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その涙は未来の為に

最終話 エピローグ

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―― さらに3年後 ――

「アシュタロテ公爵夫人、ティナ・アシュタロテを第48代目の聖女とする」
 パチパチパチ
 陛下の言葉で会場内から溢れんばかりの拍手が鳴り響く。

「………………」
 なんでこうなった。


 数ヶ月前……

「お姉さま、いきなりですが私結婚する事になりました」
 突然ユフィからの結婚宣言。

「ホント、いきなりすぎるけど、とにかくおめでとう」
「そう言う事なので、聖女のお仕事よろしくお願いしますね」
「………………は?」
 今この小娘なんつった?
 いや、別に聖女だから結婚できないってわけじゃないのよ。アリアンロッド様だって聖女と女王を兼任されながらご結婚をされ、お子様もお産みになられたんだから。

「ごめん、意味がわかんない」
「ですから、私はガーランドに嫁ぐので聖女のお仕事をよろしくと言ったんです」
「言ってないわよ! 何よそれ、ガーランドに嫁ぐなんて聞いてないわよ」
「知らなかったのはティナだけよ。前に言ったでしょ、頑張りなさいって」
 補足するようにレジーナが私に言い聞かせてくる。
 そういえば私が聖女をユフィに継承するパーティーでそんな事を言っていた気が……あの時の言葉はてっきりレクセルから結婚の申し込みがあるのを『聞いていないの?』と、尋ねられているもんだと思ってた。
 現にあの後私はプロポーズされ、今は二人の子供まで授かっている。

「ちょっとまって、すると初めからユフィがガーランドに嫁ぐ事が決まっていたってわけ?」
「実は、お父様がガーランドの第一王子の事を大変気に入られ、私もお付き合いをするに連れ彼をお慕うようになっていき、この度正式にプロポーズをお受けする事になったのです」ポッ
 ポッ。じゃないわよ! 何顔を赤らめて恥ずかしがってるのよ。
「それじゃ何で聖女の役職を引き受けたのよ」
「あなたの為でしょ、何時までもレクセンテール様との仲が進展しないからユフィが聖女の代行を引き受けたんでしょ」
 ブフッ
 ユフィが聖女の代行!?

「って、ちょっっとまって。それじゃこの物語のタイトルって私このとじゃないの!?」
 それって思いっきり読者を嵌めてるじゃない!
「何意味不明な事を言ってるのよ。まぁ、そういう事だから諦めなさい。あなた以外は全員周知の事実よ」
「ちょっ、そんな重要な事をサラッと言うな! そもそも国民が納得しないでしょ」
「何言ってるんですか、国民には事前にそう告知されているんですよ。ティナお姉さまがお子様をお産みになる間だけユフィお姉さまが代行するって。そうでないと、国民から絶大な信頼を得ているお姉さまがそう簡単に聖女を辞められる訳がないじゃないですか」
「……」
 やられた、これも全て王妃様の策略であろう。私がラフィン王子の婚約を蹴ったからと言ってこんな罠を……。

「諦めなさい、あなたはそういう星の下に生まれたのよ」
「こればかりはレジーナさんと同意見ですわ」
「そうですね、ラーナお義母様がティナお姉様を手放すわけないじゃないですか」
「頑張ってくださいティナちゃん」
『諦めろ、聖女よ』


「そういう事なのでよろしくお願いしますね。聖女様。うふふ」
「き、聞いてないわよぉーーーー!」

 お母さん、私は今日も元気です。





【 エンディング 】

★フランシュヴェルグ侯爵 リィナ・フランシュヴェルグ
 姉のティナがアシュタロテ家に嫁いだ関係で、侯爵の座を継ぐ事になる。
 その後、聖女候補生から巫女になり侯爵を兼任しながら聖女を支え続けたという。最近気になる男性がいるようだが、何故か「聖女怖い聖女怖い」とうなされているという噂も。

★最後はお笑い要因 レジーナ
 フランシュヴェルグ家の支援の元、生涯を聖女の為に尽くしたと言う。今では立派な巫女となり、幸せに過ごしているらしい。
 噂では従姉妹の姉妹に日々振り回され、お笑いのスキルが向上しているとか。

★最後の悪役令嬢 クリスティーナ
 唯一名前なしの悪役令嬢から生き残った人物。
 レジーナとコンビを結成したのか、日々一緒に新聖女に振り回されている。以外とレジーナよりしっかりしており、王妃様からの信頼も厚いらしい。
 最近ではレジーナと一緒に旦那探しに勤しんでいるんだとか。

★元フランシュヴェルグ侯爵 エルバート・フランシュヴェルグ
 侯爵の座をリィナに託し引退。最近は夫婦揃ってアシュタロテ家に誕生したひ孫に会いに行くのが日課になっているんだとか。
 最近新当主となったレクセンテールの髪が薄くなってきたという噂もちらほら。

★前半の引き立て役 ダニエラ&ベルナード
 収監期間を終え無事出所。直後聖女から渡された一通の手紙を受け取って以降、嘗て聖女が暮らしていたという地で細々と暮らしている。手紙にどのような内容が書かれていたかは知らされていないが、噂では亡くなった姉からの手紙だったとかいう話も。
 最近では時折墓地へ行っては清掃などのボランティアに勤しんでいるらしい。

★元アルタイル王国国王 アルヴァン・F・アルタイル
 息子であるラフィン王子にその座を譲り引退。現在は王城の敷地内に用意された建屋で元王妃と共に平穏に過ごしている。
 最近はメルクリウス元公爵とこっそり王都へ出かけては、警備兵を困らせているという。

★元アルタイル王国王妃 ラーナ・F・アルタイル
 アルヴァンが引退した事により隠居生活がスタート。自由になった時間を利用し、嘗ての友に会いに行ったり娘たちの子供に会いに行ったりと、忙しい時間を過ごしている。近々小さな宿場町に聖女のモニュメントを作るんだと、貴族達から寄付金を集めているらしい。

★アルタイル王国国王 ラフィン・F・アルタイル
 父親である国王より王位を継承する。現在は王妃を迎え日々忙しい時を過ごしているとか。
 時折夢で「聖女怖い、聖女怖い」とうなされている時があるとかないとか。

★ガーランド王国王妃 ユフィーリア・ガーランド
 ガーランド王国の第一王子の元へと嫁ぐ。
 それ以降両国は友好な関係を築き、時折アルタイル王国の聖女がガーランド国内を回る様になったと言う。
 伝承には残っていないが、三人の子供に恵まれ幸せに過ごしたという。

★四人目の聖女候補生だった者 アリアナ・ユースランド
 アリアナが投獄された事により、お家取り潰しに成りかけていたユースランド家であったが、聖女のたっての願いにより国王の管理下の元、遠縁の者から新たな当主が選ばれ存続が認められた。
 その後元凶となったアリアナは最後まで無実だと騒ぎ立てていたが、誰一人として相手にされず、人知れず刑に処された。

★国を揺るがした者 ルキナ・ユースランド
 捕らわれた事により全てを諦めたのか、騎士団の聴取に素直に応じる。
 投獄中は毎夜うなされているのか、牢屋から泣き叫ぶ声が聞こえてくると言うが真相はわからないらしい。
 その後人知れず刑が執行されたが、その時の姿はまるで別人のように変わり果ており、何一つ逆らう事なく刑に処された。

★ソルティアルの領主 クラウス・ソルティアル
 現聖女が候補生時代に受けた報酬で水田工事を行っている途中、突如地下水脈より温泉が湧き出す。
 現在は聖女の温泉街として観光客で溢れかえる様になった。
 一時は戻りかけていた髪も、時折聖女自ら温泉に浸かりに来ているという噂が流れて以降、今や見る影もないという。

★ソルティアルの領主夫人 エステラ・ソルティアル
 セリングを養子に迎え入れ日々教育に勤しむ。時折立派な馬車がソルティアルの領主館に出入りをしては、二人の女性を引き連れ温泉を楽しんでいるらしい。

★ティナの専属メイド ラッテ
 ティナが嫁いだ関係でその席をアシュタロテ家に移す。現在は夫人たっての願いにより、生まれたばかりのご息女達のお世話をしている。
 最近では見習い騎士から正式に騎士に昇格した青年と恋仲になったとか。

★イシュタルテ公爵 アミーテ・イシュタルテ
 現在も現役を続け王国を支えている。
 最近は妹達に引退するよう勧められているらしいが、本人は「こんな楽しい事、そう簡単には辞められないわよ」と言って今尚現役を貫いている。
 最近は生まれたばかりの孫を見るためにお城に通っているとか。
 
★棚からぼた餅 マルシア・F・アルタイル
 ラフィン王子が失恋に落ち込む中、親友であるユフィの頼みで励ましている最中に恋に落ちる。以降良好な関係が続いているという。
 最近は毎日生まれた子供を見にくる母親に困っているという噂も。

★元アシュタロテ公爵 メルクリウス・アシュタロテ 
 一時は二大公爵家の一翼であるイシュタルテ家から、二代に渡り王妃を出された事に世間が騒然となるが、その後アシュタロテ家に現役聖女を迎える事が分かり、更に世間を騒がした。
 本人はそんな騒ぎに関心がないのか、生まれたばかりの孫娘達に笑顔が絶えないという。
 
★アシュタロテ公爵 レクセンテール・アシュタロテ
 奥手奥手と言われ続けていたティナのハートを遂に射抜く。現在は二人の娘に恵まれ幸せな時を過ごしている。最近気になる事といえば、義理の祖父母が毎日のように娘の会いに来る関係で、髪が薄くなってきている事ぐらいとか。

★平民出身の騎士 ディアン
 元々はティナと年が近いからという理由で護衛に選ばれただけだが、その後聖女となった彼女から絶大の信頼を得て見習い騎士から正式に騎士へと昇格。
 現在は密かに抱いていた恋心を封印し、新しい恋に芽生えたとか。

★お城メイド長 アドニア
 現聖女の妹が愛用している焦げ付かないフライパンが有名となる。何処で手に入れたのかと一時は王都を騒がすほどの大騒ぎになるが、出処がお城のメイド長だと分かると、問い合わせが殺到したという。
 最近ではプレゼントに焦げ付かないフライパンが流行り、実家の金物屋が潤っているという噂も。

★風の精霊 ライム
 ティナの願いにより生まれたばかりの娘達の面倒をみる。時折ティナが家に戻って来たかと思うとフラッと消え、翌朝は何故か清々しい笑顔になっているという。

★聖女の守護獣 御影みかげ
 歴代史上見た事がない聖女の破天荒な行動に日々振り回される。最近ではツッコミに磨きがかかったという噂も。
 時折聖女の枕代わりなっている姿を巫女達に目撃され、呆れられているという。

★伝説の聖女 ティナ・アシュタロテ
 彼女が行った数々の偉業で国民から絶大な支持を得てしまう。本人は必死に誤魔化しているようだが、気づいていないのは当の本人ただ一人。そんな彼女の姿を分かってか、国民達は気づいていないフリをしていると言う。
 伝承では何故か一人で二回も聖女となった事が記されており、歴代で最も愛された聖女だったと伝えられている。

 とある宿場町にある石碑には、彼女の言葉がこう残されている。

 汝、悲しむ事なかれ、辛い時、苦しい時こそ笑顔を絶やさず歩み進め。その涙は明日への力、一度ひとたび立ち止まったとしても、再び歩み出す力こそ新しい未来への第一歩。どんな時でも必ず明日は来るのだから。と……





「お姉ちゃん、もう起きてよお姉ちゃん」
「んん~、あと5時間……」
「もう、何なバカな事を言ってるのよ。今日から聖女候補生になるんでしょ」
「リーティア様、そんなんじゃセリティア様は起きませんよ。ここは何時ものアレを」
「分かったよラッテ。さぁ、お姉ちゃん口を開けて。お母さんの手作りクッキーだよ」
 パク、もぐもぐ
「……………………きゃーーーーーっ、何て物食べさすのよ! 一瞬クラリスお祖母様が川の向こうで手を振ってる姿が見えたわよ! ライムも見てないで止めなさいよ」
「起きないセリティアちゃんが悪いんですよ、こんなところまでティナちゃんにそっくりなんですから」

「らいむぅ~、何が私にそっくりですって~」
「い、痛い、痛いですティナちゃん」
「「お、お母様!」」
「もうティナ様、何度も言ってますが聖女の力で気配を消して近づかないでくださいよ」

「ふふふ、いいじゃない親子のスキンシップよ。さぁ、食事にしましょ。今日から二人は聖女候補生になるんだから」
「「はい、聖女さま」」



―― Fin ――


 新章『聖女、はじめました。』
 今夏スタート! Comingカミング Soonスーン

 ウソです、始まりません。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

当初はボツ案だった『聖女の代役、引き受けます。』を設定を大幅に見直して初めて作品でした。
私が書く作品の悪役(令嬢)はよく結末が物足りないと言われるので、ルキナはとことん悪く表現をし軽く引くほど可哀想に表現したのですが、上手くいったかは疑問に残ります。

一応今回のテーマは『少女達は悲しみを乗り越えて』
前聖女の死を乗り越えて立派な聖女の代行?になっていくティナを描きたかったのですが、どうだったでしょうか?

それでは余り長々と書く訳にもいきませんで、次回作で再会出来れば幸いです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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