怪奇短編集

木村 忠司

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ニューヨーク州の洋館〜後編

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 脱出できると思った地下通路の扉が開かないことに気づいて、みなパニックになりました。 エリザベスは彼らに近づいてきて、ナイフを振りかざします。

  私達は必死に避けようとして逃げ惑っていると、長身のエリクソンが立ちはだかり彼女のナイフを肩でうけながら エリザベスを食い止めようとしました。 

 するとエリザベスは向かい合う彼に笑いながら言いました。 

「あなたは私の夫に似ているわ。 私はあなたを愛しているの。 だから、 あなたの、心臓を、私の夫の墓に、埋めめるのよ! それで、私たちは、永遠に、一緒になれるの!!」 

  その光景を見て恐怖に震えました。
「俺のことはいいから逃げるんだぁ!」エリソンは叫びました。

 するとそのとき、赤毛のサムがと声を発しました。
「これを見ろ!」

 死体や残骸を燃やすためなのか、隅に灯油缶が一斗缶でもありました。

 サムは思いついたように灯油タンクを手に取とる、それを奥のサビ着いたドアノブに振りけました。

 さび付いた部分に潤滑油の様に灯油が浸透して、ノブが回りました。

 サムが扉を開くとその先はまた別の地下室が現れました。

 そこにはなんと数人の人影が!

 ゾンビが、いたのです…と最初思ったのですが、ちょっと様子が違うようでした。

 彼らは服はボロボロで、顔は皮膚病のようにただれて一見ゾンビのようにしかみえませんでしたが、人間の声がしたのです。彼らは誰もがのどもやられてしまっていて、声もうまく出せないような状況ではありましたが、同じ人間だと気づいて、私たちは彼らに声を掛けました。

 彼らは、同じように興味本位で廃墟巡りし若者たちで、エリザベスから隠れてここで身を潜めて生き延びていただけでした。しかし地下室はあまりに不衛生な環境で、彼ら自身排泄物や、湿気や雑菌によって見るも無残な状況にいたようです。他にも侵入した若者が死に絶えてしまった、残骸の骸骨が幾人分もありました。ネズミが躯の上をはい回る様子に私は思わず吐いてしましました。

 その見た目がゾンビルックになり果てた生存者の若者は3人いて、彼らは第二の地下室の奥のスペースを差してました。


 そこには100年前の世界大戦のときに用意されただろう、とても古い戦備品が山積みになっていました。。その中に赤い筒状の束が見えました。

 ゾンビルックの若者たちがかすれた声でそのダイナマイトだといいました。

 赤毛のサムが灯油タンクをまだ持っていて、その灯油タンクをもらい受けた一番悲惨な様相と化したゾンビが、ダイナマイトに油を振りかけはじめました。

 第一の地下室からはエリクソンの苦痛な悲鳴が聞こえてきました。

 かれはまだ何とか意識を保ってエリザベスを止めているようです。

 ゾンビルックの若者のうちの鼻の肉が無くなり鼻腔がむき出しになってしまっている男の子が、「ライターがないか?」と聞いてきました。私たちの仲間の一人砕けたアフロヘア―のゴードンが「俺持ってるよ」といって、ポケットから取り出して、渡しました。

 鼻柱の掛けたゾンビルックの彼がライターを受け取ると、「お前たちは逃げろ」と言いました。

ゾンビルック若者三人がそれぞれダイナマイトを分担して残った灯油すべてを頭からかぶり始めました。

 そして彼らは私たち、つまりゴードンとサムを見て、一度頷きました。ゾンビ隊三人がエリザベスへ向かっていきます。

 私たちは言葉が何も出てこないまま彼らの後ろ姿を見送りました。

 状況がわかり、第二地下室の奥で身を隠すように退いて様子をみました。

 すると凄まじい爆発音共に、爆風が私達にもやって来てあっという間に壁に吹き飛ばされました。あらゆるものが吹き飛ばされて、火薬の燃えた匂いと土煙が立ち上がり、私はせき込みながら、壁に当たった衝撃から立ち直ろうとしていると、うめき声が聞こえて、隣にいるゴードンが立ち上がれずに息をしようとしているのだと気づきました。彼の首に、包丁が刺さっていて、もう助かりそうもありませんでした。エリザベスの包丁が爆風で飛ばされて彼の首に刺さった物でした。彼がいなければ私に刺さっていたかもしれません。
 
 「お前は生きて出ろ‥‥」
最期に彼はそう呟いてついに息絶えました。

私はゴードンに「ありがとう」とつぶやいて彼の瞼を閉じてやりました。

 「たらたらやってるよゆうなさそうだぜ」第一地下室の様子を確認していたサムが、私に立つように促しました。

そこにいたはずの、エリザベスとエリクソン、そして三人のゾンビ隊は爆発によって木端微塵に吹き飛んでしまっていて、とももとあったエリザベスの被害者の死体や残骸共にミックスされ見分けがつかなくなっていました。

 と同時に、灯油が巻かれた地下室に炎が立ち上り始めて延焼し始めています。地下室はさながら焼却炉と化していくそう様でした。

「早く逃げよう!」サムは参上の一部をさしてそう言いました。

 爆風によって地下室から上る通路が遮られていましたが、天井には爆風で吹き飛ばされて穴が開いている場所がありました。

 サムが膝をついて、私の土台になってくれました。彼は天井に突き出た、一階の床板に手が届く高さまで持ち上げて、私をさらに押し上げて、上に載せてくれました。地下室の炎は勢いを増して、サムの周りに迫っています。私がサムが昇るための縄か何か代用品を探していると、下から声が聞こえました。

「逃げろエリカ!」

そいう言う彼の足に砕け散った一対の手が足首を掴んでいます。彼の両足に手の形の足かせがはめられたようになって、彼は私を見上げました。

「俺はもういい。早く逃げろ!」

彼は炎に包まれ、私はもうそれ以上その場にいることが出来ずに玄関の方へ走りはじめました。
その途中の回廊にはゴメスの横たわっていて、もう息がありませんでした。

 私は玄関の扉を蹴って何とかこじ開けて外に出るました。

 玄関前に立ち、振り返ると洋館のいたるところから白い煙が上がり始めていて、それはあっという間にオレンジ色の炎に変わり全体を覆いました。

 黒い煙が顔に吹いて肉の焦げるような匂いに感じて思わず私は退きました。

 

 炎は燃やせるものをすべて飲み込んで炭に変えました。

 屋根が崩落して次に壁がばらばらなってに落ちていきました。柱も支えきれず次々と傾むき館は形を失くしていきました。


 一緒にきた友人四人とゾンビ隊三人計七人が死んで、生存者はわたしひとりでした。
 
 エリザベスも吹き飛んでばらばらになったはずなのに、サムの足に手をまわす肉片は精神的に追い詰められた私が見た幻覚だったのでしょうか?

 

 崩落した建物は解体され、今では更地になっています。それから心霊スポットとしてさらに有名になり、いまでも若者がやってくると言います。


 私は彼女が死んだとは思えません。ふとエリザベスという女性は一体何だったのか考えてしまうのです。彼女は未だにどこかに潜んでいて、永遠の愛を探して闇をさまよっている気がしてならないのです。

 それからというもの私は、心霊スポットに行く若者がいれば警告するようにしています。

「そこには愛と死を渇望するエリザベスがいるかもしれない」と。
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