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しおりを挟むロドリグはカーヒルと別れた後、自分はなぜあのようなことを言ってしまったのだろうかと思っていた。ロドリグは自分にはあのようなことを言える権利はないと思っていた。
ロドリグは自分の発言について考えていると、ミシェルに会う。
「ロドリグさん、どうしました?何か考え事でも?」
「いやなんでもない。カーヒルはどうかね?」
ロドリグはミシェルにこのことを突っ込まれるわけにはいかないと思い、話をそらそうとする。
「思ったよりはいい人でした。それにお嬢様の幸せを本心で願っているようでした」
まあでも信用はしませんが、とミシェルは付け足す。ロドリグはそうか、と言うとミシェルに問う。
「なあ、ミシェル。お嬢様の幸せとは何だろうな?」
「わかりません、ですが私は最後までお嬢様と共にいます。お嬢様を一人にはさせません、ロドリグさんよりも若いですし私。だから先になくなっても大丈夫ですよ」
ミシェルは後半冗談を言うように言う。ロドリグは乾いた笑いをする。ミシェルは気分を害したのではと思ってロドリグに謝罪する。
「いいや、構わんさ。では失礼する」
ロドリグがそう言うと、ミシェルも失礼します、と返してくる。そのまま別の場所へと彼らはむかった。ロドリグは向かう間に、小さな、本当に小さな声でつぶやく。
「お嬢様を一人にはさせない、か」
そのころクリスティンは一人部屋で本を読んでいた。少しして、彼女はその本を読み切った。彼女は立ち上がると本棚のほうへと向かう。本棚の前で彼女は立ち止まると本の表紙を見る。そして、つぶやく。
「悪役は倒されてみんな幸せ」
彼女はそのまま本を本棚にそっとしまう。彼女の表情からは何も伺いしることはできなかった。あの本をしまう前のつぶやきの意味も。
彼女は本棚にある本を一つ引き抜く。それはカーヒルという騎士がでる話のものであった。彼女は本をパラパラとめくり始める。少しして、とあるところでめくるのを止める。それはカーヒルが王女を殺すシーンのところであった。
「カーヒルは王女を刺した。後ろから彼女に気づかれないように。彼女は驚き、カーヒルのほうを見て、問う。『どうして?』カーヒルは答える。『あなたを止めるためです』王女はそう、と満足げに頷くと、ばたりと倒れる」
彼女は小説の一節を読む。そして、何を思っているのかよくわからない笑顔を浮かべると本を閉じ、その本を本棚にしまう。そして、別の本を引き出すと椅子へと戻る。
彼女は何事もなかったかのように本を読み始めた。
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