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保護

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さて、その子供をとりあえず保護という名目で皇宮に連れてきた。隊長である鉄二さんがいないので判断に困るが、帰りたくないならうちの屋敷に来る?と叢雲さんがそう提案してくれた。



「え、いや、紫さんも困るんじゃない?」

「ん? 大丈夫だよ。ひとりも二人も変わらないし。ひとまず鉄二さんの身辺が落ち着いたらまた話し合うって事で良いと思う。だから今日は俺んちで預かるしかないと思うよ」



それに異を唱えたのは久遠であったが、それを彼がバッサリとそう切り捨てる。妥当であるが、そこまで迷惑をかけて良いのだろうかと少し不安になって彼を見ると大丈夫だというように頭を撫でてくれた。



「……待って、今からはるちゃんに連絡する」

「いやいや、若様。気持ちは分かりますけど本人見て」

「……」



久遠が代打案を出してくれたが、俺にしがみついている男の子が知らない人の名前を聞いた瞬間いやいやと首を振って強く俺に抱きついてきた。

久遠は恨めしげに男の子を見る。

心配とは違う視線に俺が首を傾げると、「ああ」と叢雲さんが提案した。



「そんなに心配ならくーちゃんも泊まりに来る?」

「行きます」



久遠は喰い気味に了承する。そしてにこっと笑顔を向ける。



「だからいつまでもしがみつくのはやめて自分の足で歩いたらどうなの? 人の家に保護されるんだから抱っこのままで訪れて良いと思ってる?」



何だろう。節々に棘があるような……?

いや、恐らくそういう教育を受けてきたからだろう。彼の言うとおり、ずっと抱っこのままは格好がつかないのも確かだ。



「俺が抱っこしようか?」



叢雲さんが手を広げるがじっと男の子がそちらを見て首を振った。それからおずおずと俺の腕から降りる仕草をするので地面に下ろした。



「ごめん、なさい、重かった、ですよね……?」

「いえ、とっても軽かったから大丈夫ですよ」



彼の言葉にそう返すと、彼は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。本当に重くなかったのに。気にすることはないと言うのも彼を追い詰めそうでひとまずそれ以上は言わないことにした。



「じゃあ僕が手を繋いで歩こうね」

「……」

「さっきの見たと思うけど、刀を扱う者に対して片手を拘束するのは良くないよ。分かるよね?」



いや、そんなことを気にしないで大丈夫なのだが久遠は男の子の手を繋いで俺から離すように間に入る。左から俺、久遠、男の子だ。

そんな俺たちを見て、叢雲さんと燕さんが顔を見合わせて肩をすくめる。



「ひとまず、名前聞いて良い? 俺は燕」

「紫乃……」



俺のように名前をいえないのではないかと思って聞かなかったのだが、彼はあっさりとそういった。

予想通り、彼は黒天律ではないことが分かったが双子という認識で良いのだろうか。やり直し前でも余り関わったことがないし、その時点まで生きていたかどうかも怪しい。だが、ここまで顔が一緒なのだから疑う余地はない、か……?



「俺は叢雲。こっちはしーちゃんで、そっちはくーちゃん」

「あ、よろしくお願いします」

「よろしくね」



少し考え事をしていたら叢雲さんが代わりに紹介してくれた。久遠と一緒に頭を下げると紫乃君もよろしくお願いしますと少し遠慮気味にそう言っていた。

紹介も終わったところで紫乃君を連れて帰ることに。報告書などは燕さんが書いてくれるそうだ。大丈夫だろうかと少し不安になるが、今は彼の言葉に甘えることにして帰路につく。

家に帰ると紫さんが出迎えてくれた。事情を話すと部屋を用意してくれて、彼はすんなりとそれを受け入れた。屋敷の中だから安心しているのだろうか。ならば良かった。



「僕は、しーちゃんの部屋で寝る!」

「いいよ」

「じゃあ布団くっつけるから……」

「一枚で大丈夫! ねー? しーちゃん!」

「そうだね。くーちゃんは小さいから大丈夫です。ありがとうございます、紫さん」

「あ、うん。二人が良いなら構わないよ」



ぎゅっと久遠がくっついてきていつものように頭を撫でる。紫さんは少しあっけにとられたような表情をしていたが、ぽんぽんっと叢雲さんに肩を叩かれていた。

そのあとは、紫乃君のお腹が鳴ったのでご飯を食べさせて(気持ちの良い食べっぷりだった。恐らく普段からご飯を食べさせて貰えていないのだろう)風呂に入り、就寝。

隣にいる久遠がふふふっと嬉しそうに笑いながらぴたりと足をくっつけてきた。すると久遠が驚きの表情を見せた。



「しーちゃん、足冷たい!」

「うん、ちょっとね」



最近になって手足が冷えてきたのだ。健康体であるのがある意味取り柄でもあったのに……。やはり運動量が足りないのだろうか?少し稽古を増やすか?そんなことを考えながら久遠を冷やさないように足を遠ざけるとそれを追うように久遠がぎゅっとしがみついた。



「くーちゃんがあっためてあげる! ぎゅー!」

「いや、冷えちゃうから……」

「大丈夫!」



そう言って久遠が言うことを聞かずに抱きしめてくる。はじめは抵抗していたが、だんだんと久遠の温かい体温を感じて眠気が襲ってきた。

そして俺はいつの間にか眠りについていた。



***



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