【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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ということで、俺は三人に見守られながら料理をすることになる。

厨につくと綺麗な料理道具がずらりと並んでいる。毘沙門の屋敷に比べると手狭であるが使いやすくてよさそうだ。



「えーっと、保冷庫には豆腐、油揚げ、味噌、卵、葱、大根、ごぼう、さつまいも……」

「あ、鰹節あるよ。あと梅干し、漬物」

「一先ずご飯炊くか。しーちゃん、これぐらいしかなかったけど何か作れる?」



叢雲さんと紫さんがそう言って食材を並べる。

これしかないと言っていたが、これぐらいあればおかずに汁物が出来そうだ。



「卵焼きと大根とごぼうのきんぴら、大根の葉の炒め物、みそ汁を作ります」

「え!そんなに作れるの!?」

「野菜齧ってご飯しか食べてない俺たちにそんな立派なおかずが出てくるの!!??」

「いや、そんなに立派なものじゃないですよ……?」

「は、はわわわ」

「はわわわわ」



二人がおかしくなってしまった。おかしくなってしまったが、手際よくご飯を洗って釜に入れている。習慣というやつか?



「俺は何すればいい?」

「あ、鰹節削るの出来る……?この器ぐらいに」

「できる」



そう言うとそうちゃんが削って鰹節を作ってくれる。俺はそれを見ながらお鍋に水を入れて火にかけ、大根を洗う。葉の部分も念入りに洗って水気をとった。



「あ、包丁は俺が使うよ。どう切ればいい?」

「いえ、大丈夫ですよ」

「え?」



俺は叢雲さんにそう言って包丁を近くに置いた後に大根を空中に投げる。素早くおいていた包丁を手にして大根を空中で切る。

これは片手でも安全に切れるように編み出した技だ。どん、とまな板に細切りにした大根といちょう切りにした大根が出来る。



「え、え!?なにが起こったの今!?」

「お、俺も何も見えなかった……っ!!」



凄く驚いている彼らに片腕なくても出来ることを披露できたので俺は次にこう言う。



「さっきも言いましたが、片手でもできるように訓練してますので」

「そ、そっか……」

「でも、ここは俺や兄さんに任せて?火を使わなければどうにかなるから!」

「え、で、でも……」

「紫と叢雲さんもそう言ってるみたいだから頼っていいと思うよ。鰹節は終わったよ」

「あ、ありがとう」



そうちゃんがそう言った。彼から鰹節を貰って沸騰させた鍋に一先ずそれを入れる。それから葉っぱの部分を見て叢雲さんを見た。



「あの、じゃあこれを刻んでくれますか……?」

「! うん!細かく刻んでいいかな?」

「はい。あの、紫さんは油揚げと豆腐を切ってください。みそ汁に入れたいので」

「任せて」



二人に食材を切って貰っている間に作っていた出汁をこす。鰹節は後で葉っぱと一緒に炒めるので置いておく。卵焼きを作るため卵を溶きほぐし、作った出しをみそ汁の分を残して入れて醤油も加える。

卵焼きを作るため、四角の鉄の調理器具を出した。



これが卵焼きを作るのに非常に便利なのである。生み出した先人の方には感謝しかない。



それを熱して油を軽く引き、卵液を流す。じゅうっと良い音が鳴って鉄板に広げながら良い所で手前に巻いていく。片手しか使えないので慎重に巻きながらもう一度卵液を流し、巻いていく。

それを繰り返して卵焼きを完成させた。皿にのせてこれも切って貰おうと顔をあげるとじっと三人が卵焼きを見ていた。



何でそんなに見てるんだろうと首を傾げてはっとした。



そうか、美味しいかどうか気になってるんだな?



「味見しますか……?」

「「「する!」」」



三人が声を合わせてそう言った。

そんなに気になっていたのか。まあ、得体のしれない子供の料理なんて味見しないと危ないよね。

叢雲さんが小さく卵焼きを切った。

それをそうちゃん、紫さんが手で掴む。叢雲さんもそれをとって一斉にそれを口にした。



「「「……っ!!!」」」

「え、あ、まずかったですか……?」



弟の弁当にも入れていた卵焼きだったが、人様の口に会わなかっただろうか。不安になってそう聞くと三人はぷるぷる震えて俺を見る。



「美味しい!すっごく!!」



初めにそう言ったのはそうちゃんだった。

良かったと安心して、今度は紫さんと叢雲さんを見る。そしてぎょっとした。



「お、おいぢい……っ!!」

「おいじいよぉ……っ!!」



なんと彼らは泣いていた。

え、な、泣くほど……?

俺がそう思っているとうわあっとそうちゃんがかなり引いた声を出している。



「大人が汚い声をあげないでよ」

「だって、家で出来立ての卵焼きが食べれるなんて思わなくて……っ!」

「おいしい、おいしい……」



紫さんがもう一つ卵焼きを手に取って食べる。その紫さんの手を叩き落としてそうちゃんが叫んだ。



「味見は終わり!紫!それ以上はだめ!!」

「もっと食べたい!!」

「無くなるから!!」

「紫ずるい!俺も食べたい!!」

「このダメ兄弟!しっかりしろ!」



何かにとりつかれたように二人が卵焼きに手を伸ばすのでそうちゃんがそれを持って逃れようと走る。それを追いかける二人。



まだ火を使っているのでこれは危ない。

ぱんっと手を叩いて彼らの意識をこちらに向ける。三人はぴたりと動きを止めて俺を見た。



「危ないのでそれ以上やるなら出ていってください」

「はい」

「ごめんなさい」

「ご、ごめん……」



一先ず、卵焼きは机の上に置いてもらい他にもおかずを作る。



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