在るべきところへ

リエ馨

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◆在るべきところへ◇7話◇神話の裏側 ②

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◆在るべきところへ◇7話◇神話の裏側 ②


「五人……?」
「ああ、五人目はジャドニックと言って、剣士だった。けれど、神域に住む神々の元へ行く途中、彼らを護衛する騎士団が現れた。ジャドニックはその場を一人で引き受けて、後で追いつくからと言って残りの四人を先へ進ませたんだ」
「そんなの……」

 インティスは眉を顰めた。それは様々な英雄譚で聞くよくある話だ。そして、大体結末は決まっている。

「そう、結局……ジャドニックとは二度と会えなかった。神々の恩寵を取り戻して世界に光も戻ったけれど、すぐに神域は封鎖されてしまった。彼を捜すための許可は下りず、私たちは元いた大地へ送り届けられた。そうして、今に至るかな」
「……初めて聞きました」
「そうだね。神話で四人と言われているのは、ジャドニックの両親が語り継がれることを望んでいなかったんだ。四人を守れたことだけで誇りだと言っていた」

 そこまで話を終えると、レイの表情が重くなった。

「……けれど当時、ミゼリットのお腹には子供がいて、恩寵を取り戻せたらジャドニックと結婚するはずだったんだ」

 それはつらい話だ、とインティスは思った。
 気がつくと、レイの向こう側で、ライネが背中を丸めて話を聞いているようだった。

「だが、ジャドニックは死んでしまった。私とカーリアンは、神域から送り届けられてからミゼリットを探したけれど、見つからなかった。恐らく一人でジャドニックの亡骸を探しに神域や周辺の地域をさまよって、そのさなかに生んだのだと思う。神域は何かを探すとなると広大で、本来は封鎖されているから人間は立ち入ってはいけない。妹と見つからないように探すのも大変だった。それでも二、三百年は探して、ようやく彼女が生んだ赤ん坊を見つけることができたんだ」

「神域では時間が流れないから、赤ん坊のままだったということですか」

 フェレナードが事実を確認する。神話としての言い伝えだったはずなのに、目の前で真実ということがわかってしまった。

「そうだよ。でも、神々が住むところに、人間で、しかも赤ん坊をこれ以上置き去りにしていいものか、私も妹も随分悩んだ。しかし、母親はやはり見つからないし、万が一その子の存在が神に見つかっては、神域を侵したとして殺されてしまう。だから、妹と二人でその赤ん坊を引き取ることにした」
「神域から出て、お二人で赤ん坊を育てたと……」

 夫婦のような言われ方をして、少しだけレイが苦笑した。

「私たちはそれぞれ島や大陸の様子を見なければならなかったから別行動で、赤ん坊は妹が育てていたよ。でも、彼女の住む国の情勢が変わって、その後は私が引き取ったんだ」
「え……?」

 どこかで聞いたことがあるような気がして、インティスは思わずレイの方を向いた。
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