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◆在るべきところへ◇14話◇神域へ ②
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◆在るべきところへ◇14話◇神域へ ②
翌日になると、旅装束のフェレナードが薬屋にやってきた。
「あんたも行くの」
「そう。事情を知ってて魔法が使えるから、手っ取り早いみたいだね。やあライネ、久しぶり」
「久しぶりね」
フェレナードの挨拶に、インティスの横で浮いていたライネが答えた。彼女があまり知らない相手と言葉を交わすのは珍しい。
自分にはよくわからないが、魔法の力の強さみたいなもので信用しているのだろうか。
階段を下りてきたレイが、インティスとライネに二階に上がるよう言った。
二人を見送って少ししてから、フェレナードがレイに声をかける。
「王子には訳を話して来ましたが、本当に私も同行してよろしいのですか」
レイはにっこり笑って頷いた。
「ですが……」
フェレナードの言葉を、レイは真剣な表情で止めた。
「君の同行は、私から妹に提案したことだ。妹も了承してくれた。私に何かあったら、あの子を頼みたくてね」
「……インティスのことですか」
「そういうことだよ」
レイが答えると、ややあってフェレナードが観念したように頷いた。
「……わかりました」
育ての親からの直々の頼みは断れない。
確かに、インティスと関わりのある人間の中で、今一番近いのは自分であると納得してしまった部分もある。
「ありがとう。きっとあの子は君の力にもなってくれるはずだよ」
それだけ一方的に言うと、レイはフェレナードにも二階に上がるよう促した。
二階に部屋はいくつかあるが、一番大きい窓のある部屋に通された。そこにはカーリアンがいて、インティスとライネもいた。
話し始めたのはレイだった。
「それじゃあ、これからアテネを救出に行くよ。向かうのは本大陸の中心にある神域だ。神々の住まう地だから人間も精霊もいないはずなんだが、様子のおかしいところがあると精霊たちが言っていた。恐らくそこにアテネとミゼリットがいるだろう」
インティスはその名前に眉を顰めた。
アテネは取り戻すべき幼なじみの名前、ミゼリットはアテネをさらった張本人で、最近知らされた自分の母親の名前。
だが、未だに母親がいること自体実感できずにいた。
「神域へはここから行くわ」
カーリアンはそう言うと、両開きの大きな窓を開け放ってみせた。
そこは窓から外の足場に出られるようになっていて、足場にはびっしりと魔法陣が描かれ、そこからいくつもの光の糸で編まれたような道筋が、足場の向こうの空中へ伸びている。
「ここ……歩けるの……?」
空中へ伸びた道筋を指さし、インティスはさすがに不安になってレイに尋ねた。
「歩けるよ。精霊たちが作ってくれた、目的地に直接繋がっている回廊なんだ。外側からは見えなくなっているから、ここを歩いても誰かに見つかることはない」
「急ぐわよ、歩くだけなんだから」
カーリアンは慣れたように回廊へ足を踏み入れた。
急かされてインティスも一歩踏み出すと、糸のような足場は意外にしっかりしていた。
これならたとえ走っても大丈夫そうだった。
◇
翌日になると、旅装束のフェレナードが薬屋にやってきた。
「あんたも行くの」
「そう。事情を知ってて魔法が使えるから、手っ取り早いみたいだね。やあライネ、久しぶり」
「久しぶりね」
フェレナードの挨拶に、インティスの横で浮いていたライネが答えた。彼女があまり知らない相手と言葉を交わすのは珍しい。
自分にはよくわからないが、魔法の力の強さみたいなもので信用しているのだろうか。
階段を下りてきたレイが、インティスとライネに二階に上がるよう言った。
二人を見送って少ししてから、フェレナードがレイに声をかける。
「王子には訳を話して来ましたが、本当に私も同行してよろしいのですか」
レイはにっこり笑って頷いた。
「ですが……」
フェレナードの言葉を、レイは真剣な表情で止めた。
「君の同行は、私から妹に提案したことだ。妹も了承してくれた。私に何かあったら、あの子を頼みたくてね」
「……インティスのことですか」
「そういうことだよ」
レイが答えると、ややあってフェレナードが観念したように頷いた。
「……わかりました」
育ての親からの直々の頼みは断れない。
確かに、インティスと関わりのある人間の中で、今一番近いのは自分であると納得してしまった部分もある。
「ありがとう。きっとあの子は君の力にもなってくれるはずだよ」
それだけ一方的に言うと、レイはフェレナードにも二階に上がるよう促した。
二階に部屋はいくつかあるが、一番大きい窓のある部屋に通された。そこにはカーリアンがいて、インティスとライネもいた。
話し始めたのはレイだった。
「それじゃあ、これからアテネを救出に行くよ。向かうのは本大陸の中心にある神域だ。神々の住まう地だから人間も精霊もいないはずなんだが、様子のおかしいところがあると精霊たちが言っていた。恐らくそこにアテネとミゼリットがいるだろう」
インティスはその名前に眉を顰めた。
アテネは取り戻すべき幼なじみの名前、ミゼリットはアテネをさらった張本人で、最近知らされた自分の母親の名前。
だが、未だに母親がいること自体実感できずにいた。
「神域へはここから行くわ」
カーリアンはそう言うと、両開きの大きな窓を開け放ってみせた。
そこは窓から外の足場に出られるようになっていて、足場にはびっしりと魔法陣が描かれ、そこからいくつもの光の糸で編まれたような道筋が、足場の向こうの空中へ伸びている。
「ここ……歩けるの……?」
空中へ伸びた道筋を指さし、インティスはさすがに不安になってレイに尋ねた。
「歩けるよ。精霊たちが作ってくれた、目的地に直接繋がっている回廊なんだ。外側からは見えなくなっているから、ここを歩いても誰かに見つかることはない」
「急ぐわよ、歩くだけなんだから」
カーリアンは慣れたように回廊へ足を踏み入れた。
急かされてインティスも一歩踏み出すと、糸のような足場は意外にしっかりしていた。
これならたとえ走っても大丈夫そうだった。
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