怪奇短編集

木村 忠司

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学校の七不思議

夜の校舎を徘徊する人体模型

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 私の名前は瑞鬼コウ、雛城高校の二年生です。

 友人のユリとキミカと学校に探索に行った時の話です。

 それは誰が話し始めたのか、私らのずっと前の時代の先輩たちが夜の校舎を心霊探索をすることがはやっていたらしいという話になって、ノリで自分達も深夜の校舎に侵入してみようというような感じでそのまま行ってしまった感じでした。

 始めは幽霊が出るという噂の体育館倉庫に行こうと思ったんですが、体育館の鍵を開けることが出来ずに諦めて校舎の方に回りました。校舎の外壁を一周するように当たっていると、ある一階の部屋の窓の鍵が開いているのを見つけて、その窓から中に入ることができました。

 そこは生物室で、ユリが部屋のスイッチを入れて電気をつけました。

 あなたの高校には生物室に人体模型があるでしょうか?電気がついた後に私たちが一番最初に目についたのがそれで、変な存在感を放って立っていました。
 

 私は目を疑いました。それは人体模型だったのですが、普通の人体模型ではありませんでした。それはモノではなく生き物の様に左右にブレて動いているように思えたのです。

 私は「そんなはずないよな」と半信半疑で 人体模型に近づいていきました。 

 やっぱりその姿は不自然でした。半裸の人間を模した人形なのですが内部組織が脈打っていたのです。

「ちょっと待って」
 私は友人たちを右手で制して、さらに近づいて奴の様子をうかがいました。

 すると人体模型は関節をガタガタと音を立てさせながら、一歩一歩ゆっくり動き始めて私に近づいてきたのです。 皮膚がひび割れて、黒光りする 内臓が見えていました。 目はガラス玉のように光っていましたがその目には確かに私が見えているようでした。口からは唾液か血のような液体が垂れて光沢を放っていました。

 私は恐怖におののいて退きました。人体模型はさらに私に近づいてきました。私たちは逃げようとしましたが、ドアは閉まっていました。廊下側の扉には鍵がかかっていたのです。私たちは叫びましたが、誰も助けてくれませんでした。人体模型は私たちに手を伸ばしました。

 そのとき、突然電気が消えました。真っ暗になりました。私たちは何も見えませんでした。人体模型の気配も感じられませんでした。私たちは侵入した窓を開けようと思ったのですが、さっき入って来たのになぜか開きません。キミカが廊下との引き戸をあけようとしましたがそっちも開きません。私たちは悲鳴を上げてパニックに陥りました。

 しばらくすると電気がつきました。私たちは目を開けました。そこには人体模型はいませんでした。よく考えてみればうちの学校には人体模型などなかったのです。さっき見たものはなんだったのか?私たちは三人で話しながら、外の窓と、廊下の引き戸を確認すると鍵など掛かっておらず普通に開きました。

 私たちは急いで外に出ました。もうそれ以上いる気にならずに、学校から逃げるように走って校門を飛び越えて外の道路に出ました。

 あれは何だったのでしょうか。人体模型は本当に動いていたのでしょうか。それとも私たちの気のせいだったのでしょうか。私は今でもあの夜のことを思い出すと身の毛が立ちますが、私は同時にワクワクするのです。

 あれは学校の七不思議の一つだったのでしょうか?雛城高校の生徒の間では聞いたことのない生物の人体模型の怪異だったのですが、後にも先にも私たち以外から聞いたことのない話でした。それにさっきも言った通り人体模型などうちの学校にはそもそもなかったのです。三人で恐怖感を共有したことで同じ幻を見たのかもしれませんが、それにしてもリアルな体験でした。

 それ以来ユリはこの手の噂ににハマり、私も似たようなもんでいろんなところに付き合わされるようになってしまったのです。いや‥‥正直にいえば、ユリとユリそして親友のユウとで、オカルト話や怪異の噂をすれば、私はノリノリで行ってしまうようになってしまったのです。

 この話の人体模型の正体が霊なのか妖怪なのかわかりませんが、奴が私たちを目覚めさせた最初の存在なのでした。

 他に気になる学校での不思議なネタをひとつあげると、『夜の体育館で異世界に飛ばされるポータルが発生する』という噂話があります。それは異世界もののアニメが流行まくったせいで流されたガセネタの気もするのですが、いま現在私が最も気になる話です。体育館の鍵を開ける方法を見つけて、そのうちその件の深層を確かめに行くつもりです。

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