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山菜の季節の秋空から人々達の物語

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山菜の季節の秋空から人々達の物語



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 高校時代からこの場所が好きだった。


 山形の実家の裏庭には植物が生い茂り、柿の樹も生えいて、その実りもあり、それら植物性のものを朝食に炙って出してくれる。それだけじゃなくハムのステーキを、裏庭でとれたての鶏の卵と共にあく抜きしたわらびを添えて食べさせてくれた。


 いつも早朝に鶏が産み落とした卵を素手で取り、朝食の後で学校の身仕度と共に、丸ごとサランラップに三つほど包んで、学校の昼食までの授業の間の腹もちにした。

 私の赴任する県立山河高校に行くには川の側に、広葉樹の並木道と流れの形を残して凍りついた川がある。秋空のような木漏れ日が差す細い山道を通っていくとその道から見える秋は色濃く冬の色合いが写る雑木林が学校まで続く。


 休みの日は、肌寒い日々に私の娘である、小さな私の恋人と、その広葉樹の並木道を散歩して、いつのまにか私も親になれたんだな、と親が知ったら笑いそうな思いを持ちながらも、この土地に帰ってこれたことに安心していた。その季節の寒い北風にも安心していた。


 そんな私ら親子は、お互いに母娘の血縁を、これからも、決別もしないで居られたらと、ほんとに未来のことでも当たり前だけれどそれをわからず、毎日を祈ることのように、昔から代わり映えしない神社の神様にお供え物をしていた。

 40歳を迎えた私は今、悪い目には遇わないことを日々願いながら、過ごすことで、日常的に夢を忘れたこの昭和ドームレンズ社の特設領地に居きることが幸せなんだなと思えている。
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