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「紫さん、お話があります!」



お昼ごはんを食べ終わり、叢雲さんが準備をしていなかったからと言って食器の片づけを始めた。

そーちゃんは、午後に用事があると言って見送ったので今は俺と紫さんの二人だけだ。

俺は深呼吸を繰り返し、気合を入れてそう彼に言った。力みすぎて声が軽く裏返ったが、そこは知らないふりをして欲しい。

心臓は緊張でバックバクで手汗が凄い。

そんな俺に紫さんはふわりと笑った。



「うん、いいよ」

「あ、ありがとうございます!」



大体何を俺が話そうとしているかなんて紫さんは予想しているだろうけど、優しい声を出してくれる。

ぐっと一度唇を噛んでそれからふーっと息を吐く。

お昼ご飯を置いていた机を間に挟んでお互い正面に座っている中、俺だけが妙に緊張をしていた。

言わなければ。

この刀について話をしなければ。そう思ってすーはーっと一度深呼吸をして改めて紫さんを見る。

それから机に大太刀を置いた。



「さっきは言えなかったんですが、この刀はとある場所から引っこ抜いて持ってきたものです」



事実であるがあまりにも奇妙でおかしな話だ。俺だったら信じない。

ちらり、と紫さんの反応を伺う。やはり彼はいまいちピンと来ていないのかふむっと顎を抑えて考え込み、じっとその刀を見ていた。

彼の反応はもっともだ。だから現実的な話をした方がいい。



「その、つまり、盗品……です……」



気合を入れたのにもかかわらず俺の声は死ぬほど小さいものだった。俺の意気地なし、と自分を罵倒しながらがばっと頭を下げる。



「申し訳ありません!持ち主がいないからと俺が勝手に私物のように扱っていました!!あの、いくらでも弁償とか償いはします!許さなくて結構です!一生かけて罪を……」

「あ、違う違う。これ俺作った奴じゃないよ」

「清算して……え?」



不意に聞こえた紫さんの声にがばっと顔をあげると彼はふるふると首を振っていた。それから、気まずそうな顔をしてもう一度笑顔を見せる。



「ごめん。俺の模倣品を高値で売りつけてる輩がいるって聞いてたからもしかしてしーちゃんも被害に遭ったんじゃないかと思って。怖い顔してた?」

「あ、い、いえ、俺が勘違いをして……」

「いや、俺が先に言っておくべきだった。ごめんね?」

「い、いえ……」



紫さんはそう言ってひとしきり刀を見た。どうやら、俺の大事な刀をどこから盗んできたー!というわけではなく、模造品被害に遭っていたたための警戒だったようだ。

模造品が出回るくらい紫さんは有名な刀工であることが分かったが、少し話がおかしい気がする。



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