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犬猿の仲
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俺が黒狗に入って4年の月日がたった。俺は十歳になった。その間に黒狗としての業務を行っていた。子供とはいえ末席にいる立場なので夜回り、都の外で妖魔掃討などに積極的に参加した。
どういうわけか、俺のことが大人に見えているようで敬語で話しかけてくる大人が多い。弟や当主様にばれたと思っていたので彼らの攻撃にどう対処するか悩んでいたのでとても助かった。それに、珍しいことに彼らは弟に対して好印象を抱かなかったようだった。少しほっとしてしまった。
さて、そんな黒狗は俺を含めて全部で七人。
瑠奈お姉ちゃん、瑠衣お兄ちゃん、輝夜先生、燕さん、九郎、鉄二さんである。てっきり久臣さんや晴臣さんも入っていると思ったが違ったらしい。その中でも鉄二さんは隊長と言われており俺の上司だ。
就任の次の日に鉄二さんはやって来て、黒狗の拠点である場所を教えてもらった。とはいえ、俺はまだ子供なので好きなように出入りして良いと言う。でも業務を行えば賃金が発生すると聞いた。
今後のためにもお金は欲しい。叢雲さんたちから雇われている身ではあるがいつ一人で生きていくか分からないのでたくさんあって困ることはないだろう。
そういうこともあり、積極的に黒狗として参加していると自然に減るのは友人との遊び時間である。いやー!くちゃもいくー!!とびたーんと床に伏しながら俺の足をつかんでいやいや暴れる久遠に、今日も、遊べないの……?と言う悲しそうな表情を浮かべるそーちゃん。意思が揺らぎ、ならば睡眠時間を減らせば良いのでは?とはじめの頃はこっそり夜に妖魔退治を行っていたが、叢雲さんにばれて帝に直談判しに行くと言い出し始めたので全力で止めた。俺の意思でやっていることだとどうにか説き伏せて、俺が焦ってお金を貯めていることもつい言ってしまったら、じゃあ、休みの日は二倍出すと言い出した。丁寧にお断りして、少しずつお金を貯めることにした。
そうそう、この四年で友達に女の子二人が増えた。例のそーちゃんが好きな巻物の読者たちだ。
名前は小夜ちゃんと、鶫ちゃんである。しかも彼女たちは俺の知り合いの妹さんだ。
小夜ちゃんは輝夜先生の鶫ちゃんは燕さんの。時折彼らの話をするが、二人して兄扱いは雑である。鶫ちゃんは鬱陶しい、小夜ちゃんは小言がうるさいと言う。どちらも二人を心配して言っていることは分かるので苦笑しつつ彼女の話に耳を傾ける。
そんな彼女たちが一番盛り上がる話は勿論絵巻物のこと。俺のことを楓様だー!と喜んでそーちゃんを囲んでおしゃべりをしているみたい。楓というのは例の主人公の好敵手のような相手だ。
彼女たちの熱量が凄くて、この部分で楓様が着ていた服を、しーちゃんが着てくれたらうれしいなぁとか、楓様がしていた髪型にしたいんだけどいい?とかいろいろ着せ替え人形になっている。
「しーちゃん、今日は朝何食べた?」
「今日は、鯖の塩焼きに味噌汁とご飯を食べたよ」
「おいしかったー?」
「うん」
「そっかぁ!」
今日も朝から久遠がやってきた。四年前よりも大きくなって重くなった。言葉も流暢に話せるので今では誰でも久遠の言葉がわかる。
これが成長かと思いつつ、いつものように朝ご飯について聞かれてそう答えた。ぎゅっと抱きしめられるので俺も同じように抱きしめ返す。まだ俺の腕の中にすっぽり入る彼が下から俺を見上げた。
「今日もお仕事……?」
「うん、明日は休みだから」
「むう、大きくなったらくーちゃんがしーちゃんをやしなってあげる!」
「養うだなんて難しい言葉よく知ってるね。ありがとう、期待して待ってるね」
「うん!」
最近では、未来の約束に対しても前より余裕を持って了承できるようになってきた。やはり、黒狗になって少しばかりの自信がついたからだろうか。久遠を悲しませることがないようにうまく立ち回れていると思う。
久遠に言ったとおり、そろそろ準備をして皇宮に行かなければ。大太刀に加えて最近は弓矢と矢筒と弓も練習のために持って行く。手の保護のために手袋もして仮面を被った。
「じゃあ、行ってくるねくーちゃん」
「行ってらっしゃい! しーちゃん!」
ちゅっと久遠が俺のほおに唇を落とす。初めてやられたときは固まって、混乱していたら父さんと母さんがやってたからと言われた。だめだった?と泣きそうな顔でそう言われたらそんなことない、驚いただけと言ってそれから毎日こうだ。
毎日されても慣れなくて、恥ずかしくて顔が赤くなるのは許して欲しい。俺は久遠にご機嫌で手を振られそれを振り返しながら皇宮に向かったのだった。
***
どういうわけか、俺のことが大人に見えているようで敬語で話しかけてくる大人が多い。弟や当主様にばれたと思っていたので彼らの攻撃にどう対処するか悩んでいたのでとても助かった。それに、珍しいことに彼らは弟に対して好印象を抱かなかったようだった。少しほっとしてしまった。
さて、そんな黒狗は俺を含めて全部で七人。
瑠奈お姉ちゃん、瑠衣お兄ちゃん、輝夜先生、燕さん、九郎、鉄二さんである。てっきり久臣さんや晴臣さんも入っていると思ったが違ったらしい。その中でも鉄二さんは隊長と言われており俺の上司だ。
就任の次の日に鉄二さんはやって来て、黒狗の拠点である場所を教えてもらった。とはいえ、俺はまだ子供なので好きなように出入りして良いと言う。でも業務を行えば賃金が発生すると聞いた。
今後のためにもお金は欲しい。叢雲さんたちから雇われている身ではあるがいつ一人で生きていくか分からないのでたくさんあって困ることはないだろう。
そういうこともあり、積極的に黒狗として参加していると自然に減るのは友人との遊び時間である。いやー!くちゃもいくー!!とびたーんと床に伏しながら俺の足をつかんでいやいや暴れる久遠に、今日も、遊べないの……?と言う悲しそうな表情を浮かべるそーちゃん。意思が揺らぎ、ならば睡眠時間を減らせば良いのでは?とはじめの頃はこっそり夜に妖魔退治を行っていたが、叢雲さんにばれて帝に直談判しに行くと言い出し始めたので全力で止めた。俺の意思でやっていることだとどうにか説き伏せて、俺が焦ってお金を貯めていることもつい言ってしまったら、じゃあ、休みの日は二倍出すと言い出した。丁寧にお断りして、少しずつお金を貯めることにした。
そうそう、この四年で友達に女の子二人が増えた。例のそーちゃんが好きな巻物の読者たちだ。
名前は小夜ちゃんと、鶫ちゃんである。しかも彼女たちは俺の知り合いの妹さんだ。
小夜ちゃんは輝夜先生の鶫ちゃんは燕さんの。時折彼らの話をするが、二人して兄扱いは雑である。鶫ちゃんは鬱陶しい、小夜ちゃんは小言がうるさいと言う。どちらも二人を心配して言っていることは分かるので苦笑しつつ彼女の話に耳を傾ける。
そんな彼女たちが一番盛り上がる話は勿論絵巻物のこと。俺のことを楓様だー!と喜んでそーちゃんを囲んでおしゃべりをしているみたい。楓というのは例の主人公の好敵手のような相手だ。
彼女たちの熱量が凄くて、この部分で楓様が着ていた服を、しーちゃんが着てくれたらうれしいなぁとか、楓様がしていた髪型にしたいんだけどいい?とかいろいろ着せ替え人形になっている。
「しーちゃん、今日は朝何食べた?」
「今日は、鯖の塩焼きに味噌汁とご飯を食べたよ」
「おいしかったー?」
「うん」
「そっかぁ!」
今日も朝から久遠がやってきた。四年前よりも大きくなって重くなった。言葉も流暢に話せるので今では誰でも久遠の言葉がわかる。
これが成長かと思いつつ、いつものように朝ご飯について聞かれてそう答えた。ぎゅっと抱きしめられるので俺も同じように抱きしめ返す。まだ俺の腕の中にすっぽり入る彼が下から俺を見上げた。
「今日もお仕事……?」
「うん、明日は休みだから」
「むう、大きくなったらくーちゃんがしーちゃんをやしなってあげる!」
「養うだなんて難しい言葉よく知ってるね。ありがとう、期待して待ってるね」
「うん!」
最近では、未来の約束に対しても前より余裕を持って了承できるようになってきた。やはり、黒狗になって少しばかりの自信がついたからだろうか。久遠を悲しませることがないようにうまく立ち回れていると思う。
久遠に言ったとおり、そろそろ準備をして皇宮に行かなければ。大太刀に加えて最近は弓矢と矢筒と弓も練習のために持って行く。手の保護のために手袋もして仮面を被った。
「じゃあ、行ってくるねくーちゃん」
「行ってらっしゃい! しーちゃん!」
ちゅっと久遠が俺のほおに唇を落とす。初めてやられたときは固まって、混乱していたら父さんと母さんがやってたからと言われた。だめだった?と泣きそうな顔でそう言われたらそんなことない、驚いただけと言ってそれから毎日こうだ。
毎日されても慣れなくて、恥ずかしくて顔が赤くなるのは許して欲しい。俺は久遠にご機嫌で手を振られそれを振り返しながら皇宮に向かったのだった。
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