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「あれ? 鉄二さん、今日もお休みですか?」
「そーみたい」
霞さんとお話をして一週間ほど。その次の日から鉄二さんもお休みでもしかしたらじっくり話でもしているのかなと思ったが流石に日数が立ちすぎているような気がする。
もしや、俺の予想が外れて鉄二さんが凄いクズ野郎だったと言う可能性がちらほらと出てきた。
それで霞さんが傷ついて、体裁や何やらで監禁されているとか……。
「あれでしょ? この前の手ぬぐいの人と進展があったんでしょ!」
「あ、ああ、成程。そうですね」
今日も燕さんからいただいたお菓子をつまみながら始業前に少し話をする。最近は、輝夜先生も来たり、九郎が来なかったりといろいろ顔ぶれが変わっていたりしたが、今日は二人きりのようだ。
あーっと延々とお菓子を口元に持って行かれてそろそろやめて欲しいと言おうと思っているとすっと襖に人影が映った。
鉄二さんだろうか?
一瞬そう思ったが影が女性のように見える。俺の視線に気づいた燕さんがん?と振り返ると「ああ!」と声を上げた。
「入ってきて良いですよ! まだ始まってないし!」
「そう? じゃあ遠慮なく入ろうかしら」
予想通り女性の声だった。
そして襖を引いて入ってきた女性は肩に鳥を乗せていた。普通の鳥じゃない。式神だ。
初対面の方に挨拶をしようと腰を上げて頭を下げようとしたが、燕さんがそれを止める。
「ああ、いいよいいよ。俺の知り合いだから!」
「え、でも……」
「貴方も気にしないでしょ?」
「ええ、大丈夫よ。楽にして」
そう言って彼女はふわりと笑みを浮かべた。
その表情に見覚えがある。
「……似てる」
「え?」
「あ、いえ! 知り合いに少し似てた気がしただけです!すみません!!」
一瞬笑った顔が九郎に似ていた気がして思わず呟いてしまったが、失礼だった。
慌てて俺がそう言うと彼女はおかしそうに笑顔を見せる。
「気にしないで。ところで、私も座って良いかしら?」
「どうぞどうぞ! お好きなところに座ってください!」
「ありがとう」
燕さんとは気安い仲のようだ。俺は少し彼女が歩く様子を見て違和感に気づき、さっと彼女の進行方向にある障害物をどかした。
すると彼女がピタリと動きを止める。
「……あら。そんなことしなくても見えるから大丈夫よ」
「え?」
俺は思わず彼女をもう一度見た。ばっちりと目が合っている。しまった。勘違いだったようだ。
「す、すみません!」
「いいえ。貴方の優しさは伝わったわ。ありがとう」
「はい……」
恥ずかしくなって小さくなると、燕さんが笑ってこっちこっちと先ほどまで座っていた場所に俺を誘導する。
「ねー? しーちゃんはいろいろ気づくんだよねー?」
「いえ、その、勘違いでした……」
「あらあら、大丈夫よ。貴方が優しい子だということは分かったのだから」
燕さんと女性が笑い合うのでいたたまれない。俺も曖昧に笑っておいた。
「ところで、どんな用事なんですか?」
「ああ、大したことはないのよ。お菓子をあげようと思ってきただけ」
「本当ですか? しーちゃん、よかったね! この人のくれるお菓子は美味しいから!」
「え?」
燕さんがそう言うと、彼女からお菓子の入ったつつみを貰いそのまま俺に渡す。いや、これは燕さんに持ってきた物ではないだろうか?そう思って彼女を見ると彼女はやはり微笑んでいてこういった。
「良いのよ。今日初めて会った記念にあげるわ」
「い、いえ、そんな……」
「遠慮しないで。燕にもほらあげるから」
「わーい! ありがとうございます! つぐちゃんにあげよー!!」
そう言ってもう一つ袂から包みを出した。それを受け取った燕さんが喜ぶので俺だけ返すわけにもいかず、頭を下げる。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言って彼女は腰を上げるので見送りをしようと俺も同じように立ち上がる。
「そーみたい」
霞さんとお話をして一週間ほど。その次の日から鉄二さんもお休みでもしかしたらじっくり話でもしているのかなと思ったが流石に日数が立ちすぎているような気がする。
もしや、俺の予想が外れて鉄二さんが凄いクズ野郎だったと言う可能性がちらほらと出てきた。
それで霞さんが傷ついて、体裁や何やらで監禁されているとか……。
「あれでしょ? この前の手ぬぐいの人と進展があったんでしょ!」
「あ、ああ、成程。そうですね」
今日も燕さんからいただいたお菓子をつまみながら始業前に少し話をする。最近は、輝夜先生も来たり、九郎が来なかったりといろいろ顔ぶれが変わっていたりしたが、今日は二人きりのようだ。
あーっと延々とお菓子を口元に持って行かれてそろそろやめて欲しいと言おうと思っているとすっと襖に人影が映った。
鉄二さんだろうか?
一瞬そう思ったが影が女性のように見える。俺の視線に気づいた燕さんがん?と振り返ると「ああ!」と声を上げた。
「入ってきて良いですよ! まだ始まってないし!」
「そう? じゃあ遠慮なく入ろうかしら」
予想通り女性の声だった。
そして襖を引いて入ってきた女性は肩に鳥を乗せていた。普通の鳥じゃない。式神だ。
初対面の方に挨拶をしようと腰を上げて頭を下げようとしたが、燕さんがそれを止める。
「ああ、いいよいいよ。俺の知り合いだから!」
「え、でも……」
「貴方も気にしないでしょ?」
「ええ、大丈夫よ。楽にして」
そう言って彼女はふわりと笑みを浮かべた。
その表情に見覚えがある。
「……似てる」
「え?」
「あ、いえ! 知り合いに少し似てた気がしただけです!すみません!!」
一瞬笑った顔が九郎に似ていた気がして思わず呟いてしまったが、失礼だった。
慌てて俺がそう言うと彼女はおかしそうに笑顔を見せる。
「気にしないで。ところで、私も座って良いかしら?」
「どうぞどうぞ! お好きなところに座ってください!」
「ありがとう」
燕さんとは気安い仲のようだ。俺は少し彼女が歩く様子を見て違和感に気づき、さっと彼女の進行方向にある障害物をどかした。
すると彼女がピタリと動きを止める。
「……あら。そんなことしなくても見えるから大丈夫よ」
「え?」
俺は思わず彼女をもう一度見た。ばっちりと目が合っている。しまった。勘違いだったようだ。
「す、すみません!」
「いいえ。貴方の優しさは伝わったわ。ありがとう」
「はい……」
恥ずかしくなって小さくなると、燕さんが笑ってこっちこっちと先ほどまで座っていた場所に俺を誘導する。
「ねー? しーちゃんはいろいろ気づくんだよねー?」
「いえ、その、勘違いでした……」
「あらあら、大丈夫よ。貴方が優しい子だということは分かったのだから」
燕さんと女性が笑い合うのでいたたまれない。俺も曖昧に笑っておいた。
「ところで、どんな用事なんですか?」
「ああ、大したことはないのよ。お菓子をあげようと思ってきただけ」
「本当ですか? しーちゃん、よかったね! この人のくれるお菓子は美味しいから!」
「え?」
燕さんがそう言うと、彼女からお菓子の入ったつつみを貰いそのまま俺に渡す。いや、これは燕さんに持ってきた物ではないだろうか?そう思って彼女を見ると彼女はやはり微笑んでいてこういった。
「良いのよ。今日初めて会った記念にあげるわ」
「い、いえ、そんな……」
「遠慮しないで。燕にもほらあげるから」
「わーい! ありがとうございます! つぐちゃんにあげよー!!」
そう言ってもう一つ袂から包みを出した。それを受け取った燕さんが喜ぶので俺だけ返すわけにもいかず、頭を下げる。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言って彼女は腰を上げるので見送りをしようと俺も同じように立ち上がる。
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