31 / 141
太陽
しおりを挟むガチャ
「ヒナちゃーん」
アベンは小声でヒナタに呼びかけながら、部屋の中に入った。
「ヒナちゃん、あ、まだ寝てるのかあ」
「ん、アベン」
アベン、帰って来たのか
ウトウトとしていた目を開けてアベンを見た。
「あ、起こしちゃったねえ」
アベンが申し訳なさそうな顔をしながら近づいてきた。
「いや、ウトウトしてただけ」
ベッドに腰かけて俺の頭を撫でてくるアベンの手が気持ちよくて、すり寄った。
「そっかあ」
嬉しそうにほほ笑むアベンを横目に見ながら、報告はどうだったか聞いた。
「ふわあ、それで報告は」
俺がそう言うと、途端にアベンの顔が少し暗い表情になった。
な、んで、そんな顔をするんだ!?
まさか、死んだとか言わないよな!?
そんな焦りが募ったけど、我慢してアベンの言葉を待った。
「うーん
やっぱりまだ見つからないみたい
ごめんね、ヒナちゃん」
悲しそうにそう言った。
「!
・・・そうか」
でも、よかった
瑠璃の死の報告じゃなければ、それでいい
見つからないって事はまだ生きている可能性があるってことだ
・・・瑠璃、どこにいるんだ
「一応城下町も探しているから、そんなに落ち込まないでえ」
「・・・」
わかっている
だけど、不安なんだ
身近にいる人が行方不明に、安否もわからない状況になる事がこんなに、辛いなんて知らなかった
俺のナカの何かが溢れだしそうになってると
「ヒナちゃん、ちょっとごめんね」
アベンは俺の手を取り、ブレスレットを着けた。
「・・・これ、なんだ?」
それに、俺のナカで溢れ出しそうになっていた何かが消えたような気がする
いきなりアベンに着けられてブレスレットを見つめてそう言った。
「あ、これはね、魔力を制御するブレスレットだよお
ひなちゃんは魔力を持っているんだあ
それも膨大な量をね」
突然のアベンの告白に、驚いて目を見開いた。
「魔力!?」
あ、そういえばクラルがそんな事を言ってたような気がする
アベンと瑠璃の事ですっかり忘れてた
でも信じられない
俺に魔力があるなんて・・・
「ヒナちゃんのいた所では、魔法はなかったのお?」
俺が驚いている事に疑問に思ったのか、アベンは不思議そうに首を傾げながら聞いてきた。
「ない、だから俺が魔法を使えるって言われても信じられない」
「そっかあ
うーん、でも本当に使えるんだよお」
「そっか・・」
魔法か・・・
この力を使えば、今瑠璃が何処にいるのかわかるのか・・?
「それで、次の報告は明日なのか?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
632
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる