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おにいさま
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今回で分かったことがある。
晴臣さんと久臣さんはだいぶこの都に影響力がある人物であることが。多分毘沙門以外の七宝なんだと思う。その上、皇宮勤め。でなければこんなことが出来るはずがない。
「では、しーちゃんのこと頼みましたよ、月彦」
「お任せください、師範!」
次の日、晴臣さんは準備が出来ましたと言って月彦君を連れて来た。何事かと思ったら皇宮に行ける許可が出たという。
ただ、月彦君同伴で。それは困る。そう思ってじっと彼を見てどうしようかと考えているとなんで一緒に?という疑問を彼は答えてくれる。
「丁度俺も皇宮に行く用事があるんだ。一緒に行こう!」
「なる……ほど……」
「話は通してますので、二人で仲良く行ってきてくださいね。あ、そうだ、お小遣いあげますから帰りにお菓子でも食べてください」
「! い、いえ!受け取れま……」
「いいなー!!俺この前出来た上月っていうお菓子屋さんのきんつば食べたーい!」
ひょこっと晴臣さんの後ろから現れた柊君がそう言った。上月のお菓子屋さん……?
俺は何の店か分からずに首を傾げると、月彦君が晴臣さんからお金の入った袋を手に分かりました!と声を出す。月彦君にお土産は任せよう。
いや、任せるとかではなく!
外に出るのだから、俺と一緒にいると毘沙門の人に会ったら何されるか分からない。だから、俺一人で皇宮に行った方がいいに決まっている。
「あの!!」
「師範は欲しい物ありますか?」
「いいえ。好きなもの買って来てください」
「分かりました!しーちゃん、早く行こう!」
「い、いや!俺は月彦君とは……っ!」
「あ、しーちゃん、これどうぞ」
月彦君が手を繋いできた。慌てて一人で行くと言おうとしたら、晴臣さんがかぽっと俺の顔に何かを被せた。驚いて一度それを取ってみると猫のお面である。
ぱっと俺が晴臣さんを見ると彼はなでなでと俺の頭を撫でた。
「行ってらっしゃい」
「ありがとうございます晴臣さん!」
お言葉に甘えてそのお面を被り、ぎゅっと月彦君の手を握り返す。
久遠は、今はお昼寝中なので一緒に行けない。
顔が分からなければ一緒に行きたかったけどすやすや寝ている久遠を起こすわけにもいかないしそもそも、大人がいないんだったらいけないしね。
「しちゃ?」
俺が聞きたかった声がした。ぱっと其方を見るとやはり俺の望んでいた子がそこにいた。
「くーちゃん!」
「おそと?くちゃも!!」
「あ、え、えっと……」
いつの間にか彼は起きたようだ。思わず彼の名前を呼んで、月彦君の手を解き彼に駆け寄る。裸足でここに来たようだったのですぐに抱える。んふふっと久遠が楽しそうに声をあげてぴとっと頬をくっつける。最近は会うたびにしゃがんで―と指示されこれをやられる。もちもちの頬がくっつくのは全く悪い気はしないけれど、誰がこんな事を教えたのかが分からない。俺の周りにはこんなことしてる人はいないと思うし……。
そんなことを思いながら抱えたのは良いが、久遠の言葉に俺はすぐに答えることができない。久遠を連れていくのと、俺達だけで行くのとはわけが違うのだ。だから判断を仰ぐためにちらっと晴臣さんを見た。すると晴臣さんはにっこりと安心させるように俺に笑顔を向ける。
「良いですよ。瑠衣が一緒についていきますので」
「はい」
瑠衣お兄ちゃんが相変らず気配もなく現れた。久遠の草履と羽織りを持ってきて、お出かけの格好を完成させる。気のせいか、俺と同じような服装だ。
「しーちゃんとお揃いだな!」
「んふふ!いいでしょー!!しーちゃ、にぃう?」
「似合ってるよ」
あ、やっぱり同じだったか。
くるくる回って見せる久遠に月彦君がそう言った。俺もそう言って久遠を褒めると久遠はにっこにこの笑顔で月彦君と俺の手を取った。
「しちゃ!つーく!」
「うん、一緒に行こう」
「帰りにおやつ買って行こうな!」
「おやちゅ!」
手を繋いで仲良く皇宮に向かう。久しぶりに行く皇宮だ。しかも今度は久遠も一緒だし。
晴臣さんと久臣さんはだいぶこの都に影響力がある人物であることが。多分毘沙門以外の七宝なんだと思う。その上、皇宮勤め。でなければこんなことが出来るはずがない。
「では、しーちゃんのこと頼みましたよ、月彦」
「お任せください、師範!」
次の日、晴臣さんは準備が出来ましたと言って月彦君を連れて来た。何事かと思ったら皇宮に行ける許可が出たという。
ただ、月彦君同伴で。それは困る。そう思ってじっと彼を見てどうしようかと考えているとなんで一緒に?という疑問を彼は答えてくれる。
「丁度俺も皇宮に行く用事があるんだ。一緒に行こう!」
「なる……ほど……」
「話は通してますので、二人で仲良く行ってきてくださいね。あ、そうだ、お小遣いあげますから帰りにお菓子でも食べてください」
「! い、いえ!受け取れま……」
「いいなー!!俺この前出来た上月っていうお菓子屋さんのきんつば食べたーい!」
ひょこっと晴臣さんの後ろから現れた柊君がそう言った。上月のお菓子屋さん……?
俺は何の店か分からずに首を傾げると、月彦君が晴臣さんからお金の入った袋を手に分かりました!と声を出す。月彦君にお土産は任せよう。
いや、任せるとかではなく!
外に出るのだから、俺と一緒にいると毘沙門の人に会ったら何されるか分からない。だから、俺一人で皇宮に行った方がいいに決まっている。
「あの!!」
「師範は欲しい物ありますか?」
「いいえ。好きなもの買って来てください」
「分かりました!しーちゃん、早く行こう!」
「い、いや!俺は月彦君とは……っ!」
「あ、しーちゃん、これどうぞ」
月彦君が手を繋いできた。慌てて一人で行くと言おうとしたら、晴臣さんがかぽっと俺の顔に何かを被せた。驚いて一度それを取ってみると猫のお面である。
ぱっと俺が晴臣さんを見ると彼はなでなでと俺の頭を撫でた。
「行ってらっしゃい」
「ありがとうございます晴臣さん!」
お言葉に甘えてそのお面を被り、ぎゅっと月彦君の手を握り返す。
久遠は、今はお昼寝中なので一緒に行けない。
顔が分からなければ一緒に行きたかったけどすやすや寝ている久遠を起こすわけにもいかないしそもそも、大人がいないんだったらいけないしね。
「しちゃ?」
俺が聞きたかった声がした。ぱっと其方を見るとやはり俺の望んでいた子がそこにいた。
「くーちゃん!」
「おそと?くちゃも!!」
「あ、え、えっと……」
いつの間にか彼は起きたようだ。思わず彼の名前を呼んで、月彦君の手を解き彼に駆け寄る。裸足でここに来たようだったのですぐに抱える。んふふっと久遠が楽しそうに声をあげてぴとっと頬をくっつける。最近は会うたびにしゃがんで―と指示されこれをやられる。もちもちの頬がくっつくのは全く悪い気はしないけれど、誰がこんな事を教えたのかが分からない。俺の周りにはこんなことしてる人はいないと思うし……。
そんなことを思いながら抱えたのは良いが、久遠の言葉に俺はすぐに答えることができない。久遠を連れていくのと、俺達だけで行くのとはわけが違うのだ。だから判断を仰ぐためにちらっと晴臣さんを見た。すると晴臣さんはにっこりと安心させるように俺に笑顔を向ける。
「良いですよ。瑠衣が一緒についていきますので」
「はい」
瑠衣お兄ちゃんが相変らず気配もなく現れた。久遠の草履と羽織りを持ってきて、お出かけの格好を完成させる。気のせいか、俺と同じような服装だ。
「しーちゃんとお揃いだな!」
「んふふ!いいでしょー!!しーちゃ、にぃう?」
「似合ってるよ」
あ、やっぱり同じだったか。
くるくる回って見せる久遠に月彦君がそう言った。俺もそう言って久遠を褒めると久遠はにっこにこの笑顔で月彦君と俺の手を取った。
「しちゃ!つーく!」
「うん、一緒に行こう」
「帰りにおやつ買って行こうな!」
「おやちゅ!」
手を繋いで仲良く皇宮に向かう。久しぶりに行く皇宮だ。しかも今度は久遠も一緒だし。
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