アイスクリームが溶けるまで。

地下鉄

下手くそな題名をつけるなら、楽しかった数時間よさよなら。だろうか、
斜めにできた長方形で筒状の空間に敷き詰めれたエスカレーターが奏でる100dB位の機械音がこだまする空間の、個人の少し寂しい気持ちはすぐ隣の自分より目線が下の女の子からも肌で感じて取れた。繋いだ手は少し汗ばんでいて、お互いスマホを手に取る時に必ず起こりうる手を離す時に感じるくっついていた皮膚の離れる感覚は、いくら歳をとってもどれだけ経験したとしても、少し肌寒く感じる。普段言わないようなくさい愛の言葉は喉の奥に閉まっておいて、今は後数分しかないこの2人きりの空間を楽しむべきだと脳は言う。強く突風が吹いたと思えば2人背中を合わせ別の電車に乗る。少し濁ったような特有の臭いする車内はホームとは一転し静かな空間が広がっていた。扉が閉じてしまえば寂しい気持ちと感じた生々しい肌の温度は駅のホームに置き去りになる。
あんなに2人はお互いの瞳に夢中だったのに、いざ帰路につけばお互いサイズの違う手のひらの上にあるスマホに夢中になる。あぁ今日も言えなかったなと思う濃く苦い嫌な質問や、甘いひと時の愛の一言は、手のひらの上にある画面にしか書かれていない小さな文字でしか2度目のチャンスが無いのは皮肉にも見て見ぬふりをされる。車内で縦や横に揺れる現代社会の屍たちは吊革に捕まり、まるで首を吊ったかのように皆下を向いてた。男女2人で並んでいるカップルに自分の青春時代を重ねて今の自分を否定し自尊心や気持ちを肯定する二十歳を超えた大人という名前の着いた子供の、まだまだ未熟なスーツ姿は見るに耐えず、その「大人」の両親は自分の子の成長を革靴で少しだけ背伸びした身長から取って感じるのかと思えばそれでもいいからとふと地元を懐かしく感じる自分がいる。屍を尻目に自分はこうはならないでいようと思う日が今日も通り過ぎる。