在るべきところへ

リエ馨

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◆在るべきところへ◇10話◇彼の秘密 ③

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◆在るべきところへ◇10話◇彼の秘密 ③


「……賢者様」
「何だい」
「……確かに彼のことを伺ったのは私からですが、何故そこまで詳細を教えて下さるのですか。カーリアンが私を寄越したことに、何か意味があるのですか」

 彼女にも聞けなかった疑問だが、未だに自分がここにいる理由がわからないでいた。

「……妹は、何でも口に出す性格ではないからね」
「はぁ……」

 それはここ四年の付き合いで何となくわかっていた。察しないと時々怒ることもあるくらいだ。

「君は、妹が信頼を置いている数少ない人間のうちの一人だということだよ、フェレナード」
「え……」

 フェレナードは予想外の答えに戸惑った。その言葉には全く心当たりがなかったからだ。

「私が魔法陣の伝言を広げても、君は大して驚かなかった。妹が君に魔法陣を教えたという証拠だ」
「それは……確かにカーリアンから習いました」
「彼女は他人に魔法を教えることはあっても、魔法陣を教えたことは、これまでただの一人もいなかったよ」
「……本当ですか」
「そう、妹は人の本質を見ることに長けている。魔法陣は使い方を間違えれば簡単に一国を滅ぼすこともできるから、それほど君を信頼しているということだろうね。だから私も君を信用することにしたんだ」
「そ、そうですか……」

 ひたすらいいようにこき使われたこともあるが、言わないでおいた。
 レイは視線を外し、目を伏せる。

「妹の判断は助かるよ。この先何があるかわからない……ラキタルから返事がないからね」
「賢者様、それは……」
「そろそろ戻ろうか。あの子たちを心配させてしまう」

 ラキタルとは彼らを生き永らえさせている天空神のことだ。一番最後に一番大事なことを聞いたと思ったが、聞き返そうとすると切り上げられてしまった。


    ◇


 翌日の午後、ようやく砂漠の最南端に到達した。

 隣国とを隔てる壁があることは知識として常識になってはいるが、実際にわざわざここまで見に来る者はいない。
 それはインティスも同様で、思っていたものとは大分違った。分厚い石みたいなものが天高くそびえているから誰も通れないのかと思っていたが、その壁は煙を閉じこめたような、はっきりと形がわかるようなものではなかった。フェレナードは後になってあの壁を、深い霧のようなもの、と言っていた。
 その彼が向こうからやってきた時のように、カーリアンから持たされた石を出そうとすると、レイはそれを制し、煙のような壁に片手をかざした。
 すると、そこから煙が逃げて行き、人一人が通れるくらいの空間ができた。その向こうには、水の遺跡にあるような草木が生い茂っている景色が見えた。
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