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一人で街へ
一人だと思ったら・・・
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車から降りたあずみはとボトボトと坂を登った。
登っていく途中、あの男にまんまと引っかかってしまった自分が悔しくて、腹立たしくて、初めてのキスを奪われた事が悲しくて、涙が溢れて止まらなかった。
坂を登りながら如月に電話をかけたが出なかった。
出ないと余計に悲しくて心細くて、また涙が出た。
こんなに寂しいなら緑山たちと一緒にいたらよかった・・・けれど、一人ぼっちだった。
「ムカつく・・・」
あずみは走って家に帰り、一番お気に入りのワンピースを着て綺麗に化粧をし、ストッキングを履いてハイヒールで屋敷をこっそりと抜け出た。
いつも下って行く坂とは反対側の道を下ってタクシーを拾い街へと向かった。
「君、かわいいね。いくつ?」
「十六。」
「え?ダメだよ。こんなお店に来たら。」
「そうですか。食事をしに来ただけなのですが。」
「それでも、よくないよ。ここどんなお店か知っているの?」
「知りません。紹介していただきました。
むしゃくしゃした時に行くならこのお店がいいって。」
「えー誰に教えてもらったの?いけない人だな。」
あずみに声をかけてきたのは、如月と同じくらいの年齢の男だった。
品よくスーツを着こなした白髪交じりの髪。まだ少し時間も早いのに、ウイスキーのグラスを手にしていた。
「お腹すいているなら、違うお店に行かないかい。美味しいお寿司でも食べに行こうか、」
「お寿司か・・・でも、このパスタもなかなかいけますよ。」
その男はあずみの口の周りにべったりとついたミートソースを自分のハンカチで拭いて
「それ食べたらお腹いっぱいでお寿司が食べられなくなっちゃうよ。」
「そうでもないですけど・・・おごってくれるならいってもいいですよ。」
「じゃあ、行こうよ。」
「でも、その前に、そのお寿司は握りたてを目の前に置いて頂ける方のお寿司ですか?」
「そうだよ。君面白いね。」
「そうでしょうか・・・」
その男は、あずみの握っていたフォークを取り上げて、腰に手をまわしその店から連れ出した。
あずみはなんの疑いも無く、ただお寿司をおごってもらえるものと思ってついて行った。
その男に腰を抱かれてすこし歩き出したところで、聞き覚えのある声があずみを呼び止めた
「あずみ君。」
「あ、雅さん。お久しぶりです。」
「お久しぶりじゃないよ。こんなところで・・・何やっているの。」
「ちょっとむしゃくしゃした事があったのでお出かけしてみました。」
「ちょっとむしゃくしゃって…誰?この人。」
「今からお寿司をご馳走になります。」
「ちょっと・・・あずみ君。わかっているの、その意味。」
雅はあずみの両腕を掴み、その男から一度は引き離したが、あずみは掴まれた腕を振り払って男と腕を組んだ。雅より、今は寿司だった。
「意味って・・・お寿司をご馳走になるのです。
それが何か・・・」
「何かって、お寿司をご馳走になるって言う事はそのあとホテルに行くって事だよ。
わかってる?」
「どうしてそうなるのですか?僕はお寿司を・・・」
「いいよ。今日はお寿司だけにしよう。
こんなところでもめてたら恥ずかしいよ。
さあ、君も一緒に来るかい。」
「ええ、行きます。」
あずみの事が心配で、雅も一緒にその男について行った。
登っていく途中、あの男にまんまと引っかかってしまった自分が悔しくて、腹立たしくて、初めてのキスを奪われた事が悲しくて、涙が溢れて止まらなかった。
坂を登りながら如月に電話をかけたが出なかった。
出ないと余計に悲しくて心細くて、また涙が出た。
こんなに寂しいなら緑山たちと一緒にいたらよかった・・・けれど、一人ぼっちだった。
「ムカつく・・・」
あずみは走って家に帰り、一番お気に入りのワンピースを着て綺麗に化粧をし、ストッキングを履いてハイヒールで屋敷をこっそりと抜け出た。
いつも下って行く坂とは反対側の道を下ってタクシーを拾い街へと向かった。
「君、かわいいね。いくつ?」
「十六。」
「え?ダメだよ。こんなお店に来たら。」
「そうですか。食事をしに来ただけなのですが。」
「それでも、よくないよ。ここどんなお店か知っているの?」
「知りません。紹介していただきました。
むしゃくしゃした時に行くならこのお店がいいって。」
「えー誰に教えてもらったの?いけない人だな。」
あずみに声をかけてきたのは、如月と同じくらいの年齢の男だった。
品よくスーツを着こなした白髪交じりの髪。まだ少し時間も早いのに、ウイスキーのグラスを手にしていた。
「お腹すいているなら、違うお店に行かないかい。美味しいお寿司でも食べに行こうか、」
「お寿司か・・・でも、このパスタもなかなかいけますよ。」
その男はあずみの口の周りにべったりとついたミートソースを自分のハンカチで拭いて
「それ食べたらお腹いっぱいでお寿司が食べられなくなっちゃうよ。」
「そうでもないですけど・・・おごってくれるならいってもいいですよ。」
「じゃあ、行こうよ。」
「でも、その前に、そのお寿司は握りたてを目の前に置いて頂ける方のお寿司ですか?」
「そうだよ。君面白いね。」
「そうでしょうか・・・」
その男は、あずみの握っていたフォークを取り上げて、腰に手をまわしその店から連れ出した。
あずみはなんの疑いも無く、ただお寿司をおごってもらえるものと思ってついて行った。
その男に腰を抱かれてすこし歩き出したところで、聞き覚えのある声があずみを呼び止めた
「あずみ君。」
「あ、雅さん。お久しぶりです。」
「お久しぶりじゃないよ。こんなところで・・・何やっているの。」
「ちょっとむしゃくしゃした事があったのでお出かけしてみました。」
「ちょっとむしゃくしゃって…誰?この人。」
「今からお寿司をご馳走になります。」
「ちょっと・・・あずみ君。わかっているの、その意味。」
雅はあずみの両腕を掴み、その男から一度は引き離したが、あずみは掴まれた腕を振り払って男と腕を組んだ。雅より、今は寿司だった。
「意味って・・・お寿司をご馳走になるのです。
それが何か・・・」
「何かって、お寿司をご馳走になるって言う事はそのあとホテルに行くって事だよ。
わかってる?」
「どうしてそうなるのですか?僕はお寿司を・・・」
「いいよ。今日はお寿司だけにしよう。
こんなところでもめてたら恥ずかしいよ。
さあ、君も一緒に来るかい。」
「ええ、行きます。」
あずみの事が心配で、雅も一緒にその男について行った。
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