂であった。
「しかし、大鳥様よりそのような連絡は来ておりませぬが」
林は、確かめるように背後の部下たちを見た。部下たちは皆、頷いた。
「ええ、緊急のことですので。しかし、我々はこのようにご家老から書状をいただいて来ております。どうかお許し願いたい」
と言って、韮沢万次が大鳥順三郎の手紙を差し出した。
だが、それを広げた藤之津奉行の林は眉を動かした。
「確かに抜け荷の調べの事が書かれており、大鳥様の署名もある。しかし、ここには坂下の関所のことしか書いておりませぬな。これではここ藤之津で勝手に調べ回るのは許可できませぬ」
韮沢、兼木らは、顔色を変えた。
大鳥順三郎の手落ちと言える。大鳥が出した書状には、坂下の関所のことしか書いていなかった。領内全ての地においての調べを許可する、と書いておけば良かったのだが、江戸への道は陸路、としか頭になかった大鳥は、坂下の関所の名前だけを書いていた。
しかし、兼木は食い下がった。
「ですが、これは抜け荷に関すること。藩の一大事であります故、どうかお許し願いたい」
「ふむ、しかしご存知の通り、ここ藤之津は領内でも城下の次に重要な町。ご家老衆からの指示と許可を私が確認しなければ勝手な行いはできない掟となっておる」
「そのようなことは……」
「そして、勝手な行いをした者は町奉行である私が捕縛できることになっておる」
林は冷静な話しぶりであったが、口端に薄笑いが浮かんだ。
その表情で、皆察した。林は確実に小田内膳に取り込まれている。そして、韮沢、兼木らを邪魔するつもりである。と言うことは、ここ藤之津で城戸流斎、小田派による何らかのことが行われており、林もそれに関わっている可能性が高い。
これは何としても、と思った兼木が、
「林様、火急のことでござります。坂下のことしか書いておりませぬが、この通り大鳥様の書状もある。何とか許してもらえないでしょうか」
「そうは言っても、掟は掟。私が勝手なことを許したことがわかれば奉行である私が罰せられる」
「いや、我々が抜け荷のことをつきとめれば罰せられることはないでしょう」
「つきとめられなかった場合はどうなる。やはり勝手なことを許した罪で私が咎められるではないか。それどころではない。お主らも処罰を受けるのだぞ」
これは埒が明かない、と兼木がため息をついて何気なく右を向くと、店内の通り土間の最奥で、こちらを見ながら立ち上がった新九郎の姿が目に入った。
新九郎の方は、軒先で何が起きているのかと兼木たちの方をじっと見ていたのだが、水を飲み終えてすぐに自分も向かわねば、とちょうど茶碗を置いて立ち上がったところであった。
だが、それを見た兼木は咄嗟に何かを思いつき、新九郎に向けて目をぱちぱちさせながら下げた右手だけを動かして「向こうへ行け」と言うような合図を出した。
新九郎は、兼木の目配せと手の動きを見て、また兼木の前に立っている武士たちの身なりの立派さを見て、何が起きているのか凡そを理解した。
新九郎は気づかれぬように静かに座敷に上がり、先ほど水を持ってきてくれた少女のような女中を見つけて再び声をかけた。
「すまぬが、水を飲んだら今度は用を足したくなった。厠を借りたいのだが」
少女はまたも両頬を赤くして、
「はい、裏庭にございます。こちらから行けますのでご案内いたします」
「すまぬ」
新九郎はさっと履物を取って、少女の後に着いて奥へと向かった。
それを見届けた兼木は、今度は韮沢万次、今井一馬らと押し問答になっていた林に向かって、
「林様、わかり申した。では城下の大鳥様に向けて許可をいただく早馬を出していだけませぬか? 戻って来るまで、我々は勝手なことをせずに奉行所でお待ちいたします。これならば文句はありますまい」
「ふむ、まあそれならばよい」
林は頷いたが、陣笠の下の目にはやはり薄笑いが浮いていた。
「おい、兼木」「兼木様……」
と、韮沢、一馬らは顔色を変えたが、振り返った兼木が「仕方あるまい。まあ、ご家老の許可が来るまで一刻ほど待つだけだ」
と言いながら目配せをした。
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