【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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刀工

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ムーンから転載する作業を忘れておりました。申し訳ありません。

ーーーー


あまりにも自分は我儘で自分勝手だ。その事実に思わずはっと鼻で笑いそうになる。



何をいまさら。

俺が彼から逃げ出したのに。

会いたいなんて、どの面下げてそんなことを思っているのか。

ふるりと頭を振ってその考えを追い出した。

今は、目の前のことに集中せねば。



一先ず、いつものようにその刀を背中に括りつけ、ふと先ほどの言葉を思いだす。



「さっき紫さんのこと話してたけど……」

「紫は刀工なんだ」

「え!?」

「あそこが鍛冶場になってる」



そう言ってそーちゃんが指さした。確かに離れのような場所があるが、紫さんが刀を作る姿を想像出来ない。あんな細腕だし、力があるようには見えなかった。勝手な想像だが、刀工は筋肉質な人ばかりだと思っていた。こう、手拭いを頭に巻いてるような……。



「だから紫の刀だと思っただけ」

「成程……」

「うん。あ!そうだ、俺今日色々遊び道具持ってきたんだ!」



そういってそーちゃんは門の方に戻り、風呂敷を持ってくる。刀を持ってくるために置いてきたようだ。

彼が持ってきた遊び道具は室内で遊べるものだった。外で遊ぼうと言われたらどうしようかと思っていたので少しほっとする。

意外だったのは片腕でも割と普通に遊べたことだ。遊びに関しては素人も素人なのでちゃんと相手できるか不安ではあったが問題なかった。



「む、しーちゃん強い……」

「あ、ごめん」

「別にいいよ。あ、手抜いたら分かるから」

「う、うん」



手を抜いたほうがいいのだろうかと思ったら、思考を先回りされた。

そーちゃんは手を抜かれる方が嫌なのか。覚えておこう。



「ただいまー!」



玄関先の方から紫さんの声がした。彼が帰って来たらしい。その声を聞いたそーちゃんがぼそりと声を出す。



「紫だ。外に行ってたの珍しい……」

「今日の夕飯の買い出しに行ってたから」

「昼ご飯食べてないのにもう夕ご飯なの?」

「あ、俺が夕飯のおかずを聞いたからだよ」

「ふーん。じゃあお昼ご飯は何にするの?」

「特に聞いてないけど……」



考えてみれば先に昼ご飯だった。

昼ご飯お握りで大丈夫だろうか。他のおかずも何か作った方がいいかもしれない。あとみそ汁。


「へー?」

「しーちゃん!これで筑前煮作れる!?」

「紫……」



興奮状態で紫さんが入ってきた。その様子に呆れたような声を出すそーちゃん。

俺は立ちあがって彼が買ってきたものを見た。

野菜、キノコ……あれ?



「鶏肉は良いんですか?」

「あ……肉は……苦手で……」

「そうなんですね。じゃあ煮卵とか入れますか?」

「美味しそう!俺卵好きだから食べたい!」



紫さん肉苦手なんだ。肉苦手な人って珍しいな。

煮卵はもう作っておこうかな。



「あ、お昼ごはんはどうしますか?お握りとか作りますか?」

「いいね!ご飯炊いてくる!」

「俺も行きます。煮卵も作りたいので」

「俺も手伝う」

「じゃあ皆で行こう」



ということで、三人で厨に向かう。紫さんがご飯を炊いている間に俺は煮卵の準備をする。



「あ、鮭も買ってるんですね。具にしてもいいですか?」

「勿論!家の厨から焼き鮭が食べられるなんて……っ!」

「あと昆布の佃煮に、おかかも作りますか?」

「いや、あとは塩と梅干で大丈夫だよ」

「じゃあ、あと味噌汁作りますね」

「楽しみ!!」

「俺も」

「そんな特別なものじゃないですよ」



紫さんとそーちゃんがそう言ってくれると嬉しい。今まではそんな事言われたことなかった。弟が持って行く分のお弁当を作ることはよくあったが、評価が悪くて怒られることもあった。



まずいって言われないようにしないと。



ゆで卵を作った後に殻をむいて醤油、砂糖、水、みりんを混ぜた器に殻をむいた卵を入れる。これで保管庫に置いておく。法術で作ったらしい。中はひんやりしていて食材が痛むのを防ぐ画期的なものだ。毘沙門のところにはあったが、ここにもあるとは思わなかったがこれがあると食べ物が長持ちするので便利である。これに入れておけば夕飯まで大丈夫だ。

あとは鮭を焼いて、みそ汁も……。






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