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「あれ? 若君も中に入るんですか?」
「ん!」
「じゃあ、明かりを置きますね」
「う! あーがと!」
「いえいえどういたしまして~。閉めますね~」
燕さん!?
目の前で襖が閉められて、彼の足音が去っていく。一緒に入ってきた久遠が近くにいる。久遠はにこにこでぺたーっと箱にくっついていた。
「しちゃ、あのねー、きのーねー」
「くーちゃん? あの、かくれんぼじゃないの?」
その前に俺の声が聞こえているのだろうか。そう思っていたら、久遠はきょとんと首を傾げる。そして、ぶんと首を縦に振った。
「かくえぼ!」
一先ず声は届いているようだった。それに安心しながら言葉を紡ぐ。
「だよね? あの、ここから動けないから、出してほしい、かな?」
「……」
久遠が黙った。暫く唇を突き出して悩んだ後に、にこっと俺に向かって笑顔を見せる。
「なーで?」
「えーっと……」
「しちゃ、ここ、ずっと、ね?」
「お、おれ、帰らないと……」
「ずと、ここ」
「……」
勝手に俺が出て行ったんだし、これだけで許してくれるのなら俺はここにいよう。そう思って分かったと言おうとして不意に久遠が立ち上がる。それからばっと襖を抑えた。
「くーちゃん! 開けて!!」
久臣さんの声だ。彼の声に反応して、久遠が叫ぶ。
「なーいー!!」
「いるでしょ!? しーちゃん入れたでしょ!?」
「なーい! なー!!」
ばっと襖が外された。ぽてっと勢いで前の方に転がってしまう久遠。その隙に襖を壊した久臣さんが箱に手を伸ばした。
「あーもー、鍵もかけて……」
「なーいー!! にゃあああああああああっ!!!!!」
「はいはい」
久遠が、久臣さんの足をぽかぽかげしげし蹴って叩く。それをものともせずに久臣さんが箱を抱えて、移動させた後に錠を開ける。そして蓋が開かれた。
「しーちゃん大丈夫?」
「は、はい」
そう言った久臣さんは俺を箱から出してくれた。俺がそう答えると、なでなでと頭を撫でてくれる。
「かーしてええええ!! くちゃの! くちゃのおおおおお!!!!」
「久遠」
久臣さんが少し冷たい声を出す。びくっと久遠がその声に体を震わせて、ぐっと唇を噛む。それからすっと久臣さんから離れた。
「良い子だね。この箱は、違うもの入れようか?」
「……しちゃ、ほし」
「しーちゃんは物じゃないからあげられない」
久遠が俺を見上げる。そしてうるうるとお目目を潤ませる。
「……しちゃ、だめ?」
その顔をされると弱い。そもそも俺が悪いんだし。そう思ったらさっと久臣さんが俺の目を手で覆って久遠に見せないように抱えられる。
「だめ。しーちゃんに縋らない」
「……う~~~~~~っ!!!」
久遠が唸った。ちらりと彼を見ると悔しそうな表情で久臣さんを睨んでいる。そんな久遠に久臣さんがにこっと笑顔を見せた。
「その代わり、しーちゃんの家に遊びに行こう!!」
「しちゃち?」
「そう! お菓子持って~、しーちゃんの家でだらだらしよう!」
「……」
しばらく考え込んで、こくんっと久遠は頷いた。彼が、頷いたのを見て久臣さんは俺をおろす。するとすぐにぴたっとくっついて俺に抱きついた久遠は小さな声でこういった。
「いく……」
「じゃあ行こう! お菓子持って行こう!」
「う……」
久臣さんがそう言って外にいる使用人に声をかける。その間ずーっと久遠は俺に抱き着いて離れない。
そして、その日のうちに叢雲さんたちの家にお邪魔して夕飯も一緒に食べた。居候の身でいろいろ巻き込んだというのに、快く受け入れてくれた。
そしてそこから毎日、お菓子を持って久遠がやってくる。そんな久遠に紫さんはかなり好意的で、良く出迎えてくれていた。
「ん!」
「じゃあ、明かりを置きますね」
「う! あーがと!」
「いえいえどういたしまして~。閉めますね~」
燕さん!?
目の前で襖が閉められて、彼の足音が去っていく。一緒に入ってきた久遠が近くにいる。久遠はにこにこでぺたーっと箱にくっついていた。
「しちゃ、あのねー、きのーねー」
「くーちゃん? あの、かくれんぼじゃないの?」
その前に俺の声が聞こえているのだろうか。そう思っていたら、久遠はきょとんと首を傾げる。そして、ぶんと首を縦に振った。
「かくえぼ!」
一先ず声は届いているようだった。それに安心しながら言葉を紡ぐ。
「だよね? あの、ここから動けないから、出してほしい、かな?」
「……」
久遠が黙った。暫く唇を突き出して悩んだ後に、にこっと俺に向かって笑顔を見せる。
「なーで?」
「えーっと……」
「しちゃ、ここ、ずっと、ね?」
「お、おれ、帰らないと……」
「ずと、ここ」
「……」
勝手に俺が出て行ったんだし、これだけで許してくれるのなら俺はここにいよう。そう思って分かったと言おうとして不意に久遠が立ち上がる。それからばっと襖を抑えた。
「くーちゃん! 開けて!!」
久臣さんの声だ。彼の声に反応して、久遠が叫ぶ。
「なーいー!!」
「いるでしょ!? しーちゃん入れたでしょ!?」
「なーい! なー!!」
ばっと襖が外された。ぽてっと勢いで前の方に転がってしまう久遠。その隙に襖を壊した久臣さんが箱に手を伸ばした。
「あーもー、鍵もかけて……」
「なーいー!! にゃあああああああああっ!!!!!」
「はいはい」
久遠が、久臣さんの足をぽかぽかげしげし蹴って叩く。それをものともせずに久臣さんが箱を抱えて、移動させた後に錠を開ける。そして蓋が開かれた。
「しーちゃん大丈夫?」
「は、はい」
そう言った久臣さんは俺を箱から出してくれた。俺がそう答えると、なでなでと頭を撫でてくれる。
「かーしてええええ!! くちゃの! くちゃのおおおおお!!!!」
「久遠」
久臣さんが少し冷たい声を出す。びくっと久遠がその声に体を震わせて、ぐっと唇を噛む。それからすっと久臣さんから離れた。
「良い子だね。この箱は、違うもの入れようか?」
「……しちゃ、ほし」
「しーちゃんは物じゃないからあげられない」
久遠が俺を見上げる。そしてうるうるとお目目を潤ませる。
「……しちゃ、だめ?」
その顔をされると弱い。そもそも俺が悪いんだし。そう思ったらさっと久臣さんが俺の目を手で覆って久遠に見せないように抱えられる。
「だめ。しーちゃんに縋らない」
「……う~~~~~~っ!!!」
久遠が唸った。ちらりと彼を見ると悔しそうな表情で久臣さんを睨んでいる。そんな久遠に久臣さんがにこっと笑顔を見せた。
「その代わり、しーちゃんの家に遊びに行こう!!」
「しちゃち?」
「そう! お菓子持って~、しーちゃんの家でだらだらしよう!」
「……」
しばらく考え込んで、こくんっと久遠は頷いた。彼が、頷いたのを見て久臣さんは俺をおろす。するとすぐにぴたっとくっついて俺に抱きついた久遠は小さな声でこういった。
「いく……」
「じゃあ行こう! お菓子持って行こう!」
「う……」
久臣さんがそう言って外にいる使用人に声をかける。その間ずーっと久遠は俺に抱き着いて離れない。
そして、その日のうちに叢雲さんたちの家にお邪魔して夕飯も一緒に食べた。居候の身でいろいろ巻き込んだというのに、快く受け入れてくれた。
そしてそこから毎日、お菓子を持って久遠がやってくる。そんな久遠に紫さんはかなり好意的で、良く出迎えてくれていた。
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