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◆在るべきところへ◇9話◇夢の話 ③
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◆在るべきところへ◇9話◇夢の話 ③
「……こんなはずじゃなかった……か。誰が言ってるのかしらね。……あたしもレイも、心の中ではそう思ってるのよ」
「え……?」
そんなこと、インティスは一度も聞いたことがなかった。
ライネは気配を伺うようにあたりを見回し、誰もいないことを確認すると、内緒話をするようにインティスへ体を寄せた。それは必然的に隣にいるフェレナードにも聞こえることになるが、彼女は構わず話し始めた。
「……レイはね、ミゼリットが母親として迎えに来たら、あんたを返そうと思ってたのよ」
「母親として……?」
インティスがライネに聞き返すと、彼女は頷いた。
「レイが言ってたのよ。あたしは人間のことはそんなに詳しくないけど、母親だったら普通赤ちゃんを育てるじゃない。でも、ミゼリットはそうしなかった。おかしいなって思って、あんたを引き取ったって。でもって、気付いたミゼリットが勝手に連れて行かないように、ずっと魔法で隠してたんだって。それでも、ちゃんと迎えにきたらミゼリットに返そうって」
「俺を?」
「そうよ」
レイがそんなことを考えていたなんて、インティスは全く知らなかった。
「今まで隠してたなんてずるいじゃない。探すのに苦労したわ」
炎と共に村に現れた彼女は、レイにそう言っていた。そういうことだったのだ。
ライネがまた話し出す。
「でも、人間をまるごと隠す魔法って大変みたいで、ほんとはアテネも隠したかったんだけど、あんたを隠すので精一杯でね。それでアテネには力を制御する方法を教えて、自分で抑えさせてたの。でも……やっぱり駄目だったみたい。どっかであんたの存在に気付いて、それで彼女は村に来たのよ……多分ね」
だが、結果的にミゼリットは息子であるインティスではなく、アテネを連れ去って行った。
「レイはあんたもアテネもこの村も、みんな守るつもりだった。もちろんあたしも協力してね。だけど、アテネだけ守れなかった……」
ライネはちら、とフェレナードを見て、すぐに視線をインティスに戻した。
「……レイは言ったでしょ、あんたのせいじゃないって。それはレイの言う通り。本来あたしたちが守り切らなきゃいけなかったの。だから、あんたがもし自分のせいだって思ってるなら、それは本当に違うのよ」
「……言ってくれれば俺も協力したのに」
「いつミゼリットが来るかわかんないのに言えるわけないでしょ。余計な心配するのは子供の仕事じゃないわ」
「……自分だってそんな格好してるじゃん」
「あたしは動きやすいからこうしてるの。本当はあんたよりもずっとお姉さんなんだから」
会話は少し和んだように終わったが、それでもまだ、少年は責任の所在に納得していないように、フェレナードには見えた。
◇
「……こんなはずじゃなかった……か。誰が言ってるのかしらね。……あたしもレイも、心の中ではそう思ってるのよ」
「え……?」
そんなこと、インティスは一度も聞いたことがなかった。
ライネは気配を伺うようにあたりを見回し、誰もいないことを確認すると、内緒話をするようにインティスへ体を寄せた。それは必然的に隣にいるフェレナードにも聞こえることになるが、彼女は構わず話し始めた。
「……レイはね、ミゼリットが母親として迎えに来たら、あんたを返そうと思ってたのよ」
「母親として……?」
インティスがライネに聞き返すと、彼女は頷いた。
「レイが言ってたのよ。あたしは人間のことはそんなに詳しくないけど、母親だったら普通赤ちゃんを育てるじゃない。でも、ミゼリットはそうしなかった。おかしいなって思って、あんたを引き取ったって。でもって、気付いたミゼリットが勝手に連れて行かないように、ずっと魔法で隠してたんだって。それでも、ちゃんと迎えにきたらミゼリットに返そうって」
「俺を?」
「そうよ」
レイがそんなことを考えていたなんて、インティスは全く知らなかった。
「今まで隠してたなんてずるいじゃない。探すのに苦労したわ」
炎と共に村に現れた彼女は、レイにそう言っていた。そういうことだったのだ。
ライネがまた話し出す。
「でも、人間をまるごと隠す魔法って大変みたいで、ほんとはアテネも隠したかったんだけど、あんたを隠すので精一杯でね。それでアテネには力を制御する方法を教えて、自分で抑えさせてたの。でも……やっぱり駄目だったみたい。どっかであんたの存在に気付いて、それで彼女は村に来たのよ……多分ね」
だが、結果的にミゼリットは息子であるインティスではなく、アテネを連れ去って行った。
「レイはあんたもアテネもこの村も、みんな守るつもりだった。もちろんあたしも協力してね。だけど、アテネだけ守れなかった……」
ライネはちら、とフェレナードを見て、すぐに視線をインティスに戻した。
「……レイは言ったでしょ、あんたのせいじゃないって。それはレイの言う通り。本来あたしたちが守り切らなきゃいけなかったの。だから、あんたがもし自分のせいだって思ってるなら、それは本当に違うのよ」
「……言ってくれれば俺も協力したのに」
「いつミゼリットが来るかわかんないのに言えるわけないでしょ。余計な心配するのは子供の仕事じゃないわ」
「……自分だってそんな格好してるじゃん」
「あたしは動きやすいからこうしてるの。本当はあんたよりもずっとお姉さんなんだから」
会話は少し和んだように終わったが、それでもまだ、少年は責任の所在に納得していないように、フェレナードには見えた。
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