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第三の選択肢
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雫さんが遠くに行くのを見送ってほっと息を吐く。
雫さんには悪い事をしたが、さっきの弟のことを考えるとどうも……。
「つっめた……っ!」
「頬が腫れてるよ。静紀」
「え……? あ、ああ」
先程、弟に叩かれた所だ。そっと久遠が冷たい手ぬぐいをそこに当てるので苦笑する。
「大丈夫。すぐ治るから」
「治るから手当しなくてもいいことにはならないよ。それに、静紀の頬が腫れてるのになんであいつ何も言わなかったの?」
その言葉に驚いて久遠を見る。いつから見ていたのだろうかという疑問と、先程の雫さんを思い出す。
「雫さんは、俺が直ぐに治るの知ってるからあえて言わなかったんだよ」
「そう? 僕には、怪我してる静紀を怖がらせてるようにしか見えなかったけど?」
「そんな事ないよ。俺が、ちょっと雫さんの登場に驚いただけ」
「ふーん?」
俺がそう言うが、久遠は不満げで納得していないようだった。この状況をどうにかするためにも話題を変えようと努めて明るい声を出す。
「ところで、久遠は俺になにか用があって声をかけたんじゃないの?」
「ん? 別に無いけど静紀がいたから声かけようと思って、困ってそうだからああ言った」
「あ、ありがとう……」
久遠の気遣いに感謝の言葉を口にする。それから刀を背負い直した。
「じゃあこれで」
先ほどの妖魔について気になるので少し外に出て様子を見るために久遠と別れる。
「え!? ま、まって!」
「?」
用事がないと聞いたのだが、久遠が焦って俺の腕を掴む。やっぱり何か用事があったのだろうかと思って彼の方を向き直る。
「どうしたの? やっぱり何か、用事でも……」
「いや、静紀はこれから何をするつもりなの?」
「外に行って、妖魔を減らそうと思ってたけど……」
俺がそう言うと、久遠はぽかんとした表情をした。それからじっと俺を見つめる。
「ど、どうして僕を誘わないの……?」
久遠を、妖魔退治に誘う……?それはつまり都の外に連れ出すということである。
「久遠は帝様だからあんまり外には……」
「そんな決まりは誰が決めたの! 大体、小さい頃は都の外で過ごしてたし!」
「でも、万が一があったら……」
「そんなの! 静紀も一緒じゃん!?」
「そうだけど、久遠と俺だと命の価値が違うじゃない?」
「何、言ってるの?」
「え? 俺変なこと言った?」
久遠と俺を比べて明らかに久遠の方が命の価値がある。帝だし、久遠が死んだら都がどうなるか分からない。結界が壊れたらたとえ一瞬でもここにいる人たちは簡単に命を落とすだろう。
対して、俺は今回七宝でもないしたとえ死んでも、影響がない。
こんなこと、誰でも簡単に分かる。
「……静紀は、僕のこと好きなんだよね?」
「うん。大好きだよ、久遠」
「じゃあ、なんでそんなこと言うの?」
「好きだけど、それとこれとは話が違うでしょ?」
「僕にとっては同じだよ」
「同じにしちゃだめ。君は帝なんだから、俺か都か選ぶ時が来たら都を選ばないと」
「絶対いや」
「久遠」
まさか、十年経ってもそんな子供じみた事を言うとは思わずに少し強めに言ってしまう。そんな俺に久遠はぷいっとそっぽを向く。
「知―らない。でも仮に、そんな状況になって静紀が助けるなって言うなら僕は先に死んで静紀を待ってる」
「は、はあ?」
「都も静紀も選ばない。これが僕のじょーほ」
「いや……」
「でも今回は譲らない。僕も一緒に行く」
「あっ!」
久遠がそのまま走って門のところに向かうので彼を追いかける。法術を使っているのか、普段であれば負けるはずがないのに追いつけない。そのまま門を出てしまうので「久遠!」と彼の名前を呼ぶと漸く彼が振り返った。
「静紀早く。じゃないと帝が護衛なしで都の外に行くことになるよ!」
「じゃあ中に……」
「静紀が外に出ないなら」
「……」
こうなったらもう俺が折れるしかないようだ。あまり奥に行かないでいつでも戻れるように門の近くで妖魔を倒すことにしよう。
俺は、計画を変更して次は久遠に見つからないように外に出ようと誓う。
そして、彼の言葉を冗談だと思って本気にしなかった。
雫さんには悪い事をしたが、さっきの弟のことを考えるとどうも……。
「つっめた……っ!」
「頬が腫れてるよ。静紀」
「え……? あ、ああ」
先程、弟に叩かれた所だ。そっと久遠が冷たい手ぬぐいをそこに当てるので苦笑する。
「大丈夫。すぐ治るから」
「治るから手当しなくてもいいことにはならないよ。それに、静紀の頬が腫れてるのになんであいつ何も言わなかったの?」
その言葉に驚いて久遠を見る。いつから見ていたのだろうかという疑問と、先程の雫さんを思い出す。
「雫さんは、俺が直ぐに治るの知ってるからあえて言わなかったんだよ」
「そう? 僕には、怪我してる静紀を怖がらせてるようにしか見えなかったけど?」
「そんな事ないよ。俺が、ちょっと雫さんの登場に驚いただけ」
「ふーん?」
俺がそう言うが、久遠は不満げで納得していないようだった。この状況をどうにかするためにも話題を変えようと努めて明るい声を出す。
「ところで、久遠は俺になにか用があって声をかけたんじゃないの?」
「ん? 別に無いけど静紀がいたから声かけようと思って、困ってそうだからああ言った」
「あ、ありがとう……」
久遠の気遣いに感謝の言葉を口にする。それから刀を背負い直した。
「じゃあこれで」
先ほどの妖魔について気になるので少し外に出て様子を見るために久遠と別れる。
「え!? ま、まって!」
「?」
用事がないと聞いたのだが、久遠が焦って俺の腕を掴む。やっぱり何か用事があったのだろうかと思って彼の方を向き直る。
「どうしたの? やっぱり何か、用事でも……」
「いや、静紀はこれから何をするつもりなの?」
「外に行って、妖魔を減らそうと思ってたけど……」
俺がそう言うと、久遠はぽかんとした表情をした。それからじっと俺を見つめる。
「ど、どうして僕を誘わないの……?」
久遠を、妖魔退治に誘う……?それはつまり都の外に連れ出すということである。
「久遠は帝様だからあんまり外には……」
「そんな決まりは誰が決めたの! 大体、小さい頃は都の外で過ごしてたし!」
「でも、万が一があったら……」
「そんなの! 静紀も一緒じゃん!?」
「そうだけど、久遠と俺だと命の価値が違うじゃない?」
「何、言ってるの?」
「え? 俺変なこと言った?」
久遠と俺を比べて明らかに久遠の方が命の価値がある。帝だし、久遠が死んだら都がどうなるか分からない。結界が壊れたらたとえ一瞬でもここにいる人たちは簡単に命を落とすだろう。
対して、俺は今回七宝でもないしたとえ死んでも、影響がない。
こんなこと、誰でも簡単に分かる。
「……静紀は、僕のこと好きなんだよね?」
「うん。大好きだよ、久遠」
「じゃあ、なんでそんなこと言うの?」
「好きだけど、それとこれとは話が違うでしょ?」
「僕にとっては同じだよ」
「同じにしちゃだめ。君は帝なんだから、俺か都か選ぶ時が来たら都を選ばないと」
「絶対いや」
「久遠」
まさか、十年経ってもそんな子供じみた事を言うとは思わずに少し強めに言ってしまう。そんな俺に久遠はぷいっとそっぽを向く。
「知―らない。でも仮に、そんな状況になって静紀が助けるなって言うなら僕は先に死んで静紀を待ってる」
「は、はあ?」
「都も静紀も選ばない。これが僕のじょーほ」
「いや……」
「でも今回は譲らない。僕も一緒に行く」
「あっ!」
久遠がそのまま走って門のところに向かうので彼を追いかける。法術を使っているのか、普段であれば負けるはずがないのに追いつけない。そのまま門を出てしまうので「久遠!」と彼の名前を呼ぶと漸く彼が振り返った。
「静紀早く。じゃないと帝が護衛なしで都の外に行くことになるよ!」
「じゃあ中に……」
「静紀が外に出ないなら」
「……」
こうなったらもう俺が折れるしかないようだ。あまり奥に行かないでいつでも戻れるように門の近くで妖魔を倒すことにしよう。
俺は、計画を変更して次は久遠に見つからないように外に出ようと誓う。
そして、彼の言葉を冗談だと思って本気にしなかった。
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