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第18話 聖女の輝き

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 絶対絶命ってやつかしら、多分私一人ならスターゲイザーの力を使って切り抜けられるのかもしれないが、セレスティナと私に付いてきた騎士達までは助けられない。だけど……

「諦めないわよ」
「えっ……」
「もう絶対に諦めないと決めたのよ、何が何でも守ってあげる。私はミリーナ・ウエストガーデンよ!」
 再び星槍が激しく輝き出す。

『よく言ったわ、それでこそ星槍の継承者よ!』
 あ、あぁ、その声は、間違いない、私がずっとずっと聞きたかった声だ!!
流星の光シューティングスター!」
 天空から無数の光の閃光が大地に降り注ぐ。
「ローズさん!!」
 見間違えるはずがない、建物の屋根に佇む人影は出会った頃と何も変わらない黒髪とマスク姿。やっぱり生きていたんだ。
 涙で前が見れなくなってしまう。

「道を開けるわ、そのまま突破しなさい!……光の聖杖、バルキリー!」
 五芒星の魔法陣から放たれた一条の光が、私たちを囲っていた敵兵を薙ぎ倒す。
「セレスティナ行くわよ、もう少しだけ我慢して」
 私は皆んなを連れて敵兵の囲いを突破する。後ろを振り向けばローズさんが上から魔法で敵兵を引きつけてくれていた。

***************

烈風れっぷう !」
 私に振り下ろされる剣は一陣の風によって敵兵ごと吹き飛ばされていった。
 何? 何が起こったの?

「ご無事でござるか?」
 えっ?
 突然目の前に現れた『キモノ』という服を着た一人の男性。
 この姿、この喋り方、扱う武器からこの人の正体は一目瞭然だ。だけど、だけどなぜマスク姿?

「カリナさん無事ですか!?」
 いつの間にか20人近い剣兵を倒しこちらに駆けつけてくれる雫さん。これって感動の再会であってるよね?
「どこの御仁かわかりませんが、仲間のピンチを助けて頂いてありがとうございます」
「…………えーーーーーっ!!! もしかして雫さん気付いてないんですか!? どこからどう見ても準さんでしょうがぁ!!!」
「……えっ?」
 思わず大声で突っ込んでしまったけど、ワザワザマスクまで付けて現れたのだ、正体をバラすのはまずかったかなぁ? 

「本当ですか?」
「うっ、ひ、人違いでござる」
「カリナさん、人違いっておっしゃっていますよ?」
 ギャグですか! この兄にしてこの妹、ある意味天然記念物ですよ。

「もう何言ってるんですか、マスクを付けたからって服装も喋り方も一緒でしょ、これで気づかないのは雫さんだけです」
「カリナさん、それ何気に酷い……」
「こ、これはローズ殿かこっそり気づかれないように助けるのがカッコイイと言うので……」
 そう言いながら顔を赤くしながらマスクを取る準さん。
「兄上!?」
 ここにきて初めてマスク姿の男性を兄だと認めた雫さん、何ですかこれ、感動の再会が台無しじゃないですか。
「そんな事よりローズ様もご無事なんですか?」
「そ、そんな事……」
 なぜか悲しい顔をされている雫さん、この際しばらく黙っててもらおう。

「無事でござるよ、今はミレーナ殿のほうへ救援に向かっているでござる」
 よかった、やっぱり生きておられたんだ。お嬢様は生きていると信じておられたけど、私は正直諦め掛けていた。
 あぁ、聖女様ありがとうございます。

「まずはこの門を開ければいいのでござるな」
「はい」
「それじゃ行きましょうか」
 こんな怪我なんかで立ち止まっていられない。
 私は素早く応急処置をして再び戦場へと舞い戻った。

***************

「ローズさん!」
「ミレーナ久しぶり、しばらく見ないうちに立派になったわね」
 敵の囲いを突破した私たちは建物の陰に避難していた。
 そこで改めて再会したローズさんは別れる前と何ひとつ変わらない姿で私を抱きしめてくれる。
 会ったら色々言いたい事、聞きたい事があったというのに何一つ思い出せない。

「色々話しをしたいけど、今はこの戦いを終わらせる事が先決よ」
「はい」
「東門に別働隊を配置してるのよね」
「カリナと雫さんが内側から門を開ける手筈になっています」
「わかったわ、あちらにも心強い見方を向かわせてるから大丈夫なはずよ」
 それって準さんの事? やっぱり二人ともどこかで助かっていたんだ。
 私が先走ったせいで順序がおかしくなってしまったが、外ではアドルとクラウス、それにシルメリアが頑張ってくれているはずだ。
 今できる事は出来るだけ早く正門を制圧する事。

「うっ」
「あなた怪我をしているの?」
「そうだった、セレスティナ大丈夫? 治療をするからじっとしていて」
 すっかりローズさんの事で忘れてしまっていた。
 私は慌てて癒しの魔法を唱える。
「そんなんじゃ応急処置にしかならないわ、私に見せてみなさい」
 そう言ってローズさんが空中に魔法陣を描いたと思ったら
「……リヴァイヴァル」
 淡い光が辺りを照らし見る見るセレスティナ傷口を直していく。いや彼女だけではない、周りで見守っていた騎士や私の負った擦り傷までも、淡い光を浴びた者全員が傷ひとつない状態まで回復していた。
「凄い」
 ローズさんが癒しの魔法まで使えるだなんて知らなかった。これはもう神官や巫女といったレベルではない。
 眩いばかりの光りを全身に浴び、眼の錯覚か光りの屈折か分からないが、ローズさんの背中には真っ白で綺麗な翼が見える。私は、いやこの国の人々ならこう言う人を何て呼ぶかなんて誰もが知っている、聖女。
 セレスティナも目を見開き驚きを隠せないようだ。彼女もまた私と同じ聖女の血を引いているのだ、これがどれほど凄いものかわかっているはず。

『『『わぁーーー!!』』』
「来たわね、このまま合流するわ」
「あ、はい」
 いける、多分ここにいる者全てがそう思ったに違いない、私たちは建物の陰から飛び出し再び敵兵に襲いかかる。
 今の私は誰にも負ける気がしない。

 全身から炎が溢れ出し、迫り来る敵兵に目掛けて大きく跳躍する。
「七星槍術奥義! 七星鳳凰翼!!」
 炎の鳥となって敵兵を一気に薙ぎ倒す。
三角の雷光線トライアングルレイ!」
 さらにローズさんの魔法が空中から敵兵に襲いかかった。
「ミレーナ、一気に行くわよ」
「はい!」
 私の高ぶる気持ちに応じ、星槍が再び光り出す。

「ミレーナ様?」
 戦いの最中、突入部隊を指揮したフィーナ様が私たちに気づいたようだ。
 まぁ、本来の作戦なら私はここに居ないしね。
「すみませんフィーナ様、敵の罠に嵌ってしまい孤立しておりました」
「そうでしたか、ご無事で何よりです。このまま一気に……」
「ん? 何でフィーナがここにいるのよ」
「お姉さま!?」
 そう言えばローズさんはフィーナ様がここにいるとは知らなかったんだ、いつからこの街に潜伏されていたのかは知らないが、彼女たちが援軍に駆けつけてくれたのは二日前だから、まだ噂はこの街まで届いていないはずだ。

「うぅ、お姉さまお姉さまお姉さまーっ」
「こらこら、今は戦場でしょ。もう仕方がないわね」
 泣きじゃくりながらローズさんの胸に飛び込むフィーナ様、ローズさんも何だかんだ言いながら優しく受け止めている。もしローズさんが私のお姉さまなら私も……。いや、今はこの戦いに集中するのよ。

「さぁ一気に落とすわよ!」

***************

「報告します! 東門が突破されました」
「何だと! 敵は正門だけではなかったのか!?」
「突入された敵兵はおよそ200、正門にむかって進撃したとの事です」
 くそっ、地の利は向こうにあると言う事か。
 街中に突入されたとなると正門は前後から同時に攻撃を受ける事になる、そうなれは一日と持たずに突破されるだろう。
 こうなれば城の門を閉じ籠城するしかない。一日、たった一日耐えきれば援軍が戻ってくるのだ。

「報告します! 正門が突破されました!」
「バカな、早すぎる」
 たった今東門が突破されたと報告を受けたばかりだ、それなのにこの僅かな間で正門が落とされたというのか。
「敵は一体どのような手を使ったのだ」
「報告によりますと敵は強力な魔法を放ち、光る武器を所持しているとの事です」
「聖戦器か!」
 この国はかねてより聖女の祝福を受けているといわれている。中でも王族と公爵家には聖女の血が色濃く残っており、一般人とは比べものにならないぐらい強力な魔法を操れると聞いている。
 そして一番厄介なのが聖戦器と呼ばれる光り輝く武器。普通の者が扱えばただの丈夫な武器でしかないが、聖女の血を色濃くひく者が扱えば強大な兵器へと姿を変える。
 今は五つある聖戦器のうち神剣と聖剣は王都に、星槍はグレアム卿に、天弓はこちらに寝返ったイーストレイクの公子が持っている。残るは光杖とよばれる杖だが、逃げ出したサウスパークの公女が持っていると言われている。

「その光る武器はどのような形をしていたのだ」
「細身の剣と槍と聞いております」
「何だと! 杖ではないのか!?」
「はい、剣と槍でございます」
 槍……これでグレアム卿の裏切りは確実なものとなった。残るは細身の剣だが、まさか新たに聖戦器を作り出す技術があるというのか。
 くそっ、どちらにせよこれで益々こちらが不利になってしまった。今更ながらジェラルドが言っていた事が本当ではなかったのかとさえ思えてしまう。
 こうなれば形振なりふり構っていられない

「誰か、今すぐ街に出て住民を連れ出してこい。そいつらを人質として立て篭もるぞ」
「しかしそれは……」
「つべこべ言うな、さっさっと行ってこい!」
「全く何処まで最低な輩でござるな」
「ぐあっ」
 立ち去ろうとする兵を突如現れた男によって切り倒された。
「貴様、何処から入った!?」
 この場で敵対すると者と言えば反乱軍でしかない、だがどうやって潜入した?
「兄上、最低な輩だからこそ躊躇なく斬り倒せるのです」
「くそっ、うっ」
 逃げ出そうとした瞬間、突然背後から突然首元に短剣を突きつけられる。
「動かないでください、そのまま武器を捨ててください。」
「変な気を起こさない方がいいでござるよ、拙者たちはお主を斬る事に躊躇いはないでござるからな」
 ここまでか、場内にいる兵が駆けつけたとしてもこの場はどうにも出来ないだろうし、籠城の指示もまだ出す事が出来ていない。そもそも敵が潜入している状態で籠城も何もないだろう。 
 私は腰に付けている剣を投げ捨てた。

***************

「ミレーナ様、城にウエストガーデンの旗が!」
「カリナ達がやってくれたのね」
 城の事は私たちが一番良くしっている。カリナに任せておけば敵兵に見つからず最上階まで行く事なんて朝ごはんを作るより簡単なのだ。

「私たちの勝ちよ!」
『『『おおぉぉぉーーー!!』』』

 この日ウエストガーデン最大の街にして私の生まれた場所、スザクが帝国の手より開放された。
 援軍に出ていた帝国軍はバイロン将軍率いる部隊と、スザクから出撃した私達の部隊の攻撃を受け壊滅。そして北西の領に残っていたてい帝国軍はその日のうちに姿を消していた。
 残るは叔父が治めているグレアム領ただ一つとなったのだ。
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