108 / 208
2
しおりを挟む
「あれ、腕もう大丈夫なの?」
「ああ、うん。数日前から治ってるから大丈夫」
そーちゃんにそういわれて俺は軽く答える。
どういうわけか、いつもより早く腕が治ったのだ。若いからだろうか。多分。ともあれ不便だったので漸く腕が使えるようになって良かった。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ、紫さん」
「でも腕まだ治ったばかりでしょ?」
「動かせるなら動かしたほうがいいんですよ。鈍っちゃいますから」
ただ紫さんはめちゃくちゃ心配している。そりゃ腕が動かないなんて深刻な傷を負ったのだからいくら治ったと言っても心配に決まっている。
そこまで考えて、そういえばこの前重いもの持ったけど叢雲さんはあまり言ってこなかったことに気が付いた。
まあ、彼なりに大丈夫だと判断したからだと思う。少しは信頼してくれているのだろうきっと。
その叢雲さんは縁側にいて俺と目があうとふわりと笑って手を振ってくれた。俺もそれにこたえるため軽く笑顔を作ろうとしたが、自分でも分かるほどひきつっていた。やはり、自然な笑みを作るのは俺には難しそうだ。
二人に離れるように言って軽くその武器を振ってみる。初めての武器で少し体勢がぐらついた。上の部分の方が重いから其方に比重がいってしまうようだ。持っていかれないように気を付けないといけない。
「じゃああの岩に向かって上から下に下ろしますね」
「よろしく頼む」
「待って、万が一破片がしーちゃんに飛ぶかもしれないから術かける」
「ありがとう、そーちゃん」
そーちゃんに術をかけて貰い、いざ!
そして現在、梓さんの興奮気味な声援?と共にそーちゃんが呆れ声を出しているのである。
適当に助走をつけて岩に近づき、一気に勢いのまま振り下ろす。
「―――っ!」
「あ、岩の方が固かったみたい」
じいいんっと衝撃が武器を伝って俺に伝わる。そーちゃんの言う通り、純粋に法術で作った岩の方が固かったようだ。
上からはだめだったのでならば今度は横からっと遠心力を使って衝撃を加える。同じくじんっと腕に痺れを感じるが先ほどのように腕の力だけではなく踏ん張りと体のひねりも加わっているのでさっきよりかは奮闘できる。
あ、このままだったらいけるな。
ぐっと足と腕に力を加え、岩にひびが入った時ばきりっと不穏な音が鳴った。
「あ」
ずんっと後方で何か重いものが落ちたような音と共に土埃がたった。持っている武器がかなり軽くなった気がする。すーっと視線をずらしてみると、とある場所から柄が折れていた。
「……ごめんなさい」
まさかそっちが壊れるとは思わずに俺は申し訳なくなって頭を下げて謝る。
「いや、しーちゃんのせいじゃないでしょ。なまくら作った梓君が悪い」
「その通りだ」
梓さんがさっそうと俺のところに来て武器の状態を確認する。その後ろから紫さんものぞき込んで柄を指さした。
「ここが細いんだよ、その棒のところ」
「しーちゃんの手は小さいからあまり太いと持てなくなります」
「じゃあ別のものを付けるとか」
「それだと全体の重みがおかしくなりませんか?」
二人がそう言って話し合いを始めてしまった。俺はそれを見ながら、この折れてしまった棒をそっと横に置きつつその場を離れる。
「あー!紙!筆!」
「持ってきます」
「二人とも、中でやって。そこで座らないで汚れるから」
「「はーい!」」
紫さんたちが地面に座って話し合いを始めようとするので叢雲さんがそう注意すると素直に返事をしていた。そのまま二人は話をしながら鍛冶場に向かっていく。
俺達はその後ろを見送っているとすすっとそーちゃんが近づいてきた。
「ねえ、どうだった?」
「凄かったよ。法術ってあんな使い方もできるんだね」
素直にそう称賛するとふわっとそーちゃんが笑顔を見せてぎゅっと俺の腕に抱き着く。そして肩に頭をのせた。
「しーちゃんが、もっと見たいなら見せるけど」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「じゃあじゃあ、遊ぼ?」
「うん」
ぐいぐいとそのまま腕を引かれて室内で遊ぶ。
そろそろ二人で遊ぶのも限界ではないだろうかと思いつつも今日も彼の好きな遊びに付き合った。
「ああ、うん。数日前から治ってるから大丈夫」
そーちゃんにそういわれて俺は軽く答える。
どういうわけか、いつもより早く腕が治ったのだ。若いからだろうか。多分。ともあれ不便だったので漸く腕が使えるようになって良かった。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ、紫さん」
「でも腕まだ治ったばかりでしょ?」
「動かせるなら動かしたほうがいいんですよ。鈍っちゃいますから」
ただ紫さんはめちゃくちゃ心配している。そりゃ腕が動かないなんて深刻な傷を負ったのだからいくら治ったと言っても心配に決まっている。
そこまで考えて、そういえばこの前重いもの持ったけど叢雲さんはあまり言ってこなかったことに気が付いた。
まあ、彼なりに大丈夫だと判断したからだと思う。少しは信頼してくれているのだろうきっと。
その叢雲さんは縁側にいて俺と目があうとふわりと笑って手を振ってくれた。俺もそれにこたえるため軽く笑顔を作ろうとしたが、自分でも分かるほどひきつっていた。やはり、自然な笑みを作るのは俺には難しそうだ。
二人に離れるように言って軽くその武器を振ってみる。初めての武器で少し体勢がぐらついた。上の部分の方が重いから其方に比重がいってしまうようだ。持っていかれないように気を付けないといけない。
「じゃああの岩に向かって上から下に下ろしますね」
「よろしく頼む」
「待って、万が一破片がしーちゃんに飛ぶかもしれないから術かける」
「ありがとう、そーちゃん」
そーちゃんに術をかけて貰い、いざ!
そして現在、梓さんの興奮気味な声援?と共にそーちゃんが呆れ声を出しているのである。
適当に助走をつけて岩に近づき、一気に勢いのまま振り下ろす。
「―――っ!」
「あ、岩の方が固かったみたい」
じいいんっと衝撃が武器を伝って俺に伝わる。そーちゃんの言う通り、純粋に法術で作った岩の方が固かったようだ。
上からはだめだったのでならば今度は横からっと遠心力を使って衝撃を加える。同じくじんっと腕に痺れを感じるが先ほどのように腕の力だけではなく踏ん張りと体のひねりも加わっているのでさっきよりかは奮闘できる。
あ、このままだったらいけるな。
ぐっと足と腕に力を加え、岩にひびが入った時ばきりっと不穏な音が鳴った。
「あ」
ずんっと後方で何か重いものが落ちたような音と共に土埃がたった。持っている武器がかなり軽くなった気がする。すーっと視線をずらしてみると、とある場所から柄が折れていた。
「……ごめんなさい」
まさかそっちが壊れるとは思わずに俺は申し訳なくなって頭を下げて謝る。
「いや、しーちゃんのせいじゃないでしょ。なまくら作った梓君が悪い」
「その通りだ」
梓さんがさっそうと俺のところに来て武器の状態を確認する。その後ろから紫さんものぞき込んで柄を指さした。
「ここが細いんだよ、その棒のところ」
「しーちゃんの手は小さいからあまり太いと持てなくなります」
「じゃあ別のものを付けるとか」
「それだと全体の重みがおかしくなりませんか?」
二人がそう言って話し合いを始めてしまった。俺はそれを見ながら、この折れてしまった棒をそっと横に置きつつその場を離れる。
「あー!紙!筆!」
「持ってきます」
「二人とも、中でやって。そこで座らないで汚れるから」
「「はーい!」」
紫さんたちが地面に座って話し合いを始めようとするので叢雲さんがそう注意すると素直に返事をしていた。そのまま二人は話をしながら鍛冶場に向かっていく。
俺達はその後ろを見送っているとすすっとそーちゃんが近づいてきた。
「ねえ、どうだった?」
「凄かったよ。法術ってあんな使い方もできるんだね」
素直にそう称賛するとふわっとそーちゃんが笑顔を見せてぎゅっと俺の腕に抱き着く。そして肩に頭をのせた。
「しーちゃんが、もっと見たいなら見せるけど」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「じゃあじゃあ、遊ぼ?」
「うん」
ぐいぐいとそのまま腕を引かれて室内で遊ぶ。
そろそろ二人で遊ぶのも限界ではないだろうかと思いつつも今日も彼の好きな遊びに付き合った。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
3,503
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる