上 下
16 / 23

第16話 聖戦器の秘密

しおりを挟む
「それではこの星槍は王子が?」
 この後に控えるスザク奪還作戦話し合う作戦会議が終わり、ランスベルト王子から掛けられた言葉が、後続の輸送部隊に預けていた星槍が突如光り輝いたかと思うと、次の瞬間消えて無くなったという話だった。

「聖戦器は自らの意思を持っていると言われているからな、恐らくミレーナの心の叫びに駆けつけたのだろう」
 にわかに信じられないが、実際私の元に駆けつけたのだから間違いないだろう。それにしても何故王子部隊に星槍があったのか。
「悪いが、俺たちが星槍を持っていた経緯は教えられない事になっているんだ。少なくともこの国の未来をお前達に託したいと思っている人物の好意だと思ってくれ」
 お前……それが誰を指しているか分からないけど、やっぱり王子も……

「ミレーナ様!」
「フィーナ様、この度は援軍ありがとうございます」
 王子と話しているとフィーナ様が駆け寄ってきた。そういえば彼女の持つ剣もまだ謎のままだったわね。
「あの、ミレーナ様の部隊にマスクをつけた女の人っていませんか? ずっと探しているんですが、見つからないんです」
「えっ?」
 それって間違いなくローズさんの事だろう、でも何でフィーナ様がローズさんの事を知っているの?

「それは……」
 言っていいのだろうか、必ず何処かで生きていると思っているが、未だに何の手がかりも見つかっていないのが現状だ。
 フィーナ様とどういう関係か知らないけれど、何も知らないのは知っているよりも辛い事だろう。私は迷った末、意を決意して全てを語り出した。



「そんな、お姉さまが死んだなんて……」
 話を聞き終えた彼女はその場で崩れ落ちるように倒れこんだ。
「なんで、なんでお姉さまが死ななきゃいけないんですか! そんなの酷すぎる、折角いも……」
「フィーナ!」
「でも」
「彼奴も全てを受け入れた上での事だ」
 やっぱりフィーナ様もランスベルト様もローズさんの正体を知っている。一体どこでどう暮らしてたの?

「フィーナ様、私はまだローズさん死んだと思っておりません。先日まではただ自分に言い聞かせているだけでしたが、今は実感できるんです。」
 星槍を手にした時から感じる事が出来る暖かな温もり、あれは間違いなくローズさんが近くにいた時の感じだ。きっと星槍は彼女が近くにいる事を教えてくれているのではないだろうか。

「……分かりました、ミレーナ様がそう言うのでしたら私も最後まで信じてみようと思います。」
「ありがとうございます。それでその、ローズさんとは一体どう言う関係で?」
 フィーナ様はローズさんの事をお姉さまと言っていたが、髪の色も違うし本当の姉妹と言うわけではないだろう、多分前に聞いた義理の妹、それが彼女ではないだろうか。
「リリ……コホン、ローズさんはいずれ私のお姉さまになる人、お兄さまの婚約者なんです」
「……はい?」
 えっ、今何て言った? お兄さまの婚約者? それってジークハルト様のお嫁さん!?

「おいフィーナ、まだ婚約はしていないだろう。俺はまだ諦めた訳じゃないんだからな」
「えぇー、お兄さまとお姉さまは相思相愛ですよ。例え王子様でも邪魔はさせませんよ」
 ちょ、ちょっとまって、それって三角関係!? ローズさんて一体何者!?
 ますます分からなくなってきた、ジークハルト様とランスベルト様はローズさんを巡った恋のライバル? 王子様と公子から愛されてるってどれだけ凄いひとなのよ。

「まぁ、この話はここまでだ。続きはこの戦いが終わった後にゆっくりすればいい」
「そうですね、最後はお姉さまに決めて頂ければいいですし」
 お二人の間に飛び散る火花が目に見えそうだ、ジークハルト様VSランスベルト様と言うより、フィーナ様VSランスベルト様と言った方がいいのではないだろうか。

「えっと、私、フィーナ様に聞きたい事があったんですが」
「私にですか? 何でしょうか」
 よし、さり気なく話を反らす事が出来た。
 これ以上お二人の間にいるのは何かと辛い。そもそもこの戦いが終わればローズさんはこの領地に留まってもらうんだから、お二人には渡す気は毛頭ございません。

「フィーナ様がお持ちの聖剣の事なんですが、たしか聖剣アーリアルは今帝国側の手に落ちていると」
「えぇ、それは間違いございません。お兄さまが継承される聖剣は現在レガリアの王都にあると言われています」
「それじゃ今お持ちの聖剣は何なのですか? それにあの威力、とても私の持つ聖戦器ではあんな魔法使う事が出来ません」
 昨日の戦いで見せたあの魔法、お父様はもちろん星槍を得た私にも使う事は出来ないだろう。

「この剣は五つの聖戦器の元となった剣と聞いております」
「聖戦器の元?」
「元々アーリアルは、聖女アリス様が王女ミリアリア様の為に自らの血で清めた剣、その目的は邪霊と呼ばれる存在を滅ぼす為に作られたと言われています。
 そして後に大地を浄化する為に作られたのが五つの聖戦器、つまり聖戦器本来の目的は戦う為に作られたものではないんです」
 聖戦器が戦う為の武器じゃない? そんな事お父様からは教えてもらってない。そもそも武器の形をしているし、その威力は別格と言ってもいいほど強力だ。

「それじゃ五つの聖戦器より、フィーナ様が持つ初代聖剣の方が威力が強いと言う事なんですか?」
「それは違います、五つの聖戦器も初代聖剣と同様、いえ、それ以上の祈りが込められています。ただ目的が違うのです。」
「目的ですか?」
「私のもつ初代聖剣は持ち主を守るよう祈りが込められています。一方五つの聖戦器は国を、領民たちを守る為の祈りが込められているのです。つまりミレーナ様がこの国の為、そして多くの民を思う心が強さに反映されるんです」
 まるでおとぎ話を聞いているようだが、もしこの話が本当なら私はまだ星槍に認められていない事になる。

「もっとも、聖戦器が認めた者でなければ只の丈夫な武器にしかなりませんが、少なくとも星槍自ら現れたのですから、ミレーナ様には十分主人としての力量をお持ちなのですよ」
「ありがとうございます。」
 スターゲイザーが私を認めてくれたのか、ローズさん……お姉さまが私に力を貸してくれたのかは分からないが、今はただ自分の信じる道を進むだけ。
 そしていずれ星槍が真の主人と認めた方に大いなる力を貸してくれるだろう、願わくば私ではなくローズさんに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界メイドに就職しました!!

ウツ。
ファンタジー
本日、九ノ葉楓(ここのはかえで)は就職試験に臨んでいた。 普通に仕事をして、普通に生きていく。 そう決めた彼女を突如眩暈が襲う。 意識を失い、次に目を覚ますと、楓はスピカというメイドになっていた。 王国?!魔法?! 「ここって異世界…?!」 見たことのない世界に驚きながらも、彼女はメイドとして働き始める。 なぜ彼女は異世界へ召喚されたのか。 彼女に与えられた使命とは。 バトルあり、恋愛ありの異世界ファンタジー。 漫画版も連載中です。そちらもよろしくお願いします。

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました

よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。 どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。 この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。 元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。 だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。 なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。 国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。 カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。 カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。 だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。 私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。 ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!

九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。 しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。 アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。 これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。 ツイッターで先行して呟いています。

処理中です...