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それで、済むような話ではなく。
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―――それで、済むような話ではない。
ぱちりと目が覚めた。
久臣は、あまりの夢見の悪さに表情を無くす。
いや、夢ではない。
己の過去の所業。
これはいわば、警告だろう。
同じことをすれば、同じ顛末を辿るという神様からの最大級の嫌がらせ。
そして、同じものを久遠が見た。
確信はないが、初めて静紀と会った時にも自分から遠ざけようとしていた。明確に触るな近づくなと示されていた。
子供の独占欲かな、なんてあまり反応がなかった久遠に親心的に嬉しく思っていたのだが、全く別もの。
「そりゃあ、そうだ」
早く死にたくて、誤った復讐相手を殺そうとした自分を警戒するのは当たり前である。
たぶん自分だったら殺す。
もっと大きくなってから確実に仕留める。
その時は黙って首を差し出そうと、久臣はははっと乾いた笑みをこぼす。
今は起きなかった出来事。
過去で起こった愚かな行為。
この土地で起こった事実。
はあっとため息をつく。
「一軒一軒侵入するか」
もしかしたら、価値に気付いて捕まっている可能性が出てきた。
それと同時にかつて久臣は助けられた恩人をようやく思い出した。
「名前聞いてなかった……。確かここの都にいるとは言ってたけど、それどこらじゃなさ過ぎて……」
―――え?気にしないで。俺も同じ儀式やられてさー。弟斬りそうになったわけ。寸でで弟だって!意識取り戻したけど……ん?ああ、一緒一緒、中からあかなくてさ~。さてどうしようってとりあえずじっと待ってたら相手の方から開けてくれたわけ。んで、代わりになって貰った。
にこにこと笑顔でおしゃべりな男の人だった。
今の久臣が参考にした人物。
底抜けに明るい様に見える、規格外な男だった。
それもそのはず、彼は他の都の毘沙門の一人で次期当主で、件の生物兵器であったから。
―――用心棒やってるから、都の外に出たくなったらいつでも声かけてね☆
なんて最後まで上機嫌に去っていった。
だが、久臣は知っている。
様子を見に来たであろう女が、久臣の母親が殺されて投げ捨てられたことも、彼女に一緒についてきていたすべての人間が森に捨てられていたことも。
数年前に、何処かの都の一族どころかすべての関係者が惨殺されてその一族を知る全てのものが死に絶えたという話も知っている。
その中には勿論、帝も入っていた。
一時期、あの都は終わりだなんていううわさも流れたが、新たな統治者が出てどうにか保っているらしい。
―――と、そんな話はどうでもいい。
「なんでもっと早く思い出さなかった俺!!」
こんな情報があったら即座に保護していた!
忘れていた、というより久臣自身が思い出したくなかったのが一番大きい。付属で嫌な思い出もついてくるから。
いやそれにしても何やってるんだいい年した大人が!と久臣は自分を叱咤する。
命の恩人どころか、人としての尊厳を保ったまま生きられているのは彼らのお陰なのに自分は報いることができないまま死ぬところだった。
よしッと丁度夜更けなのでどっかの七宝の家に侵入しようと布団から出て気が付いた。
あれ、隣で寝ているはずの我が子がいないぞ?と。
ぱちりと目が覚めた。
久臣は、あまりの夢見の悪さに表情を無くす。
いや、夢ではない。
己の過去の所業。
これはいわば、警告だろう。
同じことをすれば、同じ顛末を辿るという神様からの最大級の嫌がらせ。
そして、同じものを久遠が見た。
確信はないが、初めて静紀と会った時にも自分から遠ざけようとしていた。明確に触るな近づくなと示されていた。
子供の独占欲かな、なんてあまり反応がなかった久遠に親心的に嬉しく思っていたのだが、全く別もの。
「そりゃあ、そうだ」
早く死にたくて、誤った復讐相手を殺そうとした自分を警戒するのは当たり前である。
たぶん自分だったら殺す。
もっと大きくなってから確実に仕留める。
その時は黙って首を差し出そうと、久臣はははっと乾いた笑みをこぼす。
今は起きなかった出来事。
過去で起こった愚かな行為。
この土地で起こった事実。
はあっとため息をつく。
「一軒一軒侵入するか」
もしかしたら、価値に気付いて捕まっている可能性が出てきた。
それと同時にかつて久臣は助けられた恩人をようやく思い出した。
「名前聞いてなかった……。確かここの都にいるとは言ってたけど、それどこらじゃなさ過ぎて……」
―――え?気にしないで。俺も同じ儀式やられてさー。弟斬りそうになったわけ。寸でで弟だって!意識取り戻したけど……ん?ああ、一緒一緒、中からあかなくてさ~。さてどうしようってとりあえずじっと待ってたら相手の方から開けてくれたわけ。んで、代わりになって貰った。
にこにこと笑顔でおしゃべりな男の人だった。
今の久臣が参考にした人物。
底抜けに明るい様に見える、規格外な男だった。
それもそのはず、彼は他の都の毘沙門の一人で次期当主で、件の生物兵器であったから。
―――用心棒やってるから、都の外に出たくなったらいつでも声かけてね☆
なんて最後まで上機嫌に去っていった。
だが、久臣は知っている。
様子を見に来たであろう女が、久臣の母親が殺されて投げ捨てられたことも、彼女に一緒についてきていたすべての人間が森に捨てられていたことも。
数年前に、何処かの都の一族どころかすべての関係者が惨殺されてその一族を知る全てのものが死に絶えたという話も知っている。
その中には勿論、帝も入っていた。
一時期、あの都は終わりだなんていううわさも流れたが、新たな統治者が出てどうにか保っているらしい。
―――と、そんな話はどうでもいい。
「なんでもっと早く思い出さなかった俺!!」
こんな情報があったら即座に保護していた!
忘れていた、というより久臣自身が思い出したくなかったのが一番大きい。付属で嫌な思い出もついてくるから。
いやそれにしても何やってるんだいい年した大人が!と久臣は自分を叱咤する。
命の恩人どころか、人としての尊厳を保ったまま生きられているのは彼らのお陰なのに自分は報いることができないまま死ぬところだった。
よしッと丁度夜更けなのでどっかの七宝の家に侵入しようと布団から出て気が付いた。
あれ、隣で寝ているはずの我が子がいないぞ?と。
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