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紫乃君の保護について、黒狗の中でも議題に上がったが俺になついていること、紫さん達が大丈夫と言うことでそのまま預かることになった。
詳しい身辺調査の報告はまだ上がっていない。しかし、それも時間の問題だろう。
ひとまず、他の子達に紫乃君の紹介をする。ほとんど毎日来ているそーちゃん、小夜ちゃん、鶫ちゃんが今日もやってきて、紫乃君を紹介した。そーちゃんだけがじっと紫乃君を見つめていたようだが、なにも言わずに遊んでいた。そのあと、尊君、拓海君、月彦君がやってきた。一緒に晴臣さんも来てくれておやつも持ってきてくれた。
そうして、俺のほとんどの知り合いと仲良しになった紫乃君を彼らに任せて俺は晴臣さんに話しかける。
「あの、晴臣さん」
「どうしたんですか、しーちゃん」
「その、最近九郎はどうしてますか……?」
あの日以来会えていない九郎の事を聞くと晴臣さんがああ、と少しばかりに苦笑いを浮かべる。聞いてはいけない事だろうか。俺はその表情を見て慌てて大丈夫ですと首を振ってそういうと、晴臣さんが隣に座ってと床を叩いた。
俺は恐る恐る隣に座って晴臣さんを伺う。
「九郎は今少し立て込んでいるんです。暫く会えないと思いますが、しーちゃんを避けている訳じゃありませんよ」
「そうなんですかね……?」
「ええ。今は九郎を待っていてください」
「……分かりました」
晴臣さんがそう言うのであればと、俺はそれ以上彼のことを聞くのはやめた。もそもそと貰ったお菓子を食べながら蹴鞠りをしている彼らを見る。紫乃君がふとこちらを見ると次には気まずそうに視線をそらした。それからそーちゃんに呼ばれて慌てて顔を背けて遊びだした。
俺はそれに首を傾げると、とんっと膝の上に何かが乗る。
「話し終わった?」
「あ、くーちゃんごめんね。終わったよ」
「ん!」
晴臣さんと話がしたいと言ったら久遠が離れてくれて先ほどまで彼らと遊んでいた。終わったのを見て近寄ってきたみたいだ。ありがとうという意味も込めて彼の頭を撫でるとにこっと笑顔を見せてくれる。
「相変わらず、しーちゃんにべったりですね若君」
「うん。ずっとしーちゃんと一緒」
ぎゅーっと体を起こして久遠が抱きつくので、俺も抱きしめ返す。すると晴臣さんが微笑ましいと言うような表情を浮かべて俺と久遠の頭を撫でた。それを俺と久遠は素直に受け入れる。
それからおやつの時間になって晴臣さんが買ってきたお菓子を食べた。
「そういえば、兄さんはまだしーちゃんにお菓子あげてるの?」
「え? ああそうだね。おはよう、あげるって感じかな」
「もー! 私も言ってるんだけどね。全然聞かなくて……。要らなかったら要らないっていって良いから!」
「うん、ちゃんと口にするよ」
鶫ちゃんにそう言われながらお茶をすする。
燕さんの場合、断ってもむりやり入れられるのだがそれは黙っておくことにした。
「しーちゃん、あーん」
「あー……」
隣に座っている久遠が自分のお菓子を二つに割って片方を俺の口元に持ってきた。ここで拒否をしても意味が無いことを俺が知っているのでそのまま口を開けて口に含む。もぐもぐと咀嚼するとあんこの甘さが広がって美味しい。俺も自分の分を半分に割って同じように久遠に食べさせた。
にこっと久遠が満足げに笑顔を見せるので俺もつられて頬を緩める。それから久遠の頬についた食べかすを拭いながら、自分の分も食べてゆっくりお茶を飲む。その間にも紫乃君はわいわいと他の人とお話をしている。
紫乃君が他の子と馴染めているようでよかったとその様子を見ながら隣で「しーちゃん、あーん」と二個目のお菓子を俺にあげようとする久遠に再び口を開けた。
詳しい身辺調査の報告はまだ上がっていない。しかし、それも時間の問題だろう。
ひとまず、他の子達に紫乃君の紹介をする。ほとんど毎日来ているそーちゃん、小夜ちゃん、鶫ちゃんが今日もやってきて、紫乃君を紹介した。そーちゃんだけがじっと紫乃君を見つめていたようだが、なにも言わずに遊んでいた。そのあと、尊君、拓海君、月彦君がやってきた。一緒に晴臣さんも来てくれておやつも持ってきてくれた。
そうして、俺のほとんどの知り合いと仲良しになった紫乃君を彼らに任せて俺は晴臣さんに話しかける。
「あの、晴臣さん」
「どうしたんですか、しーちゃん」
「その、最近九郎はどうしてますか……?」
あの日以来会えていない九郎の事を聞くと晴臣さんがああ、と少しばかりに苦笑いを浮かべる。聞いてはいけない事だろうか。俺はその表情を見て慌てて大丈夫ですと首を振ってそういうと、晴臣さんが隣に座ってと床を叩いた。
俺は恐る恐る隣に座って晴臣さんを伺う。
「九郎は今少し立て込んでいるんです。暫く会えないと思いますが、しーちゃんを避けている訳じゃありませんよ」
「そうなんですかね……?」
「ええ。今は九郎を待っていてください」
「……分かりました」
晴臣さんがそう言うのであればと、俺はそれ以上彼のことを聞くのはやめた。もそもそと貰ったお菓子を食べながら蹴鞠りをしている彼らを見る。紫乃君がふとこちらを見ると次には気まずそうに視線をそらした。それからそーちゃんに呼ばれて慌てて顔を背けて遊びだした。
俺はそれに首を傾げると、とんっと膝の上に何かが乗る。
「話し終わった?」
「あ、くーちゃんごめんね。終わったよ」
「ん!」
晴臣さんと話がしたいと言ったら久遠が離れてくれて先ほどまで彼らと遊んでいた。終わったのを見て近寄ってきたみたいだ。ありがとうという意味も込めて彼の頭を撫でるとにこっと笑顔を見せてくれる。
「相変わらず、しーちゃんにべったりですね若君」
「うん。ずっとしーちゃんと一緒」
ぎゅーっと体を起こして久遠が抱きつくので、俺も抱きしめ返す。すると晴臣さんが微笑ましいと言うような表情を浮かべて俺と久遠の頭を撫でた。それを俺と久遠は素直に受け入れる。
それからおやつの時間になって晴臣さんが買ってきたお菓子を食べた。
「そういえば、兄さんはまだしーちゃんにお菓子あげてるの?」
「え? ああそうだね。おはよう、あげるって感じかな」
「もー! 私も言ってるんだけどね。全然聞かなくて……。要らなかったら要らないっていって良いから!」
「うん、ちゃんと口にするよ」
鶫ちゃんにそう言われながらお茶をすする。
燕さんの場合、断ってもむりやり入れられるのだがそれは黙っておくことにした。
「しーちゃん、あーん」
「あー……」
隣に座っている久遠が自分のお菓子を二つに割って片方を俺の口元に持ってきた。ここで拒否をしても意味が無いことを俺が知っているのでそのまま口を開けて口に含む。もぐもぐと咀嚼するとあんこの甘さが広がって美味しい。俺も自分の分を半分に割って同じように久遠に食べさせた。
にこっと久遠が満足げに笑顔を見せるので俺もつられて頬を緩める。それから久遠の頬についた食べかすを拭いながら、自分の分も食べてゆっくりお茶を飲む。その間にも紫乃君はわいわいと他の人とお話をしている。
紫乃君が他の子と馴染めているようでよかったとその様子を見ながら隣で「しーちゃん、あーん」と二個目のお菓子を俺にあげようとする久遠に再び口を開けた。
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