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他の子には会ったのかと梓さんに聞かれてまだだと答えた。昨日帰ってきてそのまま皇宮にいたので誰とも話していないのだ。俺がそう言うと、七宝として選ばれている者は今招集がかかっているから難しいという。だったら仕方ないと話は終わるかと思いきや、駆君がこう提案してきた。
「じゃあ他の人に会おうよ!」
「え……?」
ということで、駆君に引っ張られて俺は今叢雲さんの屋敷にお邪魔している。
「しーちゃんお帰り」
「た、只今帰りました、紫さん」
紫さんに出迎えられて久しぶりの彼らの家にお邪魔する。俺の本当の実家ではないのに帰ってきたと思うのは恐らくそれ位この家に思い入れがあるからだ。それもそうだろう。俺を保護してくれた優しい二人の家なのだから。
「大きくなったね。昨日帰ってきた兄さんから聞いてたけど想像以上だよ」
「はい。少しは伸びました」
とはいえ、ここにいる人たちより一番小さいのだが。やはりやり直し前と同じように俺の身長は思ったより伸びなかった。一番小さかったのは黒天の子だったけど……。
彼のことを思い出して首を振る。黒天の当主家族はまだ行方不明扱いらしいが、恐らく死んでいるだろう。俺を刺したのは彼らに復讐する力が欲しかったからだろうから。
「しーちゃん!! お帰りなさい~!」
「あ、ただ、いま……?」
てっきりこれからみんなが来るのかと思いきや、すでに彼らがそこにいた。彼らが揃って出迎えてくれて思わず驚いていると紫さんがこっそり今朝から俺のことを待つために来ていたと教えてくれる。
そこにいるのは、拓海君、月彦君、柊君、小夜ちゃんの四人だ。彼らも昨日の儀式に出席していたので顔だけ見ていた。彼らも大きくなって、やはり男性の中では俺が一番小さい。
……もう少し、背が欲しかった、かも。
「帰還祝いに軽い宴会を開こうと思ってさ! お互いの家に行くと色々問題になりそうだから」
「柊先輩の言うとおり、ちょうど良い場所がここだったから準備してたんだ」
「はい。私も輝夜お兄ちゃんに教えて貰って色々作ってきました!」
「本当は、内緒にして連れて行きたかったけど、変な噂を聞いたから予定変更でとりあえずしーちゃんと会おうってなった訳」
柊君、月彦君、小夜ちゃん、最後に拓海君がおのおの説明をしてくれる。俺のために準備をしてくれたと思うと胸が温かくなる。こんなことして貰うなんて思わなかったからとても嬉しい。
「ありがとう、みんな」
「いいえ! 俺たち全員しーちゃんがいないと繋がりがあまりなかった関係だからね~。しーちゃんのお陰で俺たちここにいるから」
「え? そ、そんなことはないと思うけど……」
また俺のお陰でなんて言葉を聞いた。戸惑ってそう答えると四人は顔を見合わせてそれから笑い合う。
「いやいや、まず俺と兄さんの関係が悪化したままだと思うからここに俺はいないでしょ?」
「と、なると、尊と俺と月彦がどうなるかだけど、俺の家が本家様にこび売ってるからな~。婚約者候補にしようと躍起になるだろうから二人と疎遠になるだろうね」
「そうだな、そうなると俺もお二人と会うことはなく成長すると思うからこんなことはしないな」
「そもそも私は、しーちゃんと仲が良い宗太君と接点を持たない限りここにはいないです……」
そんな四人の続々と出てくる言葉にぱちくりと目を瞬かせる。そこまで考えられるのかという気持ちと、やり直し前ではそうなったから彼らと接点がないのかもしれないと考えられた。
そんな彼らの考えに、俺は緩く首を振る。
「そ、それは、俺のせいで……」
「いや、しーちゃんのお陰でしょ?」
「!」
不意に後ろから声がしたと思えばそこには叢雲さんがいた。それからビシッと腕を垂直に上げる。
「ちなみに! 俺はしーちゃんのお陰であのとき死ななかったのではないかと思っております!!」
「俺はしーちゃんのお陰でそのときに兄さんが死ななかったので、どうにかこうにか生きてまーす」
彼の後ろにいた紫さんも小さく手を上げて主張した。そんなはずはないだろう。叢雲さんの実力を持ってすれば妖魔がたくさんいたとしても生き残りそうだ。守る対象がいなければ。
でも、そうか。叢雲さんのような実力者をやり直し前で見たことがない。死んだという可能性はあるかもしれないが、それは俺のお陰で生き延びられたという事ではないだろう。たまたま運が良かったのか、俺が変えてしまった事によって出来事が変化したのかもしれないし。
「だから、何を気にしてるのか分からないけど「しーちゃんのせい」じゃなくて「しーちゃんのお陰」だって事はちゃあんと分かってね?」
叢雲さんがそう言って軽く俺の頭を撫でる。俺はそれを受け入れながらも彼らの顔を見た。
誰も、自分たちの言葉に疑いを持たず俺のお陰でここにいると思っているようだった。
「じゃあ、みんな仲良くなれて良かったの……?」
彼らがやり直し前でどんな関係を持っていたのかなんて知らない。俺は、彼らをあまり見たことがないから。
だから少し不安になってそう言ってしまうと彼らは深く頷いた。
「勿論。仲の良い友人と頼れる仲間がいるなんてとても恵まれていると思うよ」
拓海君がそう言った。そんな優しい言葉をかけてくれるなんて流石だ。
そして、俺も彼らの仲間で友人だと思えるくらいの関係であることにとても嬉しくなった。
「じゃあ他の人に会おうよ!」
「え……?」
ということで、駆君に引っ張られて俺は今叢雲さんの屋敷にお邪魔している。
「しーちゃんお帰り」
「た、只今帰りました、紫さん」
紫さんに出迎えられて久しぶりの彼らの家にお邪魔する。俺の本当の実家ではないのに帰ってきたと思うのは恐らくそれ位この家に思い入れがあるからだ。それもそうだろう。俺を保護してくれた優しい二人の家なのだから。
「大きくなったね。昨日帰ってきた兄さんから聞いてたけど想像以上だよ」
「はい。少しは伸びました」
とはいえ、ここにいる人たちより一番小さいのだが。やはりやり直し前と同じように俺の身長は思ったより伸びなかった。一番小さかったのは黒天の子だったけど……。
彼のことを思い出して首を振る。黒天の当主家族はまだ行方不明扱いらしいが、恐らく死んでいるだろう。俺を刺したのは彼らに復讐する力が欲しかったからだろうから。
「しーちゃん!! お帰りなさい~!」
「あ、ただ、いま……?」
てっきりこれからみんなが来るのかと思いきや、すでに彼らがそこにいた。彼らが揃って出迎えてくれて思わず驚いていると紫さんがこっそり今朝から俺のことを待つために来ていたと教えてくれる。
そこにいるのは、拓海君、月彦君、柊君、小夜ちゃんの四人だ。彼らも昨日の儀式に出席していたので顔だけ見ていた。彼らも大きくなって、やはり男性の中では俺が一番小さい。
……もう少し、背が欲しかった、かも。
「帰還祝いに軽い宴会を開こうと思ってさ! お互いの家に行くと色々問題になりそうだから」
「柊先輩の言うとおり、ちょうど良い場所がここだったから準備してたんだ」
「はい。私も輝夜お兄ちゃんに教えて貰って色々作ってきました!」
「本当は、内緒にして連れて行きたかったけど、変な噂を聞いたから予定変更でとりあえずしーちゃんと会おうってなった訳」
柊君、月彦君、小夜ちゃん、最後に拓海君がおのおの説明をしてくれる。俺のために準備をしてくれたと思うと胸が温かくなる。こんなことして貰うなんて思わなかったからとても嬉しい。
「ありがとう、みんな」
「いいえ! 俺たち全員しーちゃんがいないと繋がりがあまりなかった関係だからね~。しーちゃんのお陰で俺たちここにいるから」
「え? そ、そんなことはないと思うけど……」
また俺のお陰でなんて言葉を聞いた。戸惑ってそう答えると四人は顔を見合わせてそれから笑い合う。
「いやいや、まず俺と兄さんの関係が悪化したままだと思うからここに俺はいないでしょ?」
「と、なると、尊と俺と月彦がどうなるかだけど、俺の家が本家様にこび売ってるからな~。婚約者候補にしようと躍起になるだろうから二人と疎遠になるだろうね」
「そうだな、そうなると俺もお二人と会うことはなく成長すると思うからこんなことはしないな」
「そもそも私は、しーちゃんと仲が良い宗太君と接点を持たない限りここにはいないです……」
そんな四人の続々と出てくる言葉にぱちくりと目を瞬かせる。そこまで考えられるのかという気持ちと、やり直し前ではそうなったから彼らと接点がないのかもしれないと考えられた。
そんな彼らの考えに、俺は緩く首を振る。
「そ、それは、俺のせいで……」
「いや、しーちゃんのお陰でしょ?」
「!」
不意に後ろから声がしたと思えばそこには叢雲さんがいた。それからビシッと腕を垂直に上げる。
「ちなみに! 俺はしーちゃんのお陰であのとき死ななかったのではないかと思っております!!」
「俺はしーちゃんのお陰でそのときに兄さんが死ななかったので、どうにかこうにか生きてまーす」
彼の後ろにいた紫さんも小さく手を上げて主張した。そんなはずはないだろう。叢雲さんの実力を持ってすれば妖魔がたくさんいたとしても生き残りそうだ。守る対象がいなければ。
でも、そうか。叢雲さんのような実力者をやり直し前で見たことがない。死んだという可能性はあるかもしれないが、それは俺のお陰で生き延びられたという事ではないだろう。たまたま運が良かったのか、俺が変えてしまった事によって出来事が変化したのかもしれないし。
「だから、何を気にしてるのか分からないけど「しーちゃんのせい」じゃなくて「しーちゃんのお陰」だって事はちゃあんと分かってね?」
叢雲さんがそう言って軽く俺の頭を撫でる。俺はそれを受け入れながらも彼らの顔を見た。
誰も、自分たちの言葉に疑いを持たず俺のお陰でここにいると思っているようだった。
「じゃあ、みんな仲良くなれて良かったの……?」
彼らがやり直し前でどんな関係を持っていたのかなんて知らない。俺は、彼らをあまり見たことがないから。
だから少し不安になってそう言ってしまうと彼らは深く頷いた。
「勿論。仲の良い友人と頼れる仲間がいるなんてとても恵まれていると思うよ」
拓海君がそう言った。そんな優しい言葉をかけてくれるなんて流石だ。
そして、俺も彼らの仲間で友人だと思えるくらいの関係であることにとても嬉しくなった。
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