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「皇宮……」

「? しちゃ?」

「皇宮、そうだ皇宮!」



どうして今まで気づかなかったのだろう!俺には切り札がある!ここでそれを切ってしまうのは少し勿体ない気がするが、ここから離れるには絶好の理由だ。

結界を行うその場所を、切り札で見学させてもらう。

いくら帝でも関係者以外は立ち入らせたくないだろうし……。黒狗の久臣さんはついてくるだろうけど、仕事があるだろうからきっと別れられる。

場所自体は、いつかきちんと見た方がいいと思っていたのだ。今でもそれは構わないだろう。

家に帰って、多分また追い出されて、その時は都の外に行って……。いや、そもそもいれて貰えるか?ダメだったらそのまま都の外だな。調査は、人気のない夜に行えば自由に行動できるはずだ。



「くーちゃん、ごめんね。久臣さんに会ってくる」

「ひーさ……?」

「あ、えーっと、ととだよとと」



名前だけだと誰か分からなかったようで首を傾げていた久遠だったが、俺が言いなおすとはっとしてからその可愛らしい顔をしかめっ面に変える。それから大変不服のようでもっと強く抱きしめられた。



「なーで!!」

「用事があるからかな」

「くちゃない!」

「うん、あるのは俺だからね」

「しちゃもない!!」

「いや、あるよ」

「なぁあぁいぃぃっ!!」



しまった。これ絶対離れない奴だ。どうすればいいのかと思い、そういえば別の行動をとることによって久遠は固まったと晴臣さんから聞いた。そこですかさず畳みかけるように話すと最終的に頷いたとも。流石晴臣さんである。



「じゃあくーちゃんも一緒に連れてっちゃおうかなー?」

「いよ!」

「あれ?」



作戦がうまくいかなかった。彼にとって予想外の言葉ではなかったようだ。まあ、二歳児に聞かれて困るようなものでもないし、本当の目的は帝様なので良しとする。

そのまま俺は久遠と手を繋いで晴臣さんに久臣さんに会いたいと話をした。すると、彼はどういうわけかすぐにやって来た。黒狗の仕事ってそんなに緩いのかな……?まあ俺、黒狗になったことないから分からないんだけど。



「しーちゃん!どうしたのー?俺に何の用?」

「あ、いえ、久臣さんというより預けた札を使おうと思って……」

「え!そうなの!何でもいいよ!邪魔な兄弟を殺したいとか、贔屓する両親を拷問したいとかかな?」

「い、いえ、そんなことしません」

「え」



そっかあっと久臣さんは大変残念そうな表情をされた。その顔は、久遠に似てるなっと思ったが彼の発言に俺は疑問を抱いてしまう。

俺そんなことするやつだと思われてるの……?

どう反応すればいいのか分からずに真顔になると、同席して久臣さんの隣にいた晴臣さんがばしんっと彼の頭を叩いた。



「いっっっって!?」

「そういうことをするような人間じゃありませんよしーちゃんは。本当、失礼なこと言って!謝ってください!」

「あ、い、いえ、そんな……」

「あ、そ、そっか!ごめんよー!!そういう事じゃなくて、俺がしたい事だから!!」

「……成程」



粋な冗談か。真に受けてしまって恥ずかしい……。

そう思っていたら視界の端で黙っとけ、とでもいうように晴臣さんが久臣さんのわき腹を思いっきり肘でつついたのが見えた。久臣さんはその勢いのまま倒れこんで悶絶している。



「今更ですが、私が聞いても大丈夫なものですか?」

「あ、は、はい」



横に倒れこんでいる久臣さんがいるが晴臣さんはそう続ける。似たような格好をして久遠が遊び始めたのを尻目に俺はそれを使って行いたいことを話した。



「七宝の皆様が結界を行う場所を見学したくて……」

「え……?」

「え?」



晴臣さんの反応が少しおかしい気がして思わず同じ言葉が漏れた。彼は少し考え込んだ後、深いため息をついた。



「そうだった、だから調べないと分からなかったんだ」

「???」



何のことか分からずに首を傾げる。晴臣さんの厳しい表情から良くない事であることは分かるが、そんなに結界の場所に行くのが厳しいのだろうか。ならば、猶更帝様の力を使って行うことに意味がある気がしてきた。いやきっとそうだ。



「しーちゃん」

「はい」



帝様の危ない札も使えるし、一石二鳥だと軽く浮かれていると晴臣さんがにこやかな表情で俺を見た。



「とっておきは、大事に取っておきましょう。折角なんですから本当にどうしようも無くなった時にだけ使いましょう」

「? あ、あの、それが今で……」

「しーちゃんには、地位と権力と金を持っている頼もしいお友達がいるじゃないですか。こことそこに」



え……?



そう言って晴臣さんが自分と久臣さんを指さした。
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