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「ぅ―――っ!」
「しーちゃん!?」
久臣さんが後ろで俺の名前を呼ぶが、それに答える余裕はなく叢雲さんの刀を力でどうにか押し返す。
子供と大人ではやはり力の差がある。びりびりと腕がしびれてちっと舌打ちをしてしまう。
それから叢雲さんの無事を確認しつつ彼に説明する為話しかける。
「叢雲さん、この人は俺の―――」
「はな、れろ。はなれろ、離れろ―――」
「……? 叢雲さん……?」
はあはあっと呼吸荒く、叢雲さんがゆらりと体を動かす。そしてじろっとこちらを睨みつけた。
「俺の、おれの、おとうとだぞっ! 俺の弟、弟!! お前らに消費されるものじゃない! お前らの玩具じゃない!! 殺してやる! 殺す! 殺す!!!!」
「下がってしーちゃん!!」
「いいえ!!」
刀を返して、峰打ちの状態で叢雲さんの攻撃を受ける。しかし、あまりの力に押し負けると確信したので受け流そうと体勢を変える。刀を滑らせて相手の力を流すとすかさず顎めがけて足を振り上げる。しかし、それは軽々と躱されて叢雲さんから距離を取られた。
「叢雲さん!!」
俺がもう一度彼の名前を叫ぶ。彼はピクリと一瞬だけそれに反応するがぐるんっと目玉を回して一直線に久臣さんに突っ込んでくる。ばっともう一度彼らの間に入ってそれをはじき返そうと刀を振るうとその前にひゅおっと風を切る音が聞こえた。
「しーちゃん!!」
「!」
一瞬反応が遅れて足がもつれるとぐいっとお腹周りに久臣さんの腕が回って後方に下がる。すると俺と叢雲さんの間に複数の矢が降り注いできた。叢雲さんはそれを避けるために同じように下がりつつも、距離を詰めるためにぎらぎらと目を光らせて機会を窺がっている。ちっと舌打ちをした久臣さんが叢雲さんに向かって氷の槍を放った。
悲鳴をあげそうになったが、叢雲さんは持っている刀でそれを斬り捨てて獣のように吠えた。
「あ、ああああ、ああああああああああああああああっ!!!!」
苦しそうに叫んでいる彼に俺はもう一度名前を叫んで近づこうとするとぐっと俺を抱えている久臣さんの腕に力が入る。
「だめだ、しーちゃん!」
「でも……っ!」
もう一度、地を蹴って叢雲さんがとんできた。久臣さんが法術で盾を作ると、空中で叢雲さんの刃とそれが交わる。一度弾いて叢雲さんが地に足を着くがそれは一瞬でまたしても彼は攻撃を仕掛けるために突進をしてきた。
今度は久臣さんが動きを止めるために彼の足元に向かって足場を崩そうと凍らせると、彼らの間にすとんっと音も気配も全くなく一人の男が現れた。それはぐるんっと長い足を回すと叢雲さんは地面に伏していた。
「あ、ぐ……」
「頑丈ですね」
うめき声をあげて立ち上がろうとした叢雲さんだったが、もう一度ぐしゃりと蹴られてしまいぱたりと力なく刀を手放す。それを手早く回収したその男がこちらを見る。
「こんばんは」
「しずく、さん……」
いつものような笑顔で彼は何事も無かったようにそう言った。
「しーちゃん!?」
久臣さんが後ろで俺の名前を呼ぶが、それに答える余裕はなく叢雲さんの刀を力でどうにか押し返す。
子供と大人ではやはり力の差がある。びりびりと腕がしびれてちっと舌打ちをしてしまう。
それから叢雲さんの無事を確認しつつ彼に説明する為話しかける。
「叢雲さん、この人は俺の―――」
「はな、れろ。はなれろ、離れろ―――」
「……? 叢雲さん……?」
はあはあっと呼吸荒く、叢雲さんがゆらりと体を動かす。そしてじろっとこちらを睨みつけた。
「俺の、おれの、おとうとだぞっ! 俺の弟、弟!! お前らに消費されるものじゃない! お前らの玩具じゃない!! 殺してやる! 殺す! 殺す!!!!」
「下がってしーちゃん!!」
「いいえ!!」
刀を返して、峰打ちの状態で叢雲さんの攻撃を受ける。しかし、あまりの力に押し負けると確信したので受け流そうと体勢を変える。刀を滑らせて相手の力を流すとすかさず顎めがけて足を振り上げる。しかし、それは軽々と躱されて叢雲さんから距離を取られた。
「叢雲さん!!」
俺がもう一度彼の名前を叫ぶ。彼はピクリと一瞬だけそれに反応するがぐるんっと目玉を回して一直線に久臣さんに突っ込んでくる。ばっともう一度彼らの間に入ってそれをはじき返そうと刀を振るうとその前にひゅおっと風を切る音が聞こえた。
「しーちゃん!!」
「!」
一瞬反応が遅れて足がもつれるとぐいっとお腹周りに久臣さんの腕が回って後方に下がる。すると俺と叢雲さんの間に複数の矢が降り注いできた。叢雲さんはそれを避けるために同じように下がりつつも、距離を詰めるためにぎらぎらと目を光らせて機会を窺がっている。ちっと舌打ちをした久臣さんが叢雲さんに向かって氷の槍を放った。
悲鳴をあげそうになったが、叢雲さんは持っている刀でそれを斬り捨てて獣のように吠えた。
「あ、ああああ、ああああああああああああああああっ!!!!」
苦しそうに叫んでいる彼に俺はもう一度名前を叫んで近づこうとするとぐっと俺を抱えている久臣さんの腕に力が入る。
「だめだ、しーちゃん!」
「でも……っ!」
もう一度、地を蹴って叢雲さんがとんできた。久臣さんが法術で盾を作ると、空中で叢雲さんの刃とそれが交わる。一度弾いて叢雲さんが地に足を着くがそれは一瞬でまたしても彼は攻撃を仕掛けるために突進をしてきた。
今度は久臣さんが動きを止めるために彼の足元に向かって足場を崩そうと凍らせると、彼らの間にすとんっと音も気配も全くなく一人の男が現れた。それはぐるんっと長い足を回すと叢雲さんは地面に伏していた。
「あ、ぐ……」
「頑丈ですね」
うめき声をあげて立ち上がろうとした叢雲さんだったが、もう一度ぐしゃりと蹴られてしまいぱたりと力なく刀を手放す。それを手早く回収したその男がこちらを見る。
「こんばんは」
「しずく、さん……」
いつものような笑顔で彼は何事も無かったようにそう言った。
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