61 / 77
◆在るべきところへ◇17話◇終わりにしよう ④
しおりを挟む
◆在るべきところへ◇17話◇終わりにしよう ④
インティスとジャドニックは同じ髪、同じ目の色をしていた。違いといえば、ジャドニックの髪が短いくらいだ。
「君が……俺とミゼの子供なんだね。確かにミゼによく似てる」
「……全然」
今度は彼の言葉が耳から聞こえた。似ている要素が見つからなかったからインティスはそう答えたのだが、ジャドニックはそれを聞くと申し訳なさそうに微笑んだ。
「……そうだね。すまなかった……悪いのは死んでしまった俺なんだ」
「ジャド、どこから覚えていて、何を知っている?」
レイの短い問いに、ジャドニックは記憶のままを説明した。
「……俺は、皆が先へ行けるように騎士団の連中を引き受けた時、確かに死んだんだ。けれど、そこが神域で、体が朽ちずに残ったせいで、意識も残ってしまった。そしたら、誰かが俺をあの赤い木に埋め込んだ」
「誰かとは誰だ」
「俺にもわからない……でも、あの木には黒い玉のような、宿主みたいなやつがいた。多分元々そいつのために誰かがこの木を作って、ミゼリットをそそのかしたんだと思う。埋めた者と同じ、炎の精霊の力を注げば生き返るって言ったみたいだ」
「……それでずっと炎の精霊の力を強く持つ者をさらっていたのか……。炎である意味はあったのか?」
レイの問いに、ジャドニックは首を横に振った。
「それはわからない……だが最後に入ってきた力の途中でやつらはいなくなった。もう十分だったか、見切りをつけたのか……」
「……その誰かは、ミゼリットをうまくそそのかしたな……」
レイの溜息混じりの言葉に、ジャドニックも小さな溜息をついた。
「いや、彼女はその時にはもう正しい判断ができなくなっていたんだ。トワラじゃないなら生き返るはずなんかないのに、彼女は信じてしまった。結局炎の力がその宿主に注がれていたことにも、恐らく気付いていないだろう。多少はこっちにも流れて来たけどね。そのおかげで、今こうして話すことができてるんだし」
そこまで話し、少し疲れたように額に手をやると、ジャドニックは眉を顰め、大きく溜息をついた。
「宿主の力は大きくて、死んで木に埋められただけの俺は全く抵抗できなかった。けれど、ミゼリットが見ていたものは俺にも見えたんだ。彼女が最初の一人をここに連れて来た時も、砂漠の村を襲った時も……俺はこの木に繋がれたまま、見ているだけで何もできなかった」
ジャドニックは時間がないと言っていた通り、苦しそうに息継ぎをすると、支えるレイの袖を掴んだ。
インティスとジャドニックは同じ髪、同じ目の色をしていた。違いといえば、ジャドニックの髪が短いくらいだ。
「君が……俺とミゼの子供なんだね。確かにミゼによく似てる」
「……全然」
今度は彼の言葉が耳から聞こえた。似ている要素が見つからなかったからインティスはそう答えたのだが、ジャドニックはそれを聞くと申し訳なさそうに微笑んだ。
「……そうだね。すまなかった……悪いのは死んでしまった俺なんだ」
「ジャド、どこから覚えていて、何を知っている?」
レイの短い問いに、ジャドニックは記憶のままを説明した。
「……俺は、皆が先へ行けるように騎士団の連中を引き受けた時、確かに死んだんだ。けれど、そこが神域で、体が朽ちずに残ったせいで、意識も残ってしまった。そしたら、誰かが俺をあの赤い木に埋め込んだ」
「誰かとは誰だ」
「俺にもわからない……でも、あの木には黒い玉のような、宿主みたいなやつがいた。多分元々そいつのために誰かがこの木を作って、ミゼリットをそそのかしたんだと思う。埋めた者と同じ、炎の精霊の力を注げば生き返るって言ったみたいだ」
「……それでずっと炎の精霊の力を強く持つ者をさらっていたのか……。炎である意味はあったのか?」
レイの問いに、ジャドニックは首を横に振った。
「それはわからない……だが最後に入ってきた力の途中でやつらはいなくなった。もう十分だったか、見切りをつけたのか……」
「……その誰かは、ミゼリットをうまくそそのかしたな……」
レイの溜息混じりの言葉に、ジャドニックも小さな溜息をついた。
「いや、彼女はその時にはもう正しい判断ができなくなっていたんだ。トワラじゃないなら生き返るはずなんかないのに、彼女は信じてしまった。結局炎の力がその宿主に注がれていたことにも、恐らく気付いていないだろう。多少はこっちにも流れて来たけどね。そのおかげで、今こうして話すことができてるんだし」
そこまで話し、少し疲れたように額に手をやると、ジャドニックは眉を顰め、大きく溜息をついた。
「宿主の力は大きくて、死んで木に埋められただけの俺は全く抵抗できなかった。けれど、ミゼリットが見ていたものは俺にも見えたんだ。彼女が最初の一人をここに連れて来た時も、砂漠の村を襲った時も……俺はこの木に繋がれたまま、見ているだけで何もできなかった」
ジャドニックは時間がないと言っていた通り、苦しそうに息継ぎをすると、支えるレイの袖を掴んだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
放課後はファンタジー
リエ馨
ファンタジー
森の国の王子を苛む王家の呪いを解くために、
現代日本の三人の高校生の力を借りる異世界ファンタジー。
高校生たちは学校生活と異世界を往復しながら、
日常を通して人との繋がりのあり方を知る。
なんでわざわざ日本なの?
それはお話の後半で。
※他の小説サイトにも投稿しています

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる