在るべきところへ

リエ馨

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◆在るべきところへ◇3話◇銀の髪の男 ②

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◆在るべきところへ◇3話◇銀の髪の男 ②


 インティスが捌いた砂ミミズを村の皆に配り終えると、もう昼を少し過ぎた頃になっていた。
 残りを自分の家まで運ぼうとして、後ろから銀の髪の男に呼び止められた。

「やあ、さっきはありがとう。命拾いしたよ」
「……別に。用事は終わったの」
「ああ、おかげさまで」

 男は大役を終えたような顔をしていた。その表情は晴れやかで、悪巧みといった言葉は似合わない。確かに、水の精霊が言うように、今までレイを訪ねて来た下らない連中のような嫌な感じはしなかった。
 それから、初めて会話した時に抱いた、言葉の違和感がなくなっている。

「ねえ、ここに来るまでと違ってこの村は随分風が穏やかだけど、何かしてるのかい?」
「何か……ああ、護符がある。風はレイが作って、炎と土は村長が作った」
「なるほど、護符かぁ……」

 村はそれらの護符によって砂嵐と灼熱の日差しから守られているからだ。納得したように頷くと、彼はそれからも物珍しそうにあたりを見回していた。
 大人が抱えるほどの大きさの四角い石を積み上げてできた家々や、村の一角を占める拳大の赤い果実の乾燥場所、暑さに強いと言われている物資の運搬用の家畜などは初めて見る様子だった。そして、思い出したようにくるっとインティスの方を向く。

「そういえば、まだ名乗ってなかったね。俺はフェレナードというんだ。よろしく」
「はぁ……」

 突然ではあったが、その流れでは自分も名乗らないわけにはいかない。自らの名前を伝え、差し出された握手に応えた。

「君は詳しいね、この村の人?」
「いや……違う。レイとあちこち住んでたから、ずっとじゃない」
「そうなんだ」
「あ、レイは親じゃないから…俺の生まれの話も聞いたことない」
「……そう」

 きょとんとしたようなその返答を聞いて、インティスはしまったと思った。レイと生活していると、どうしても彼と自分は親子として解釈されることが多かったから、つい先回りして喋ってしまった。
 だが、空気は気まずくなるようなことははく、銀の髪のフェレナードはもう少しこの村を見たいというのでその場で別れ、インティスはようやく家に帰ることができた。
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