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◆在るべきところへ◇15話◇蘇りの木 ①
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◆在るべきところへ◇15話◇蘇りの木 ①
目印の炎を消し、カーリアンは穴の中を覗き込んだ。
「風の精霊が嫌がって途中で戻ってくるわ。どれだけ深く作ったのよ」
彼女が舌打ちするので、見かねたレイが提案した。
「私が行こう」
「大丈夫?」
「恐らくね。こんなところで力を使い果たすことはないと思うが、念のため源石も持って来てあるから」
そう言って、レイは上着の内ポケットから小さな布袋を出してみせた。中には白と透明の間を行き来するような色の、手のひらに簡単に収まるくらいの小さな石がいくつも入っていた。
あれは精霊や魔法の力を結晶化させたもので、魔法を発動させる時の補助として使うのだと、横でフェレナードがインティスに説明した。
レイはその石を数個手のひらに出すと、それを握ったまま穴の上に立った。
普通なら真下に落ちてしまうはずだが、手の中の源石がぼんやりと光ると、その体はゆっくりと下りて行った。
暗闇に吸い込まれ、姿が見えなくなって、何も聞こえなくなって、とうとう源石の光も見えなくなった。
すると、ややあってレイの声だけがすぐ近くから聞こえた。
「確かに、かなり深いところまで来たようだよ」
「レイ、下にいるの?」
「距離が遠いから、風の精霊を通して声だけ届くようにしてるのよ」
驚くインティスに、今度はカーリアンが説明する。
「通路がちょっと狭いみたいだ。先にインティスから寄越してくれるかな」
「え……」
さすがにインティスが不安そうに眉を顰める。
「あたしが連れてくわ」
横で勝手に返事をしたのは、いつものように突然現れたライネだった。
「その声はライネだね。できるかい?」
「まかせてよ。インティス、手を出して」
「……ほんとに大丈夫?」
あまりにも簡単そうに彼女が言うので、インティスは怪訝な顔でもう一度確認した。
「あんたをゆっくり下ろすだけよ。ほら急いで」
疑うインティスの手を取って、穴に入るようライネが促す。
仕方がないので、落ちないようにと念じながら、穴のあいた真上に踏み出した。
体は落ちずにその場に浮いた。
「ほんとだ、落ちない……」
「ね? わかったでしょ? 下ろすわよ」
ライネがそう言うと、インティスの体はそのままゆっくりと下降を始めた。彼女とは片手でしか繋がっておらず、特別強く握りしめているわけでもないのに、体は一定の速度を保って降下を続ける。
それはとても長い時間に感じられた。レイが下りて行ったのを見ていたが、同じ距離を自分も移動しているのだ。
ようやく地に足が着くと、狭い通路の向こうからレイの声がした。
「ここだけ天井が高いからこっちにおいで。他の二人を下ろすから、ライネと待っていなさい」
「……わかった」
通路は人が一人這って移動するだけの空間しかない。インティスがレイのところに着くと、レイがまた地上への穴の底へ向かった。
あたりは暗くて、耳が痛くなるほど静かだ。
「……何?」
明後日の方向を見て、ライネが首を傾げた。
目印の炎を消し、カーリアンは穴の中を覗き込んだ。
「風の精霊が嫌がって途中で戻ってくるわ。どれだけ深く作ったのよ」
彼女が舌打ちするので、見かねたレイが提案した。
「私が行こう」
「大丈夫?」
「恐らくね。こんなところで力を使い果たすことはないと思うが、念のため源石も持って来てあるから」
そう言って、レイは上着の内ポケットから小さな布袋を出してみせた。中には白と透明の間を行き来するような色の、手のひらに簡単に収まるくらいの小さな石がいくつも入っていた。
あれは精霊や魔法の力を結晶化させたもので、魔法を発動させる時の補助として使うのだと、横でフェレナードがインティスに説明した。
レイはその石を数個手のひらに出すと、それを握ったまま穴の上に立った。
普通なら真下に落ちてしまうはずだが、手の中の源石がぼんやりと光ると、その体はゆっくりと下りて行った。
暗闇に吸い込まれ、姿が見えなくなって、何も聞こえなくなって、とうとう源石の光も見えなくなった。
すると、ややあってレイの声だけがすぐ近くから聞こえた。
「確かに、かなり深いところまで来たようだよ」
「レイ、下にいるの?」
「距離が遠いから、風の精霊を通して声だけ届くようにしてるのよ」
驚くインティスに、今度はカーリアンが説明する。
「通路がちょっと狭いみたいだ。先にインティスから寄越してくれるかな」
「え……」
さすがにインティスが不安そうに眉を顰める。
「あたしが連れてくわ」
横で勝手に返事をしたのは、いつものように突然現れたライネだった。
「その声はライネだね。できるかい?」
「まかせてよ。インティス、手を出して」
「……ほんとに大丈夫?」
あまりにも簡単そうに彼女が言うので、インティスは怪訝な顔でもう一度確認した。
「あんたをゆっくり下ろすだけよ。ほら急いで」
疑うインティスの手を取って、穴に入るようライネが促す。
仕方がないので、落ちないようにと念じながら、穴のあいた真上に踏み出した。
体は落ちずにその場に浮いた。
「ほんとだ、落ちない……」
「ね? わかったでしょ? 下ろすわよ」
ライネがそう言うと、インティスの体はそのままゆっくりと下降を始めた。彼女とは片手でしか繋がっておらず、特別強く握りしめているわけでもないのに、体は一定の速度を保って降下を続ける。
それはとても長い時間に感じられた。レイが下りて行ったのを見ていたが、同じ距離を自分も移動しているのだ。
ようやく地に足が着くと、狭い通路の向こうからレイの声がした。
「ここだけ天井が高いからこっちにおいで。他の二人を下ろすから、ライネと待っていなさい」
「……わかった」
通路は人が一人這って移動するだけの空間しかない。インティスがレイのところに着くと、レイがまた地上への穴の底へ向かった。
あたりは暗くて、耳が痛くなるほど静かだ。
「……何?」
明後日の方向を見て、ライネが首を傾げた。
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