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恋心の消化
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「ちょっと、そこの貴方達」
「……」
「……」
都は確かに広くはないが、こんなすぐに出会うなんてあり得るだろうか。
今日はお休みの日として、久遠を間に挟んで九郎と一緒に市場に行こうと歩いていた。
紫さん達から貰った仮面をつけていると顔が変化するらしく、仮面で目立つことはない。だから前よりは積極的に屋敷から出ているため、遭遇率はそれなりに高いとは思う。しかし、警戒するに越したことはないだろうと九郎と話し合い、彼女の屋敷圏内から遠い場所を選んでいた。
俺達は呼び止められてお互い顔を見合わせる。何が何だか分からない真ん中にいる久遠は首を傾げていた。俺達も知らん振りして通り過ぎたい。
「無視する気?お前たちよ、そこの子供と赤い髪の男。分かったならこっち向きなさい」
「……なにあの女」
「えっ」
ふと、久遠がそんな言葉を発した。
あの女……女……?
久遠からそんな言葉聞こえたの今。え……?
いやいや、そんな馬鹿な。この良い子の久遠が……?
「お姉さん、な?」
「うん、おねぇちゃん!」
「あ、そ、そうだよね。ごめんね、聞き間違いしたみたい」
数秒固まってしまったが、やっぱり聞き間違いだったようだ。にこっと久遠が笑顔を見せて俺にぎゅっと抱きついてくる。
うん、久遠がそんな言葉を言うはずないな。
頭を撫でるともっとっと頭を寄せてくるので可愛いなっと思いながらもっと撫でてあげると「無視するんじゃないわよ!!」と声が響いた。
そちらを見ると若干泣きそうな顔でぐっと唇をかんでいるあの女の人がいる。無視したわけではないが、どう反応しようか困っていただけだ。とはいえ、相手にそうとれるような態度をとった自覚はある。
「申し訳……」
「お前がそういう態度で人を呼ぶからだろ。不愉快だ」
「な……っ!」
謝ろうとした俺に被せるように九郎がそう言った。その言葉に女の人は絶句してぷるぷると顔を真っ赤にして震え出す。九郎の言葉は確かに一理あるがああいう人はあまり相手にしない方が良い。こっちが折れればそれ以上の被害はないだろうし、謝った方が良いに決まっている。
だから俺は九郎を制して謝罪の言葉を告げようとするがすっと唇に指が置かれた。久遠の指だ。ちらっと彼に視線を向けるとにこっと笑顔を見せて首を振った。
「任せよ?」
「……」
久遠がそういう。俺はうろうろと視線を彷徨わせながら不安げに九郎の方を見る。久遠は、九郎を信頼しているようだが俺はこういうときの九郎は喧嘩を売っているのではないかと思ってハラハラする。
余計な衝突は避けた方が良いし、頭を下げて謝るだけで事態が収束するのであればそれが一番だと思う。
その方法が、一番傷つかなかったから。
相手の女性は自尊心が高そうだし、きっと自分の間違いを認める事はないだろう。きっと、もっとひどい言葉を九郎にかけるかもしれない。そうなって傷つくのは彼だ。
「……」
「……」
都は確かに広くはないが、こんなすぐに出会うなんてあり得るだろうか。
今日はお休みの日として、久遠を間に挟んで九郎と一緒に市場に行こうと歩いていた。
紫さん達から貰った仮面をつけていると顔が変化するらしく、仮面で目立つことはない。だから前よりは積極的に屋敷から出ているため、遭遇率はそれなりに高いとは思う。しかし、警戒するに越したことはないだろうと九郎と話し合い、彼女の屋敷圏内から遠い場所を選んでいた。
俺達は呼び止められてお互い顔を見合わせる。何が何だか分からない真ん中にいる久遠は首を傾げていた。俺達も知らん振りして通り過ぎたい。
「無視する気?お前たちよ、そこの子供と赤い髪の男。分かったならこっち向きなさい」
「……なにあの女」
「えっ」
ふと、久遠がそんな言葉を発した。
あの女……女……?
久遠からそんな言葉聞こえたの今。え……?
いやいや、そんな馬鹿な。この良い子の久遠が……?
「お姉さん、な?」
「うん、おねぇちゃん!」
「あ、そ、そうだよね。ごめんね、聞き間違いしたみたい」
数秒固まってしまったが、やっぱり聞き間違いだったようだ。にこっと久遠が笑顔を見せて俺にぎゅっと抱きついてくる。
うん、久遠がそんな言葉を言うはずないな。
頭を撫でるともっとっと頭を寄せてくるので可愛いなっと思いながらもっと撫でてあげると「無視するんじゃないわよ!!」と声が響いた。
そちらを見ると若干泣きそうな顔でぐっと唇をかんでいるあの女の人がいる。無視したわけではないが、どう反応しようか困っていただけだ。とはいえ、相手にそうとれるような態度をとった自覚はある。
「申し訳……」
「お前がそういう態度で人を呼ぶからだろ。不愉快だ」
「な……っ!」
謝ろうとした俺に被せるように九郎がそう言った。その言葉に女の人は絶句してぷるぷると顔を真っ赤にして震え出す。九郎の言葉は確かに一理あるがああいう人はあまり相手にしない方が良い。こっちが折れればそれ以上の被害はないだろうし、謝った方が良いに決まっている。
だから俺は九郎を制して謝罪の言葉を告げようとするがすっと唇に指が置かれた。久遠の指だ。ちらっと彼に視線を向けるとにこっと笑顔を見せて首を振った。
「任せよ?」
「……」
久遠がそういう。俺はうろうろと視線を彷徨わせながら不安げに九郎の方を見る。久遠は、九郎を信頼しているようだが俺はこういうときの九郎は喧嘩を売っているのではないかと思ってハラハラする。
余計な衝突は避けた方が良いし、頭を下げて謝るだけで事態が収束するのであればそれが一番だと思う。
その方法が、一番傷つかなかったから。
相手の女性は自尊心が高そうだし、きっと自分の間違いを認める事はないだろう。きっと、もっとひどい言葉を九郎にかけるかもしれない。そうなって傷つくのは彼だ。
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