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「あ、白蛇様を描いてみました。どうですか?」
ちろちろと舌を出している白蛇様はすりと俺に頬ずりしてきた。それからぴちぴちと尻尾を振るので気に入ってくれているんだと思う。良かった。
「くちゃも!き!!」
「あ、すごい金色だね」
「んふふ~」
全部に金箔をはった貝を見せられた。俺が金なんて言ったばかりに、久遠の遊び道具となってしまったものたちだ。そして久遠はその貝と俺の貝を合わせる。対のものだったらしくぴったりはまった。
「くちゃとしちゃの!」
「そうだね。一緒だね」
「ねー、ぇ……」
久遠が不自然にそう言葉を切った後、外を見つめた。それから顔を青くして悲鳴を上げる。
「きゃあああああああああっ!!」
「!? くーちゃんどうし……っ!」
「―――み、ツけタアっ!!」
不意に、そんな声が聞こえて素早く前に出た瑠奈お姉ちゃんが吹き飛んだ。其方に意識を持っていかれるが次にくる攻撃に久遠を抱えて横に転がるように避ける。きんっと金属がぶつかり合う音がして、顔をあげると晴臣さんがその人物と対峙していた。
「一体どうしてこんなところに!!」
「どけ、ドケぇ!!そノ子供に用がアる!大太刀、振り回したコドモの方だァ!!」
何処からともなくやって来た彼はそう叫んでいた。
誰だったか、一瞬思い出すのに時間がかかった。それもそのはず、ここ数か月会っていないほぼ他人と言ってもいい関係性の男であるから。
「血迷ったか健次郎!!」
「うるサい!!俺に残された時間ヲ取り戻すには、そのガキが必要ナンだぁ!!」
人としての形を保っているが声が時々おかしくなり、びく、びくっと頬がけいれんを起こしている。握っている太刀も異常なほど震えていて、晴臣さんはそれを弾いた後に腹に蹴りを入れた。その衝撃を受けて彼は大きくのけぞり後方に下がる。しかし次には不自然な動きで体を起こした。
「ころス、殺す!!邪魔するヤツハ殺ス!!」
「ひっ!」
そう低い声を出してゲラゲラと笑い声をあげている健次郎さんに久遠は悲鳴を上げてぼろぼろと泣き始めた。久遠を怖がらせている。悪い奴。俺はポンポンっと久遠の背中を叩いて優しく涙をぬぐった。
「大丈夫だよ、くーちゃん」
「しちゃ、こあい、こあいぃっ!」
「大丈夫」
申し訳ないが、この小皿を一枚使わせてもらおう。俺はそっと手に取って晴臣さんと対峙している彼のいつもの場所めがけて投げつけた。流石に、石のような攻撃力は無かったが何かに気付いた晴臣さんがその俺が皿を投げてぶち当てた右の太ももめがけて斬りつける。
「ぎ、ギャアアアアアアアアアアア!!」
「うるさ……」
久遠の耳を塞いでぼそりとそう呟く。今の俺は相当冷めた目で見ていると思うが気にしていられない。ぐすぐすっと泣いている久遠を慰めながら彼の様子を伺う。晴臣さんによって太ももから斬られた足は消えていた。
その現象は、妖魔のとある部分を破壊した時に起こるものだ。足だけということは、まだ生きているのか、それとも人だからなのか判断がつかない。ただ、彼は斬られた足を抑えながら地面をのたうち回ったかと思えば首をかきむしりはじめしまいに動かなくなった。
終わったようだ。
全く人騒がせな男だった。俺はそう思って腰をあげようとして月彦君に引っ張られた。
ちろちろと舌を出している白蛇様はすりと俺に頬ずりしてきた。それからぴちぴちと尻尾を振るので気に入ってくれているんだと思う。良かった。
「くちゃも!き!!」
「あ、すごい金色だね」
「んふふ~」
全部に金箔をはった貝を見せられた。俺が金なんて言ったばかりに、久遠の遊び道具となってしまったものたちだ。そして久遠はその貝と俺の貝を合わせる。対のものだったらしくぴったりはまった。
「くちゃとしちゃの!」
「そうだね。一緒だね」
「ねー、ぇ……」
久遠が不自然にそう言葉を切った後、外を見つめた。それから顔を青くして悲鳴を上げる。
「きゃあああああああああっ!!」
「!? くーちゃんどうし……っ!」
「―――み、ツけタアっ!!」
不意に、そんな声が聞こえて素早く前に出た瑠奈お姉ちゃんが吹き飛んだ。其方に意識を持っていかれるが次にくる攻撃に久遠を抱えて横に転がるように避ける。きんっと金属がぶつかり合う音がして、顔をあげると晴臣さんがその人物と対峙していた。
「一体どうしてこんなところに!!」
「どけ、ドケぇ!!そノ子供に用がアる!大太刀、振り回したコドモの方だァ!!」
何処からともなくやって来た彼はそう叫んでいた。
誰だったか、一瞬思い出すのに時間がかかった。それもそのはず、ここ数か月会っていないほぼ他人と言ってもいい関係性の男であるから。
「血迷ったか健次郎!!」
「うるサい!!俺に残された時間ヲ取り戻すには、そのガキが必要ナンだぁ!!」
人としての形を保っているが声が時々おかしくなり、びく、びくっと頬がけいれんを起こしている。握っている太刀も異常なほど震えていて、晴臣さんはそれを弾いた後に腹に蹴りを入れた。その衝撃を受けて彼は大きくのけぞり後方に下がる。しかし次には不自然な動きで体を起こした。
「ころス、殺す!!邪魔するヤツハ殺ス!!」
「ひっ!」
そう低い声を出してゲラゲラと笑い声をあげている健次郎さんに久遠は悲鳴を上げてぼろぼろと泣き始めた。久遠を怖がらせている。悪い奴。俺はポンポンっと久遠の背中を叩いて優しく涙をぬぐった。
「大丈夫だよ、くーちゃん」
「しちゃ、こあい、こあいぃっ!」
「大丈夫」
申し訳ないが、この小皿を一枚使わせてもらおう。俺はそっと手に取って晴臣さんと対峙している彼のいつもの場所めがけて投げつけた。流石に、石のような攻撃力は無かったが何かに気付いた晴臣さんがその俺が皿を投げてぶち当てた右の太ももめがけて斬りつける。
「ぎ、ギャアアアアアアアアアアア!!」
「うるさ……」
久遠の耳を塞いでぼそりとそう呟く。今の俺は相当冷めた目で見ていると思うが気にしていられない。ぐすぐすっと泣いている久遠を慰めながら彼の様子を伺う。晴臣さんによって太ももから斬られた足は消えていた。
その現象は、妖魔のとある部分を破壊した時に起こるものだ。足だけということは、まだ生きているのか、それとも人だからなのか判断がつかない。ただ、彼は斬られた足を抑えながら地面をのたうち回ったかと思えば首をかきむしりはじめしまいに動かなくなった。
終わったようだ。
全く人騒がせな男だった。俺はそう思って腰をあげようとして月彦君に引っ張られた。
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