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違和感と感情
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「朝ごはんが……っ!!」
「出来ている……っ!!」
「勝手ながら作らせていただきました」
一晩泊めていただいたので当然だろう。昼ご飯を食べた後、食材を買ってきてくれたので焼いた魚とふろふき大根、漬物を並べた。
二人は、お、おお、と声を出しながらふらふらと座布団に座る。とても感動しているのは分かる。昨日の夕飯も感動していたのにこの人たちは小さなことで喜びすぎではないだろうか?
「お、おい、しい……っ!」
「う、あったかい、おかずがあったかい……」
泣きながら食べている。
すっとお茶を出すと「ありがとう……っ!!」とむせび泣きながら感謝を伝えられた。
「あー。お茶まで美味しい……。雇いたい……」
「一生家にいて……住み込みで給金払うから……」
「え」
二人がそういうので驚いてそう声をあげるとハッとした二人が慌てて言葉を募る。
「い、いやいや冗談だから!!」
「そうそう、家族がいるでしょ?そうだ、家までおく……」
「……」
家族。その言葉を聞いて俺は大きく体を震わせてしまった。今あそこに戻ったら殺される。ぎゅっと目を閉じて、恐怖を抑え込んでいるとそっと手を握られた。
顔をあげると叢雲さんと紫さんが近くにいる。
「しーちゃんさえよければ、ここで働いてくれないかな?」
「給金が払えなくなることは絶対にないから、お得だよ?今なら住み込み可!」
「え、で、でも……」
流石に断ろうと思っていたら、すっと二人が両脇で力強く俺の手を握ってくる。
「あの、本当、美味しいご飯が毎日食べたいのでここにいてください!!」
「温かいご飯毎日食べて人生楽しく生きたいのでどうかここにいてください!!」
「あ、え」
そんな必死にお願いされるとは思わず、なんといえばいいのか迷っていると二人が芳しくない俺の反応に慌て始める。
「金か!?そんなのいくらでも!!俺これでも高給取りだから!!」
「部屋はあるし、服とかも買うよ!!欲しいものは何でも買うから!!」
「「だから、美味しいご飯を提供してください!!」」
「お、俺でよければ……」
二人の必死な姿に俺は頷いた。すると二人は手を取り合ってありがとうと俺に感謝を伝えてくれる。
お金の問題は確かにあったし、これから住む場所も考えていた。飢えることなく寒さもしのげる場所があるのなら、提案を受け入れるに決まっている。
決まっているけれど、こうもうまい具合に手に入ってしまうとこれから悪いことが起きるのではないかと少し身構えてしまう。
ここ最近、いいことだらけだったからあまりつり合いが取れていないかもしれないが……。
「あ、であれば、夕飯凝ったものを作りたいと思いますけど、何食べますか?」
「え、え、いったら作ってくれるの!?」
「ほ、ほ、ほんとうに!?」
「俺の知っている料理でしたら……」
そう言うと二人は一斉に声をあげる。
「ぶり大根!!」
「筑前煮!!」
どちらも煮ものだが違う料理だ。しかし、作ったことがある料理なので問題はない。
「じゃあ、二つとも……」
「いや!お腹いっぱい食べたいからおかず一品大量に作って欲しい!」
「兄さんの言う通り。だからここは、勝負!!」
二人が朝ご飯をバクバク食べ終わった後にすっと立ち上がってしまう。昨日の攻防を思い出し、まさか殴り合いでもするのではないだろうかと思って慌てて仲裁に入ろうとしたが、彼らは箱を持ってきた。
あの箱には覚えがある。
「「百人一首で!!」」
「あ、成程……」
平和的な解決方法でよかった。
「出来ている……っ!!」
「勝手ながら作らせていただきました」
一晩泊めていただいたので当然だろう。昼ご飯を食べた後、食材を買ってきてくれたので焼いた魚とふろふき大根、漬物を並べた。
二人は、お、おお、と声を出しながらふらふらと座布団に座る。とても感動しているのは分かる。昨日の夕飯も感動していたのにこの人たちは小さなことで喜びすぎではないだろうか?
「お、おい、しい……っ!」
「う、あったかい、おかずがあったかい……」
泣きながら食べている。
すっとお茶を出すと「ありがとう……っ!!」とむせび泣きながら感謝を伝えられた。
「あー。お茶まで美味しい……。雇いたい……」
「一生家にいて……住み込みで給金払うから……」
「え」
二人がそういうので驚いてそう声をあげるとハッとした二人が慌てて言葉を募る。
「い、いやいや冗談だから!!」
「そうそう、家族がいるでしょ?そうだ、家までおく……」
「……」
家族。その言葉を聞いて俺は大きく体を震わせてしまった。今あそこに戻ったら殺される。ぎゅっと目を閉じて、恐怖を抑え込んでいるとそっと手を握られた。
顔をあげると叢雲さんと紫さんが近くにいる。
「しーちゃんさえよければ、ここで働いてくれないかな?」
「給金が払えなくなることは絶対にないから、お得だよ?今なら住み込み可!」
「え、で、でも……」
流石に断ろうと思っていたら、すっと二人が両脇で力強く俺の手を握ってくる。
「あの、本当、美味しいご飯が毎日食べたいのでここにいてください!!」
「温かいご飯毎日食べて人生楽しく生きたいのでどうかここにいてください!!」
「あ、え」
そんな必死にお願いされるとは思わず、なんといえばいいのか迷っていると二人が芳しくない俺の反応に慌て始める。
「金か!?そんなのいくらでも!!俺これでも高給取りだから!!」
「部屋はあるし、服とかも買うよ!!欲しいものは何でも買うから!!」
「「だから、美味しいご飯を提供してください!!」」
「お、俺でよければ……」
二人の必死な姿に俺は頷いた。すると二人は手を取り合ってありがとうと俺に感謝を伝えてくれる。
お金の問題は確かにあったし、これから住む場所も考えていた。飢えることなく寒さもしのげる場所があるのなら、提案を受け入れるに決まっている。
決まっているけれど、こうもうまい具合に手に入ってしまうとこれから悪いことが起きるのではないかと少し身構えてしまう。
ここ最近、いいことだらけだったからあまりつり合いが取れていないかもしれないが……。
「あ、であれば、夕飯凝ったものを作りたいと思いますけど、何食べますか?」
「え、え、いったら作ってくれるの!?」
「ほ、ほ、ほんとうに!?」
「俺の知っている料理でしたら……」
そう言うと二人は一斉に声をあげる。
「ぶり大根!!」
「筑前煮!!」
どちらも煮ものだが違う料理だ。しかし、作ったことがある料理なので問題はない。
「じゃあ、二つとも……」
「いや!お腹いっぱい食べたいからおかず一品大量に作って欲しい!」
「兄さんの言う通り。だからここは、勝負!!」
二人が朝ご飯をバクバク食べ終わった後にすっと立ち上がってしまう。昨日の攻防を思い出し、まさか殴り合いでもするのではないだろうかと思って慌てて仲裁に入ろうとしたが、彼らは箱を持ってきた。
あの箱には覚えがある。
「「百人一首で!!」」
「あ、成程……」
平和的な解決方法でよかった。
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