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薄氷鋭刃の間
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全員、あの濃紺装束で頭巾と覆面をしている。
「簡単に引っかかってくれた助かったぞ」
前を塞いだ二人のうち、大柄な男が低い声で言った。
覆面の隙間の目が笑っている。
「燕もそうですが、甚八の力も大きい。これで奴を元の地位に戻してやっても良いのでは」
別の男が言った。
――燕? いや、甚八とは先ほどの樵か? そうか……。
新九郎、辰之助、共に唇を噛んだ。
あの樵の甚八は、この連中の仲間だったのだ。
恐らく、今井一馬も似たような手でやられたに違いない。
新九郎は、背につけられた切っ先を意識しながら、前と左右に目を配って言った。
「俺たちが来るのを待っていたのか?」
「そういうことだ。こうもうまく行くとは思わなんだが」
前に立つ大柄な男は、なんと自ら覆面を外した。
やや色白だが、猫のような目と高い鼻を備えた顔が露わになった。
その顔を見て、新九郎は思った。
――どこかで見たことがある顔だ。
だが、緊張状態にあることもあって思い出すことができない。
「今井は生きているのか?」
三木辰之助が、寝転がされている一馬を見ながら訊くと、
「安心しろ、薬で眠っているだけだ。まあ、すぐにお前たちと共に始末するがな」
大柄な猫目の男が答えた。
どうやらこの男がこの者たちの頭領らしい。
「何故このようなことをする」
新九郎が訊くと、
「理由は単純よ。お前たち三人が邪魔だからだ」
と、大柄な男が答えてから、目に怒りの色を見せた。
「鉢窪村の一件以後、お前たちがいるせいで我々の仕事がなかなか上手く行かぬ。我々の目的の妨げになる大鳥の手の者を始末しようとしても、お前たちの誰かが必ず邪魔をする。調べてみれば、お前たち三人は一刀流戸沢道場の中でも特に優れた高弟だったそうではないか。それ故、まずはお前たち三人を始末しなければならんと思ってな」
猫目の大男は更に続けた。
「そこで策を練っていたいたところ、運良くこの今井一馬が、のこのこと我々の忍び小屋に探りに来た。たった一人であれば捕らえるなど造作もない。すぐに捕縛し、殺そうと思った。だが、寸前で思ったのだ。お前たちは幼少の頃からの友人であったそうではないか。ならば、こいつを餌にしてお前たち二人も釣れるのではないかとな」
「卑怯者め」
新九郎が男を睨んだ。
「卑怯? 策と言って欲しいものだな。戦国期にはこの程度のことは初歩の初歩。武士も名ばかりになって情けないことよ」
男が大声で笑うと、他の男たちも低く笑った。
そこで、今井一馬が目を覚ました。一馬は目を開けると、新九郎と辰之助に気付いて身体を動かした。
「し、新九郎、辰之助……」
一馬は弱っていた。掠れた声を上げると、大柄な猫目の男は目を怒らせて、
「黙っておれ」
と、足でその背を踏みつけた。一馬が呻き声を上げた。
「貴様!」
辰之助がカッとして声を荒げたが、すぐさま「動くな!」と声がして、背後の者が剣の切っ先を辰之助の背に押した。
「うっ……」
辰之助は苦痛の声を漏らした。背の肉にわずかながらも刃を刺し込まれたらしい。
「我々の目的はお前たち三人を殺すこと。だが、その前にもう一つ大事なことがある」
大柄な男が悠然と新九郎を見た。
「黒須新九郎、あの連判状はどこにやった?」
新九郎は眉をぴくりと動かした。
「連判状? 何のことだ?」
新九郎がとぼけると、
「ごまかすな。あの鉢窪村の時、我々の仲間が奪い忘れたものだ。貴様が持ち去ったのであろう」
「何のことかわからないな」
「とぼけるのもいい加減にせよ。貴様が弥左衛門の屋敷を脱出した後、お前たち三人であの連判状を検めているのを、我々の仲間が見ているのだ」
大柄な猫目男が苛々しながら言うと、
「へえ。あれはそんなに大事なものか」
新九郎は薄笑いで言った。
「あの連判状、貴様が持ち去ったが、貴様はきっと目付衆に渡すものだと思っておった。ならば問題はない。いずれは我々の元に戻るからな」
「お前たちは目付衆とも仲間か」
新九郎が訊いた。
大柄な猫目男はその問いを無視し、
「だが、お前はあの連判状を目付に渡さなかったであろう。それ故、我々はお前の屋敷を隅から隅まで調べた」
「なにっ?」
新九郎は驚いた。
「だが、やはり見つからなかった。あの連判状はどこにやったのだ」
猫目男は新九郎を睨んだ。
だが新九郎は驚いた顔のまま、訊き返した。
「待て。私の屋敷を隅から隅まで調べただと?」
「ああ」
「私はずっと遠慮処分で屋敷にいた。貴様らのような怪しい者がいればすぐに気付く。どうやって私の屋敷を調べたのだ」
新九郎が言うと、男は低く笑った。
「黒須新九郎、我々を甘く見るなよ。我々にとっては、そのようなことは造作もないことだ」
「それにしても……」
新九郎は言葉が無かった。ずっと屋敷にいたのだ。信じ難い話である。
「で、あの連判状はどこにやった?」
猫目の男は再び苛つきながら訊いた。
新九郎は一呼吸置いて心を落ち着かせてから、にやりと笑った。
「知っていたとしても、答えると思うか」
「……ふん、なるほどな。では、もう用はない。死んでもらうだけだ」
「いや、待て。お主たちを使っているのは小田内膳さまか? 全て、小田内膳さまの命令か?」
新九郎が訊くと、大柄な男は噴き出して笑った。
「小田内膳だと? こいつは笑える」
同時に、他の男たちもおかしそうに笑った。
猫目の男が笑ったまま言った。
「あんな小物に誰が使われるか。むしろ、我々が小田内膳を使っているのだ」
「何だと?」
新九郎、辰之助、そして転がされている今井一馬も目を瞠った。
「どういうことだ」
「どうもこうも、小田内膳など我々の駒に過ぎぬと言うことだ」
「駒だと……?」
三人は愕然とした。
新九郎は唾を飲み込み、
「小田内膳さまは筆頭家老だぞ」
「ははっ、そもそも奴を筆頭家老にしてやったのも我々の力のようなものだ」
「どういうことだ」
「ふっ」
猫目の男は答えなかった。新九郎は更に訊いた。
「では、小田さまを筆頭家老にした上でその地位を利用して不正に金を集めさせ、その邪魔になる者をお前たちが殺しているということか」
「簡単に言えばそうだ」
猫の目のような男はさらりと言って笑った。
「…………」
新九郎は、四方の男たちを見回した。
「それで、小田家老を操り、金を集めて、お前たちは何をするつもりだ? その目的は何だ?」
猫目の男はくっくっと笑った。
「教えてやれるのはここまでだ。我々が何をするか、あの世から見ているんだな」
と言って、猫目の男は手を上げた。新九郎たちをやれ、と言う合図なのであろう。
新九郎、辰之助、共に瞬間的に覚悟を決めた。
背後に刃を突き付けられているが、自分たちも手に抜き身を握ったままである。
やられる前に、やれるか。一瞬が命を決める。
だが、その時であった。
「貴様らの目的は殿の暗殺、そして藩の乗っ取りだろう?」
不意に、静かな声が背後の玄関の方から聞こえた。
「何っ?」
新九郎たち三人が驚愕し、猫目の男が「誰だ」と鋭く叫んで他の者らも振り返った瞬間、黒い人影が疾風と化して躍り込んで来て、青銀の刃光が左右に煌めいて鮮血を噴いた。
悲鳴と共に、新九郎と辰之助の背に刃の切っ先を突き付けていた男二人が崩れ落ちた。
その機を逃さなかった。
辰之助がすかさず右の男に斬りつけた。
猫目の大男は顔を怒らせて「おのれっ!」と剣を抜き、足下に転がる今井一馬に突き刺そうとしたが、すでに動いていた新九郎の剣が一閃、その白刃を跳ね上げた。続けて足蹴りを入れて猫目の男を吹き飛ばすと、新九郎はすぐに一馬の縄を切って解放した。
「すまぬ」
一馬は短く礼を言って立ち上がった。
その右手へ、「動けるか? 使え」と早口に言って、新九郎は脇差を抜いて渡した。
殺気を感じて右を見た。すでに体勢を戻した猫目の男が腰を低くして飛んで来ていた。新九郎は左下から摺り上げの剣を放ってその跳躍を止めると、返す刀で袈裟に斬り戻した。
猫目の男が正面から受け止め、鍔迫り合いとなった。
だが、猫目の男は凄まじい強力であった。体格と膂力に恵まれた辰之助なら互角であったろうが、剣の腕こそ立つものの人並みの体格でしかない新九郎には受け止めきれず、じりじりと押された。だがその横から、一馬が脇差を鋭く突いた。
ちっ、と舌打ちをして、猫目の男は横へ飛びのいたが、その瞬間、驚きの顔をした。
先ほど乱入して来た謎の男と三木辰之助が、他の者たち二人を斬り伏せ、残りの二人をも追い詰めていたからだ。
新九郎は、ちらとその方へ目をやると、乱入して来た男の顔を見て、あっと声を上げた。
「南条さん……!」
その男こそ、先日領内で目撃されて目付衆が総出で探している男。一刀流戸沢道場での新九郎らの兄弟子に当たり、昨年突然上役を斬って逐電した南条宗之進であった。
伸びきった総髪を後ろで束ね、髭も伸びて衣服も垢じみた完全なる浪人の姿であるが、間違いなく開藩以来の天才剣士と言われた南条宗之進その人であった。
「簡単に引っかかってくれた助かったぞ」
前を塞いだ二人のうち、大柄な男が低い声で言った。
覆面の隙間の目が笑っている。
「燕もそうですが、甚八の力も大きい。これで奴を元の地位に戻してやっても良いのでは」
別の男が言った。
――燕? いや、甚八とは先ほどの樵か? そうか……。
新九郎、辰之助、共に唇を噛んだ。
あの樵の甚八は、この連中の仲間だったのだ。
恐らく、今井一馬も似たような手でやられたに違いない。
新九郎は、背につけられた切っ先を意識しながら、前と左右に目を配って言った。
「俺たちが来るのを待っていたのか?」
「そういうことだ。こうもうまく行くとは思わなんだが」
前に立つ大柄な男は、なんと自ら覆面を外した。
やや色白だが、猫のような目と高い鼻を備えた顔が露わになった。
その顔を見て、新九郎は思った。
――どこかで見たことがある顔だ。
だが、緊張状態にあることもあって思い出すことができない。
「今井は生きているのか?」
三木辰之助が、寝転がされている一馬を見ながら訊くと、
「安心しろ、薬で眠っているだけだ。まあ、すぐにお前たちと共に始末するがな」
大柄な猫目の男が答えた。
どうやらこの男がこの者たちの頭領らしい。
「何故このようなことをする」
新九郎が訊くと、
「理由は単純よ。お前たち三人が邪魔だからだ」
と、大柄な男が答えてから、目に怒りの色を見せた。
「鉢窪村の一件以後、お前たちがいるせいで我々の仕事がなかなか上手く行かぬ。我々の目的の妨げになる大鳥の手の者を始末しようとしても、お前たちの誰かが必ず邪魔をする。調べてみれば、お前たち三人は一刀流戸沢道場の中でも特に優れた高弟だったそうではないか。それ故、まずはお前たち三人を始末しなければならんと思ってな」
猫目の大男は更に続けた。
「そこで策を練っていたいたところ、運良くこの今井一馬が、のこのこと我々の忍び小屋に探りに来た。たった一人であれば捕らえるなど造作もない。すぐに捕縛し、殺そうと思った。だが、寸前で思ったのだ。お前たちは幼少の頃からの友人であったそうではないか。ならば、こいつを餌にしてお前たち二人も釣れるのではないかとな」
「卑怯者め」
新九郎が男を睨んだ。
「卑怯? 策と言って欲しいものだな。戦国期にはこの程度のことは初歩の初歩。武士も名ばかりになって情けないことよ」
男が大声で笑うと、他の男たちも低く笑った。
そこで、今井一馬が目を覚ました。一馬は目を開けると、新九郎と辰之助に気付いて身体を動かした。
「し、新九郎、辰之助……」
一馬は弱っていた。掠れた声を上げると、大柄な猫目の男は目を怒らせて、
「黙っておれ」
と、足でその背を踏みつけた。一馬が呻き声を上げた。
「貴様!」
辰之助がカッとして声を荒げたが、すぐさま「動くな!」と声がして、背後の者が剣の切っ先を辰之助の背に押した。
「うっ……」
辰之助は苦痛の声を漏らした。背の肉にわずかながらも刃を刺し込まれたらしい。
「我々の目的はお前たち三人を殺すこと。だが、その前にもう一つ大事なことがある」
大柄な男が悠然と新九郎を見た。
「黒須新九郎、あの連判状はどこにやった?」
新九郎は眉をぴくりと動かした。
「連判状? 何のことだ?」
新九郎がとぼけると、
「ごまかすな。あの鉢窪村の時、我々の仲間が奪い忘れたものだ。貴様が持ち去ったのであろう」
「何のことかわからないな」
「とぼけるのもいい加減にせよ。貴様が弥左衛門の屋敷を脱出した後、お前たち三人であの連判状を検めているのを、我々の仲間が見ているのだ」
大柄な猫目男が苛々しながら言うと、
「へえ。あれはそんなに大事なものか」
新九郎は薄笑いで言った。
「あの連判状、貴様が持ち去ったが、貴様はきっと目付衆に渡すものだと思っておった。ならば問題はない。いずれは我々の元に戻るからな」
「お前たちは目付衆とも仲間か」
新九郎が訊いた。
大柄な猫目男はその問いを無視し、
「だが、お前はあの連判状を目付に渡さなかったであろう。それ故、我々はお前の屋敷を隅から隅まで調べた」
「なにっ?」
新九郎は驚いた。
「だが、やはり見つからなかった。あの連判状はどこにやったのだ」
猫目男は新九郎を睨んだ。
だが新九郎は驚いた顔のまま、訊き返した。
「待て。私の屋敷を隅から隅まで調べただと?」
「ああ」
「私はずっと遠慮処分で屋敷にいた。貴様らのような怪しい者がいればすぐに気付く。どうやって私の屋敷を調べたのだ」
新九郎が言うと、男は低く笑った。
「黒須新九郎、我々を甘く見るなよ。我々にとっては、そのようなことは造作もないことだ」
「それにしても……」
新九郎は言葉が無かった。ずっと屋敷にいたのだ。信じ難い話である。
「で、あの連判状はどこにやった?」
猫目の男は再び苛つきながら訊いた。
新九郎は一呼吸置いて心を落ち着かせてから、にやりと笑った。
「知っていたとしても、答えると思うか」
「……ふん、なるほどな。では、もう用はない。死んでもらうだけだ」
「いや、待て。お主たちを使っているのは小田内膳さまか? 全て、小田内膳さまの命令か?」
新九郎が訊くと、大柄な男は噴き出して笑った。
「小田内膳だと? こいつは笑える」
同時に、他の男たちもおかしそうに笑った。
猫目の男が笑ったまま言った。
「あんな小物に誰が使われるか。むしろ、我々が小田内膳を使っているのだ」
「何だと?」
新九郎、辰之助、そして転がされている今井一馬も目を瞠った。
「どういうことだ」
「どうもこうも、小田内膳など我々の駒に過ぎぬと言うことだ」
「駒だと……?」
三人は愕然とした。
新九郎は唾を飲み込み、
「小田内膳さまは筆頭家老だぞ」
「ははっ、そもそも奴を筆頭家老にしてやったのも我々の力のようなものだ」
「どういうことだ」
「ふっ」
猫目の男は答えなかった。新九郎は更に訊いた。
「では、小田さまを筆頭家老にした上でその地位を利用して不正に金を集めさせ、その邪魔になる者をお前たちが殺しているということか」
「簡単に言えばそうだ」
猫の目のような男はさらりと言って笑った。
「…………」
新九郎は、四方の男たちを見回した。
「それで、小田家老を操り、金を集めて、お前たちは何をするつもりだ? その目的は何だ?」
猫目の男はくっくっと笑った。
「教えてやれるのはここまでだ。我々が何をするか、あの世から見ているんだな」
と言って、猫目の男は手を上げた。新九郎たちをやれ、と言う合図なのであろう。
新九郎、辰之助、共に瞬間的に覚悟を決めた。
背後に刃を突き付けられているが、自分たちも手に抜き身を握ったままである。
やられる前に、やれるか。一瞬が命を決める。
だが、その時であった。
「貴様らの目的は殿の暗殺、そして藩の乗っ取りだろう?」
不意に、静かな声が背後の玄関の方から聞こえた。
「何っ?」
新九郎たち三人が驚愕し、猫目の男が「誰だ」と鋭く叫んで他の者らも振り返った瞬間、黒い人影が疾風と化して躍り込んで来て、青銀の刃光が左右に煌めいて鮮血を噴いた。
悲鳴と共に、新九郎と辰之助の背に刃の切っ先を突き付けていた男二人が崩れ落ちた。
その機を逃さなかった。
辰之助がすかさず右の男に斬りつけた。
猫目の大男は顔を怒らせて「おのれっ!」と剣を抜き、足下に転がる今井一馬に突き刺そうとしたが、すでに動いていた新九郎の剣が一閃、その白刃を跳ね上げた。続けて足蹴りを入れて猫目の男を吹き飛ばすと、新九郎はすぐに一馬の縄を切って解放した。
「すまぬ」
一馬は短く礼を言って立ち上がった。
その右手へ、「動けるか? 使え」と早口に言って、新九郎は脇差を抜いて渡した。
殺気を感じて右を見た。すでに体勢を戻した猫目の男が腰を低くして飛んで来ていた。新九郎は左下から摺り上げの剣を放ってその跳躍を止めると、返す刀で袈裟に斬り戻した。
猫目の男が正面から受け止め、鍔迫り合いとなった。
だが、猫目の男は凄まじい強力であった。体格と膂力に恵まれた辰之助なら互角であったろうが、剣の腕こそ立つものの人並みの体格でしかない新九郎には受け止めきれず、じりじりと押された。だがその横から、一馬が脇差を鋭く突いた。
ちっ、と舌打ちをして、猫目の男は横へ飛びのいたが、その瞬間、驚きの顔をした。
先ほど乱入して来た謎の男と三木辰之助が、他の者たち二人を斬り伏せ、残りの二人をも追い詰めていたからだ。
新九郎は、ちらとその方へ目をやると、乱入して来た男の顔を見て、あっと声を上げた。
「南条さん……!」
その男こそ、先日領内で目撃されて目付衆が総出で探している男。一刀流戸沢道場での新九郎らの兄弟子に当たり、昨年突然上役を斬って逐電した南条宗之進であった。
伸びきった総髪を後ろで束ね、髭も伸びて衣服も垢じみた完全なる浪人の姿であるが、間違いなく開藩以来の天才剣士と言われた南条宗之進その人であった。
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