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駆君が心配だ。

こんな場所にまだか弱い彼がいていいはずがない。



そんな事を考えて、俺の意識が逸れていた為一匹草むらから犬の妖魔が現れた。

ぐるるるるっと威嚇している。口からはよだれが垂れており、それが地面につくとじゅうっと音を立てて溶けた。強力な酸のようだ。



しまったと思い刀を構えると不意に紫さんがこう言った。



「なんか……模様が浮かんでる……?」



模様?

俺には何のことか分からない。

同じく叢雲さんも同じで首を傾げていた。



「? 俺には見えないけど?」

「え?じゃあ、しーちゃんは?」

「俺も見えないです」



首を振って見えないことを伝えると紫さんが考え込んだ。



「……兄さんとしーちゃんに共通していて、俺にないもの……。法術の有無?」



ぶつぶつと何か言っている。



しかし、そんな彼の思考に相手は付き合ってくれないわけで。

吠えたと思えばこちらに突進してきた。紫さんの前に出ようとしたが、一歩、大きく叢雲さんが踏み出したかと思うとずばっとその犬が真っ二つになっていた。



丁度、弱点の部分諸共。

すると、その妖魔は跡形もなく消える。



その現象は俺には日常茶飯事であるが彼らにとっては異常事態だろう。

そう思ってばっと一番衝撃が大きいだろう叢雲さんを見た。



「あ、消えた」



しかし彼は何でもないようにそう言った。

あ、あれ……?

予想外の反応に、刀をそのまま仕舞う彼をまじまじと見てしまう。

見たところ、動揺のかけらも見られない。

一体どういうことだろうか。そう思っていると予想通りの反応を紫さんがした。



「どういうこと!?」

「え、何そんなに驚いてるの?時々あるよ?」

「え、え!?」



紫さんがきっと普通の反応だ。叢雲さんが妙に落ち着いているだけである。

それにしても時々あるって一体……。



「うーん、でもなんか今回は何となくここ!って感じがした!」

「こと戦闘に関しては感覚人間の兄さんに何かを聞いても無駄な気がするけど、もしかしてあの模様のところを斬れば消える……?」

「ん……?何言ってるの……?」

「知ってた」



叢雲さんも俺と同じように感覚で戦っているようだ。

俺も同じ人間なので思わず分かりますっと頷いてしまう。それから一先ず彼らにいうことにした。



「あの、俺妖魔の弱点?みたいなところが何となくわかって、そこを斬れば法術なしでも妖魔を殺せて、さっきみたいに消えます……」



恐る恐るそう言うと二人が驚愕の表情を見せた。



「え、そ、それは本当なの?」

「はい」



紫さんの言葉に頷くと、確かに消えてるし、いやでもこの一回だけでそれを決めつけるのは、と口にしている。



「……もしかして、さっきから石投げてるの妖魔を倒してくれてた?」

「あ、はい……」



まさか気づかれていると思わず少し恥ずかしくて小さくそう言うと成程っと叢雲さんがそう言った。



「さっきから不自然に気配が消えるなって思ってたんだよ。しーちゃんのお陰か。守ってくれてありがとう」

「いえ!ここら辺の妖魔は石一つで消えるので!」

「でも俺の出番も欲しいな。しーちゃんにかっこいい所見せたい」

「さっきのとてもかっこよかったです!」

「うんうん、ありがとう」



そう言いながらそっと叢雲さんが俺の袂から石を捨てる。

え、と戸惑いの表情を見せると彼はひょいっと俺を抱えて紫さんに渡した。



「しーちゃんは最終兵器だから体力を温存してください」

「え?いえだいじょうぶ……」

「してください」



にっこりと、叢雲さんは笑顔だ。そこはかとなく怖い気がするのは気のせいだろうか。

ごくりと固唾をのむとはあっと紫さんがため息をついた。



「兄さん譲らないから折れた方がいいよ」

「は、はい、分かりました」

「よろしい。じゃあこれから俺のかっこいい所見てね」



最後に頭を撫でられた。

つまり、叢雲さんに守られていろということだろうか。



……少し、落ち着かないな……。



そう思ったが自然と嫌な感じはしなかった。
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