在るべきところへ

リエ馨

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◆在るべきところへ◇2話◇四人の人間の話 ②

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◆在るべきところへ◇2話◇四人の人間の話 ②


「ねえ、あたし、あんたに教えてもらった四人の人間の話が好きよ」
「またその話? それ教えたのずっと前だろ」
「あたしにとってはついこの間よ。あんたより全然長生きなんだから」

 少女のような小柄な体はあっても重さを持たない彼女がくるくる回ると、薄手の着衣の端から大きな水滴が舞った。

「戦士ハーテイン、魔法使いカーリアン、賢者レイヒーン、弓使いミゼリット。よくたった四人の人間が、神様と対等に掛け合うことができたわよね」

 ライネは楽しそうだが、インティスは少しうんざりしている。

「俺は早く砂ミミズを見つけたいんだけど」
「ちょっとくらい付き合ってくれたっていいじゃない。神様なんて、人間がそうそう会えるもんじゃないのよ?」
「それ自体が大昔の話なんだってば。本当かどうかはわかんないよ。有名な神話で、子供でも知ってるくらいなんだから」
「だからいいのよ、ほんとにあったらいいのにって思うこともできるでしょ?」
「そういうもんかなぁ……」

 インティスとライネの出会いの話はさておき、二人が知り合ったばかりの頃、仲良くなるきっかけに、彼女の知らない人間の神話を教えてあげたら、と助言してくれたのはレイだった。
 レイの方が物知りなのだから、インティスは自分が教える必要はないと思ったのだが、話しかけてみると彼女は興味津々で聞き入ってくれて、そして今に至る。

「四人の中に、水の精霊の力を持つ人間がいないのはあたしとしては残念だけど、弓使いのミゼリットは炎の精霊の力が強かったんだから、この砂漠の国にもゆかりがあったかもしれないわね」
「だから昔話だってば……」

 饒舌に空想を語るライネを呆れたようにじっとりと睨んでいたが、その時ようやく目で見える範囲に、潰れた砂ミミズの姿が現れた。

「あら! きりのいいところで見つかったじゃない!」
「調子のいいこと言って……」
「改めて見ると、結構でかいやつだったわね」
「まあいいや、みんなに配って、今夜の夕食はこれにしよう」

 せめて昼前までには戻りたいな、と思いながら、インティスは腰の剣を抜いた。


    ◇
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