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はっと俺は目が覚めた。
また知らない記憶である。知らない記憶のはずなのに既視感を覚えるそれに軽く頭痛がして頭を押さえた。
それから体を起こす。
「あれ、傷が……」
自分は紫乃君に不意を突かれて心臓近くを刺されたはずだ。死んだと思っていたのにどうして布団の上にいるのだろうと思って慌ててそこから飛び出そうとして「しーちゃん」と呼ばれた。
「お、わっ!」
「ふふ、おはようございます」
「お、おはようございます……」
俺の傍らにいたのは雫さんだ。蛇の姿ではなく、人の、式神の形をとっている。挨拶をされて思わずそう返して我に返った。
「久遠はっ!?」
「平気ですよ。都の結界も張られて復興作業に入っております」
「そ、そうですか……」
「それから、貴方を襲った者は死にました」
「そう、ですよね」
久遠が無事でよかったと思うと同時に燕さんのことを思い出して胸が痛い。でも、殺されそうになって同情まではしない。彼は、恐らく俺が知っている以上に人を殺しているだろうからその覚悟があったはずだ。
罪には罰を。そうでないと浮かばれない命があるだろう。
「傷は大丈夫ですか?」
「あっ! また怪我を治していただいてありがとうございました!!」
雫さんにそう言われて顔を上げる。そして顔を上げたら微笑んでいる雫さんがいた。
気にするなと言うことかもしれないし、俺に負担をかけないように黙っていてくれているのかもしれない。だからそれ以上感謝の言葉を口にすることはしないで彼の優しさに甘えることにした。
それに、彼には聞きたいことがあった。
「あの、燕さんが神様のお願いごととか言っていたんですが、雫さんは知っていますか……?」
「……それに関しては、先に謝罪を。申し訳ありませんしーちゃん。私は、貴方に無断その争いに巻き込みました」
雫さんがそう言って頭を下げるので慌てて俺が首を振って事情を聞く。
雫さんが言うには、七柱の神様がこの土地を巡って争いをしているようだ。神様自身がこの土地に降りて争いを始めると土地が荒れるのでその土地に住む人間を自身の分身代理人として立て、領地の争奪戦を行っているという。彼らにしては単なる遊戯感覚で、雫さんもかつては代理人に近い位置にいたが今は運によってその神様と同等の存在になっているそうだ。
だから、俺がお願いをしていなくても俺をやり直しさせてしまったという出来事が、「お願い」に換算されてしまい勝手に雫さんの代理人となっていたようだった。
それは雫さんのせいではないし、再び生を受けることができたのには深い感謝をしているので謝るのはもう良いと言った。
すると、雫さんは続けてこう話す。
「本来であれば、その都の帝になっておりますが、今は私ともう一柱だけでして……その神は毘沙門天といいます」
「毘沙門天……?」
「はい。七宝の名はその遊戯を行っている神様の名前からとったものでして、恐らく彼が残っているのも貴方が毘沙門の一族になったのも何かの縁だと思います」
そこで言葉を切り、雫さんは俺の手を取る。
そして真剣なまなざしで懇願した。
「しーちゃん。私は傲慢な神にこの土地を渡したくありません。こんなことをするような者にこの地に住む人々を大事にできるはずがない。私は、勝たなければいけないんです。それには貴方の協力が必要です。ですのでーーーっ!!」
「分かりました、雫さん。いくらでも協力します」
「え……」
雫さんの言葉に俺は穏やかにそう答えた。
彼の誠実な態度も何度も助けてくれた事実も記憶している。それに、燕さんに人殺しをさせるようなその毘沙門天様は信用できない。
俺は久遠がただ笑って過ごせれば良い。
そのための障害は何であれ、壊す。
「そ、そんな簡単に……。命の危険があるんですよ!?」
「そんなもの、生まれてからずっとですから変わりません」
「しーちゃん……」
「貴方に協力します。俺は貴方がこの土地の神様になって欲しい」
これは俺の本心だ。
この土地の神様になるならば絶対に雫さんが良い。
「ありがとう、しーちゃん」
「……いいえ。雫さんのためにも頑張ります!」
「私も、負けないように頑張ります」
雫さんは、そう言ってふわりと笑みを浮かべた。一瞬、ぞわりと悪寒が走るが気のせいだろうと俺も同じように笑みを浮かべて返事をする。
また知らない記憶である。知らない記憶のはずなのに既視感を覚えるそれに軽く頭痛がして頭を押さえた。
それから体を起こす。
「あれ、傷が……」
自分は紫乃君に不意を突かれて心臓近くを刺されたはずだ。死んだと思っていたのにどうして布団の上にいるのだろうと思って慌ててそこから飛び出そうとして「しーちゃん」と呼ばれた。
「お、わっ!」
「ふふ、おはようございます」
「お、おはようございます……」
俺の傍らにいたのは雫さんだ。蛇の姿ではなく、人の、式神の形をとっている。挨拶をされて思わずそう返して我に返った。
「久遠はっ!?」
「平気ですよ。都の結界も張られて復興作業に入っております」
「そ、そうですか……」
「それから、貴方を襲った者は死にました」
「そう、ですよね」
久遠が無事でよかったと思うと同時に燕さんのことを思い出して胸が痛い。でも、殺されそうになって同情まではしない。彼は、恐らく俺が知っている以上に人を殺しているだろうからその覚悟があったはずだ。
罪には罰を。そうでないと浮かばれない命があるだろう。
「傷は大丈夫ですか?」
「あっ! また怪我を治していただいてありがとうございました!!」
雫さんにそう言われて顔を上げる。そして顔を上げたら微笑んでいる雫さんがいた。
気にするなと言うことかもしれないし、俺に負担をかけないように黙っていてくれているのかもしれない。だからそれ以上感謝の言葉を口にすることはしないで彼の優しさに甘えることにした。
それに、彼には聞きたいことがあった。
「あの、燕さんが神様のお願いごととか言っていたんですが、雫さんは知っていますか……?」
「……それに関しては、先に謝罪を。申し訳ありませんしーちゃん。私は、貴方に無断その争いに巻き込みました」
雫さんがそう言って頭を下げるので慌てて俺が首を振って事情を聞く。
雫さんが言うには、七柱の神様がこの土地を巡って争いをしているようだ。神様自身がこの土地に降りて争いを始めると土地が荒れるのでその土地に住む人間を自身の分身代理人として立て、領地の争奪戦を行っているという。彼らにしては単なる遊戯感覚で、雫さんもかつては代理人に近い位置にいたが今は運によってその神様と同等の存在になっているそうだ。
だから、俺がお願いをしていなくても俺をやり直しさせてしまったという出来事が、「お願い」に換算されてしまい勝手に雫さんの代理人となっていたようだった。
それは雫さんのせいではないし、再び生を受けることができたのには深い感謝をしているので謝るのはもう良いと言った。
すると、雫さんは続けてこう話す。
「本来であれば、その都の帝になっておりますが、今は私ともう一柱だけでして……その神は毘沙門天といいます」
「毘沙門天……?」
「はい。七宝の名はその遊戯を行っている神様の名前からとったものでして、恐らく彼が残っているのも貴方が毘沙門の一族になったのも何かの縁だと思います」
そこで言葉を切り、雫さんは俺の手を取る。
そして真剣なまなざしで懇願した。
「しーちゃん。私は傲慢な神にこの土地を渡したくありません。こんなことをするような者にこの地に住む人々を大事にできるはずがない。私は、勝たなければいけないんです。それには貴方の協力が必要です。ですのでーーーっ!!」
「分かりました、雫さん。いくらでも協力します」
「え……」
雫さんの言葉に俺は穏やかにそう答えた。
彼の誠実な態度も何度も助けてくれた事実も記憶している。それに、燕さんに人殺しをさせるようなその毘沙門天様は信用できない。
俺は久遠がただ笑って過ごせれば良い。
そのための障害は何であれ、壊す。
「そ、そんな簡単に……。命の危険があるんですよ!?」
「そんなもの、生まれてからずっとですから変わりません」
「しーちゃん……」
「貴方に協力します。俺は貴方がこの土地の神様になって欲しい」
これは俺の本心だ。
この土地の神様になるならば絶対に雫さんが良い。
「ありがとう、しーちゃん」
「……いいえ。雫さんのためにも頑張ります!」
「私も、負けないように頑張ります」
雫さんは、そう言ってふわりと笑みを浮かべた。一瞬、ぞわりと悪寒が走るが気のせいだろうと俺も同じように笑みを浮かべて返事をする。
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