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前回は同じ話をアップして申し訳ありませんー!
教えて下さった方ありがとうございます!
沢山いたので全部公開させていただきました。
次から気をつけます……。
ーーー
きんぴらごぼう、大根と油揚げと豆腐のみそ汁、大根の葉と鰹節の炒め物を順に作っていく。
うん、味もいい。本当は肉料理があれば良かったが、ないので仕方ない。
あとはお米が炊けるのを待つだけだと思っていたら丁度良くご飯が出来た。
紫さんが手早く布巾でふたを開ける。ふわっとお米の匂いがして蒸気が舞う。つやつやでお米が立っている。見ただけで美味しそうな白米だ。
「お米をどれだけ美味しく炊けるかを研究したから変な味はしないよ!」
「とても美味しそうです」
「ありがとう!」
さてお米もたけたことだし、お膳におかずとそれらを盛ろうとすると大皿に乗ったおかずの皿を叢雲さんが手に取った。
「飯だー!!おひつにご飯入れて適当に皿持ってきて!」
「皿でかいのでいい?」
「いいよ!洗い物は少ない方がいいから!!」
「え、一人分に分けた方が……っ!」
そう言うが、その前にそうちゃんと叢雲さんが去っていく。ぽかんとしている俺の横で紫さんが少し笑うとこう口にする。
「うちのところでは大皿におかずのっけて好きなだけ自分の取り皿に乗せて食べるんだ。いやだったら取り分けるけど……」
「い、いえ、少しおどろいて……」
そういうところもあるのか。確かに、人数分のおかずの皿を出さなくて済むから洗い物が少なくていい。
「よかった。じゃあ残ったのも持って行こうか」
「はい」
そう言って、俺達も一緒に居間に持って行くと文机よりも少し大きい机のようなものがあった。それに今までのおかずが乗っており、食べやすいようにそれを囲むように座布団が敷いてある。
な、なんだろうあれ。あそこに置けばいいのかな……?
俺の様子に気付いた叢雲さんがとんとんっと机を指さしてくれる。やはり置いていいようだ。
「変わった文机?ですね」
「でかくていいでしょ。紫がいちいち膳におかず分けるのめんどくさい、でも畳に置くのは気が引けるって言って作った奴なんだ~」
「へー。便利でいいですね」
大きいし、食事以外でも使えそうだ。
そう思ってまじまじと見ているととんっと最後に味噌汁が置かれた。これで今日の昼ご飯は終わりである。考えてみれば少し気合を入れて作りすぎた気がする……。食べ切れるか?まあ夕飯にでも回せば……。
そんな不安は次の瞬間吹っ飛んだ。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
叢雲さんの挨拶の後揃って紫とそうちゃんが手を合わせて言うとおかずの半分が消えた。
あれ、さっきまであんなにあったような……?
「むーらーさーきー?君俺より小さいんだから少しは遠慮しなよ」
「いやいや、俺は成長期だから。兄さんこそ遠慮してよ。もう伸び盛りでも何でもないでしょ?」
「え、すご……」
二人の大きな皿の上におかずが山盛りに乗っている。思わずそう呟くとひょいひょいっと俺の皿にもおかずがのせられていた。言わずともそんな事をしているのはそうちゃんである。慣れた光景なのか動揺している様子はない。
「あの人達に全部取られるから確保してあげる」
「あ、ありがとう。でもそうちゃんのぶんが……」
「俺はあの人たちと違っていつでも家でおかず食えるから」
「な、成程……」
つまり、お家で作った温かいおかずにとてつもなく飢えていたという事だろうか。
こんなのいつでも作れるのに。
「夕飯も作りますから……」
思わずそう口を挟むと、行儀悪く箸で掴みあっている二人がこちらを向く。
「夕飯も……っ!!」
「温かいおかずが……っ!!」
「……大丈夫?俺いようか?」
「俺の分は別に取り分けるから……」
とてつもなく感動しているが、彼らのおかずの取り合いは収まらず俺はそうちゃんと二人で確保したものをゆっくりと食べていた。不思議なのはあんなに激しい攻防をしているのに一つもおかずを零していないところである。
彼らの食に対する執着はすさまじいと言ったところだろうか。
とはいえ、ここまで目に見えて美味しいと言ってくれる人は今までいなかったので嬉しい。成程。今まで自分の為に作っていたが、美味しいと言って食べてくれるだけでこんな気持ちになるのかと不思議な気持ちを抱えながら俺はゆっくりと昼ご飯を食べることにした。
教えて下さった方ありがとうございます!
沢山いたので全部公開させていただきました。
次から気をつけます……。
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きんぴらごぼう、大根と油揚げと豆腐のみそ汁、大根の葉と鰹節の炒め物を順に作っていく。
うん、味もいい。本当は肉料理があれば良かったが、ないので仕方ない。
あとはお米が炊けるのを待つだけだと思っていたら丁度良くご飯が出来た。
紫さんが手早く布巾でふたを開ける。ふわっとお米の匂いがして蒸気が舞う。つやつやでお米が立っている。見ただけで美味しそうな白米だ。
「お米をどれだけ美味しく炊けるかを研究したから変な味はしないよ!」
「とても美味しそうです」
「ありがとう!」
さてお米もたけたことだし、お膳におかずとそれらを盛ろうとすると大皿に乗ったおかずの皿を叢雲さんが手に取った。
「飯だー!!おひつにご飯入れて適当に皿持ってきて!」
「皿でかいのでいい?」
「いいよ!洗い物は少ない方がいいから!!」
「え、一人分に分けた方が……っ!」
そう言うが、その前にそうちゃんと叢雲さんが去っていく。ぽかんとしている俺の横で紫さんが少し笑うとこう口にする。
「うちのところでは大皿におかずのっけて好きなだけ自分の取り皿に乗せて食べるんだ。いやだったら取り分けるけど……」
「い、いえ、少しおどろいて……」
そういうところもあるのか。確かに、人数分のおかずの皿を出さなくて済むから洗い物が少なくていい。
「よかった。じゃあ残ったのも持って行こうか」
「はい」
そう言って、俺達も一緒に居間に持って行くと文机よりも少し大きい机のようなものがあった。それに今までのおかずが乗っており、食べやすいようにそれを囲むように座布団が敷いてある。
な、なんだろうあれ。あそこに置けばいいのかな……?
俺の様子に気付いた叢雲さんがとんとんっと机を指さしてくれる。やはり置いていいようだ。
「変わった文机?ですね」
「でかくていいでしょ。紫がいちいち膳におかず分けるのめんどくさい、でも畳に置くのは気が引けるって言って作った奴なんだ~」
「へー。便利でいいですね」
大きいし、食事以外でも使えそうだ。
そう思ってまじまじと見ているととんっと最後に味噌汁が置かれた。これで今日の昼ご飯は終わりである。考えてみれば少し気合を入れて作りすぎた気がする……。食べ切れるか?まあ夕飯にでも回せば……。
そんな不安は次の瞬間吹っ飛んだ。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
叢雲さんの挨拶の後揃って紫とそうちゃんが手を合わせて言うとおかずの半分が消えた。
あれ、さっきまであんなにあったような……?
「むーらーさーきー?君俺より小さいんだから少しは遠慮しなよ」
「いやいや、俺は成長期だから。兄さんこそ遠慮してよ。もう伸び盛りでも何でもないでしょ?」
「え、すご……」
二人の大きな皿の上におかずが山盛りに乗っている。思わずそう呟くとひょいひょいっと俺の皿にもおかずがのせられていた。言わずともそんな事をしているのはそうちゃんである。慣れた光景なのか動揺している様子はない。
「あの人達に全部取られるから確保してあげる」
「あ、ありがとう。でもそうちゃんのぶんが……」
「俺はあの人たちと違っていつでも家でおかず食えるから」
「な、成程……」
つまり、お家で作った温かいおかずにとてつもなく飢えていたという事だろうか。
こんなのいつでも作れるのに。
「夕飯も作りますから……」
思わずそう口を挟むと、行儀悪く箸で掴みあっている二人がこちらを向く。
「夕飯も……っ!!」
「温かいおかずが……っ!!」
「……大丈夫?俺いようか?」
「俺の分は別に取り分けるから……」
とてつもなく感動しているが、彼らのおかずの取り合いは収まらず俺はそうちゃんと二人で確保したものをゆっくりと食べていた。不思議なのはあんなに激しい攻防をしているのに一つもおかずを零していないところである。
彼らの食に対する執着はすさまじいと言ったところだろうか。
とはいえ、ここまで目に見えて美味しいと言ってくれる人は今までいなかったので嬉しい。成程。今まで自分の為に作っていたが、美味しいと言って食べてくれるだけでこんな気持ちになるのかと不思議な気持ちを抱えながら俺はゆっくりと昼ご飯を食べることにした。
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