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学校の七不思議
夕暮れ時の廊下に現れるテケテケ
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ある日、私がまだ雛城高校の二年生だった頃のことです。私は美術部に所属していて、いつも通り放課後に美術室で過ごしていました。いつの間にか太陽はすっかり傾いていて、急いで後片付けを終えて、壁に掛けられた時計を見ると針は午後五時半を指していました。その日私が一番最後だったので、扉のガキを掛けてから美術室を後にしました。
校舎はすでにほとんど生徒は帰ってしまったようで、どこもかしこも気配なく静まり返っていて、私はそれに少し違和感を覚えながら廊下を歩いていました。
オレンジ色の西日が窓ガラスから差し込み、床には黄金色と黒い影が交錯する縞模様が斜めに描かれていましたいました。その光景は何とも言えない静寂と孤独感を私に与えました。廊下の先には、夕日が沈むのを待つかのように、校舎の影が長く伸びていました。
その時、突如としてかすれた奇妙な音が耳に飛び込んできました。
「テケ……テケ……」という音が聞こえました。一瞬空耳かと思いましたが、立ち止まって耳を澄ませると、たしかにその音が聞こえました。私は音の源を探すため、くるりと一周しようとして来た方向に振り返りました。
すると信じられない光景が目の前に見えたのです。
私が歩いてきた廊下の後方、およそ10メートルほどの場所に、下半身がなく、腕だけで移動する上半身だけの存在がありました。それはセーラー服を着た女の子で、廊下に這いつくばりながら無表情に私を見つめていました。
私は息を呑み、同時に頭の中で以前聞いたテケテケという妖怪や幽霊の名前がよぎりました。その瞬間、私の心は恐怖で満たされました。突然の出来事に、私は驚きに取られて呆然と立ち尽くしていました。すると彼女は見つめたままニヤリと笑い、急に動き出して想像以上のスピードで近づいてきました。その瞬間、私の心はパニックに陥りました。
私は目の前で起きていることを理解できず、体は恐怖で凍りつきそうでしたが、直感的に階段に向かって逃げることができました。テケテケは階段を上れないという噂を聞いたことがあったからです。
私は必死で走りましたが、上半身だけのテケテケもそれに負けない腕力で走ることができました。
「テケ……テケ……テケ‥‥」後ろからその謎の擬音が近づいているのがわかりました。私は後ろを振り返ることなくダッシュしました。何とか階段に到達し、踊り場まで駆け上がり、そこから下を振り返ると、テケテケは階段の下で私を睨んでいました。
息をつく間もなく、私は階段をそのまま三階まで駆け上がり、そこから廊下の途中にある渡り廊下への扉を開けて外に出ました。もうほとんど太陽が沈んでいて、夜の帳が下りかかっていました。私はそのまま渡り廊下を急いで反対側の校舎へと抜けました。恐る恐る廊下の左右を確認してみましたが、そこには誰もいませんでした。もちろんテケテケの姿もありませんでした。
私は三階から階段を駆け下り、昇降口で靴に履き替えずに、廊下の反対側の非常階段のある非常口から外に出ました。そのまま振り返ることなく学校から飛び出しました。
17歳の私は以降、夕暮れ時の学校では気をつけるようになりました。そしてたまに背後から聞こえてくることがありました。「テケ……テケ……」でも私はもう立ち止まることも、振り返ることもしませんでした。彼らはもともとそこにいる存在で、もとは人間だったのか、元々怪異側の存在なのか、それは分かりませんが、振り返らなければ無害だとわかりました。
この体験を友人たちには話しませんでした。この話をすればそれが生徒の間に新たな噂となって広がり、同じような怪異に遭遇する生徒が増えてしまうと思ったからです。
これ以外にも、私は子供の頃からこういった不思議な体験を何度かしてきました。学校といっても小中大と様々にありますが、その中でも高校は特に怪異が生まれやすいところだと私は思います。子供から大人の狭間の17歳の身体の内部、精神や心と呼ばれる見えない場所が生涯を通じて最も活性化すると思うのです。
例えば17歳の私がテケテケを目撃したという経験を今振り返って、それが本当に起きている現実だったのかと聞かれれば、誰かに「幻なのか半分夢でも見ていたのだろう?」と問われれば、自分でも確実だとは言い切れません。でも真偽よりも、17歳の私がそれを見たという経験自体に何か意味があると感じるのです。
たぶん見えなくても怪異はどこにでも存在します。そしてそれは必ずしも悪意や害をなす存在ではないと思うのです。
でももしあなたがいま高校生で、放課後の学校の校舎をいつのまにか一人きりになって夕方の廊下を歩いてしまった時に、どこからか奇妙な「テケテケ」という音が聞こえてきたときには、振り返らない方がいいでしょう。
もし振り返って姿を見てしまったときは・・・・何も考えずに階段を上へと逃げてください・・・と言いたいところですが、それが本物の怪異ならばその後私と同様に助かるとは限らないでしょう。なぜなら怪異とは、都合よく人間中心に成り立っていないからです。
校舎はすでにほとんど生徒は帰ってしまったようで、どこもかしこも気配なく静まり返っていて、私はそれに少し違和感を覚えながら廊下を歩いていました。
オレンジ色の西日が窓ガラスから差し込み、床には黄金色と黒い影が交錯する縞模様が斜めに描かれていましたいました。その光景は何とも言えない静寂と孤独感を私に与えました。廊下の先には、夕日が沈むのを待つかのように、校舎の影が長く伸びていました。
その時、突如としてかすれた奇妙な音が耳に飛び込んできました。
「テケ……テケ……」という音が聞こえました。一瞬空耳かと思いましたが、立ち止まって耳を澄ませると、たしかにその音が聞こえました。私は音の源を探すため、くるりと一周しようとして来た方向に振り返りました。
すると信じられない光景が目の前に見えたのです。
私が歩いてきた廊下の後方、およそ10メートルほどの場所に、下半身がなく、腕だけで移動する上半身だけの存在がありました。それはセーラー服を着た女の子で、廊下に這いつくばりながら無表情に私を見つめていました。
私は息を呑み、同時に頭の中で以前聞いたテケテケという妖怪や幽霊の名前がよぎりました。その瞬間、私の心は恐怖で満たされました。突然の出来事に、私は驚きに取られて呆然と立ち尽くしていました。すると彼女は見つめたままニヤリと笑い、急に動き出して想像以上のスピードで近づいてきました。その瞬間、私の心はパニックに陥りました。
私は目の前で起きていることを理解できず、体は恐怖で凍りつきそうでしたが、直感的に階段に向かって逃げることができました。テケテケは階段を上れないという噂を聞いたことがあったからです。
私は必死で走りましたが、上半身だけのテケテケもそれに負けない腕力で走ることができました。
「テケ……テケ……テケ‥‥」後ろからその謎の擬音が近づいているのがわかりました。私は後ろを振り返ることなくダッシュしました。何とか階段に到達し、踊り場まで駆け上がり、そこから下を振り返ると、テケテケは階段の下で私を睨んでいました。
息をつく間もなく、私は階段をそのまま三階まで駆け上がり、そこから廊下の途中にある渡り廊下への扉を開けて外に出ました。もうほとんど太陽が沈んでいて、夜の帳が下りかかっていました。私はそのまま渡り廊下を急いで反対側の校舎へと抜けました。恐る恐る廊下の左右を確認してみましたが、そこには誰もいませんでした。もちろんテケテケの姿もありませんでした。
私は三階から階段を駆け下り、昇降口で靴に履き替えずに、廊下の反対側の非常階段のある非常口から外に出ました。そのまま振り返ることなく学校から飛び出しました。
17歳の私は以降、夕暮れ時の学校では気をつけるようになりました。そしてたまに背後から聞こえてくることがありました。「テケ……テケ……」でも私はもう立ち止まることも、振り返ることもしませんでした。彼らはもともとそこにいる存在で、もとは人間だったのか、元々怪異側の存在なのか、それは分かりませんが、振り返らなければ無害だとわかりました。
この体験を友人たちには話しませんでした。この話をすればそれが生徒の間に新たな噂となって広がり、同じような怪異に遭遇する生徒が増えてしまうと思ったからです。
これ以外にも、私は子供の頃からこういった不思議な体験を何度かしてきました。学校といっても小中大と様々にありますが、その中でも高校は特に怪異が生まれやすいところだと私は思います。子供から大人の狭間の17歳の身体の内部、精神や心と呼ばれる見えない場所が生涯を通じて最も活性化すると思うのです。
例えば17歳の私がテケテケを目撃したという経験を今振り返って、それが本当に起きている現実だったのかと聞かれれば、誰かに「幻なのか半分夢でも見ていたのだろう?」と問われれば、自分でも確実だとは言い切れません。でも真偽よりも、17歳の私がそれを見たという経験自体に何か意味があると感じるのです。
たぶん見えなくても怪異はどこにでも存在します。そしてそれは必ずしも悪意や害をなす存在ではないと思うのです。
でももしあなたがいま高校生で、放課後の学校の校舎をいつのまにか一人きりになって夕方の廊下を歩いてしまった時に、どこからか奇妙な「テケテケ」という音が聞こえてきたときには、振り返らない方がいいでしょう。
もし振り返って姿を見てしまったときは・・・・何も考えずに階段を上へと逃げてください・・・と言いたいところですが、それが本物の怪異ならばその後私と同様に助かるとは限らないでしょう。なぜなら怪異とは、都合よく人間中心に成り立っていないからです。
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