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「ところで、外の子は良いの?」
「あ、行ってもいいですか?」
「いいよ。若君は俺が見てるから。あ、窓からはだめだよ」
「はい、行ってきます!」
先ほどの燕さんの大声でも起きなかった久遠だが、起こさないように慎重に離れて見送られながら外に向かう。
今日は、月彦君も柊君も尊君もいないので静かだ。この屋敷広い割には使用人とかもいないので彼らがいないと少し寂しい気がする。晴臣さんもどこかに行っているのでますますそう感じる。
門の近くまで走っていくと拓海君がいた。
「拓海君」
「! こんにちはしーちゃん」
「こんにちは」
門の前には拓海君がいた。挨拶を返すと彼はぱっと嬉しそうに笑顔になる。門の前で俺を待っていたようだ。待たせてしまって申し訳ない。
「今日もはいって……」
「拓海さま。このようなところに……、貴様誰だ!」
「おい貴様!拓海さまに何をする気だ!!」
彼と話をしていると二人の男がそう言って、突然腰の刀を抜いた。こんな往来で真昼間にそんなものを晒すとは思わずに驚いて拓海君の手を引いて前に出る。すると彼らは刀の切っ先を迷わず俺に向けた。
「貴様拓海さまによくも乱暴なことを……っ!」
「その手を離せ!!」
「二人ともやめて!」
「拓海君下がって」
ぐっとそれを近づけさせながら二人が声を荒げる。後ろにいる拓海君が間に入ろうとするが危ないので止めた。というか、護衛対象が相手の方にいるのにどうしてこんなことをするのか分からずにじっと見つめる。
「まず、その刀をおさめてください」
「その前に拓海さまを離せ!」
「刃物を出したままの人に俺の知り合いを渡すわけにはいきません」
「黙れ!今すぐ拓海さまを誘拐した犯人だと騒ぎ立ててもいいんだぞ!!」
「……それ、本気で言っているんですか?」
今の状況、子供に刃物を向けている大人二人であるがそんな事を騒ぎ立てたとして誰がそんな言葉を信じるのだろうか。だがこの自信満々な感じを見るに、根回しでもしているのだろうか。ならここじゃなくて他の場所に移動しないとここじゃ晴臣さんに迷惑をかけそうだ。
「やめて!俺の友達だから!!」
思案していると拓海君がそう声をあげた。すると二人の男ははあっとため息をついて俺を睨みつける。
雰囲気が、俺の屋敷にいる使用人によく似ている。つまりろくでもない。
「いけません。拓海さまに相応しくない」
「ええそうです。拓海さまにふさわしいお友達は私たちが連れていきます。お兄様のようになりたくないでしょう?」
「―――っ!」
ぎゅうっと拓海君が強く俺の肩を握った。それから弱弱しく「違うもん……」と小さな声が聞こえる。俺は一度目を閉じる。柊君の言葉を思い出した。実際どんなものか聞いていないので憶測にすぎないが、多分悪いのこの人達。
じろっと下から煽るように睨みつけた。そしてずいっと前に一歩出ると彼らの突き出して来た刃物が首を滑る。動揺した彼らが少し刀を動かしてもっと首が斬れたがこれぐらいはどうってことない。
「貴方たちは自分の領分を見誤っていませんか?」
「は?」
「主人を守る。それが貴方方の仕事でしょう?それ以上のことをしようだなんてとんだ思い上がり野郎だと言ったんです」
「はっ。貴様のような人間には一生分からないだろうな。与えられた仕事だけをこなしていればいいだなんていう幼稚な考えを持つような貴様にはな」
「与えられた護衛という役目も出来ないような者がそんな大口叩くなんて傲慢極まりないですね!」
がっと一人の手首を掴んで吹っ飛ばした。運よく刀も手放してくれたのでそれを手に取って裏返しもう一人の腹に思いっきり打ち付ける。げほっと咳き込んで彼は座り込む。俺は彼らのその様子を一瞥した後に嘲笑う。
「不意打ちだったからなんて言いませんよね?護衛なんですからいつ何時も対応できるようにしなければ主人を守ることはできないでしょう?」
「この、舐めやがって!!」
刀を持っている男がそれを振り下ろす。難なく受け止めて押し返し、弾いた。あまりにも軽い斬撃だ。少し可哀想になって同情的な目を向けてしまうがどうにか表情を引き締める。
「軽いですね!護衛の仕事向いてませんよ!!」
久方ぶりに真剣同士の打ち合いだ。相手を傷つけないように慎重に力を抜きながらあまり動かないように気を付ける。真剣を持ってはいけないと言われてないから大丈夫だ。
「バカにしやがって!!」
「―――っ!!」
「しーちゃん!」
ぶん投げた男が法術を使ってきた。その射線上に拓海君がいるというのにいったい何をしているのか。この人達護衛に向いてなさ過ぎだろ。拓海君を抱えて素早く跳んで避けると俺と対峙していた男に向かって電撃が向かう。
「あ、行ってもいいですか?」
「いいよ。若君は俺が見てるから。あ、窓からはだめだよ」
「はい、行ってきます!」
先ほどの燕さんの大声でも起きなかった久遠だが、起こさないように慎重に離れて見送られながら外に向かう。
今日は、月彦君も柊君も尊君もいないので静かだ。この屋敷広い割には使用人とかもいないので彼らがいないと少し寂しい気がする。晴臣さんもどこかに行っているのでますますそう感じる。
門の近くまで走っていくと拓海君がいた。
「拓海君」
「! こんにちはしーちゃん」
「こんにちは」
門の前には拓海君がいた。挨拶を返すと彼はぱっと嬉しそうに笑顔になる。門の前で俺を待っていたようだ。待たせてしまって申し訳ない。
「今日もはいって……」
「拓海さま。このようなところに……、貴様誰だ!」
「おい貴様!拓海さまに何をする気だ!!」
彼と話をしていると二人の男がそう言って、突然腰の刀を抜いた。こんな往来で真昼間にそんなものを晒すとは思わずに驚いて拓海君の手を引いて前に出る。すると彼らは刀の切っ先を迷わず俺に向けた。
「貴様拓海さまによくも乱暴なことを……っ!」
「その手を離せ!!」
「二人ともやめて!」
「拓海君下がって」
ぐっとそれを近づけさせながら二人が声を荒げる。後ろにいる拓海君が間に入ろうとするが危ないので止めた。というか、護衛対象が相手の方にいるのにどうしてこんなことをするのか分からずにじっと見つめる。
「まず、その刀をおさめてください」
「その前に拓海さまを離せ!」
「刃物を出したままの人に俺の知り合いを渡すわけにはいきません」
「黙れ!今すぐ拓海さまを誘拐した犯人だと騒ぎ立ててもいいんだぞ!!」
「……それ、本気で言っているんですか?」
今の状況、子供に刃物を向けている大人二人であるがそんな事を騒ぎ立てたとして誰がそんな言葉を信じるのだろうか。だがこの自信満々な感じを見るに、根回しでもしているのだろうか。ならここじゃなくて他の場所に移動しないとここじゃ晴臣さんに迷惑をかけそうだ。
「やめて!俺の友達だから!!」
思案していると拓海君がそう声をあげた。すると二人の男ははあっとため息をついて俺を睨みつける。
雰囲気が、俺の屋敷にいる使用人によく似ている。つまりろくでもない。
「いけません。拓海さまに相応しくない」
「ええそうです。拓海さまにふさわしいお友達は私たちが連れていきます。お兄様のようになりたくないでしょう?」
「―――っ!」
ぎゅうっと拓海君が強く俺の肩を握った。それから弱弱しく「違うもん……」と小さな声が聞こえる。俺は一度目を閉じる。柊君の言葉を思い出した。実際どんなものか聞いていないので憶測にすぎないが、多分悪いのこの人達。
じろっと下から煽るように睨みつけた。そしてずいっと前に一歩出ると彼らの突き出して来た刃物が首を滑る。動揺した彼らが少し刀を動かしてもっと首が斬れたがこれぐらいはどうってことない。
「貴方たちは自分の領分を見誤っていませんか?」
「は?」
「主人を守る。それが貴方方の仕事でしょう?それ以上のことをしようだなんてとんだ思い上がり野郎だと言ったんです」
「はっ。貴様のような人間には一生分からないだろうな。与えられた仕事だけをこなしていればいいだなんていう幼稚な考えを持つような貴様にはな」
「与えられた護衛という役目も出来ないような者がそんな大口叩くなんて傲慢極まりないですね!」
がっと一人の手首を掴んで吹っ飛ばした。運よく刀も手放してくれたのでそれを手に取って裏返しもう一人の腹に思いっきり打ち付ける。げほっと咳き込んで彼は座り込む。俺は彼らのその様子を一瞥した後に嘲笑う。
「不意打ちだったからなんて言いませんよね?護衛なんですからいつ何時も対応できるようにしなければ主人を守ることはできないでしょう?」
「この、舐めやがって!!」
刀を持っている男がそれを振り下ろす。難なく受け止めて押し返し、弾いた。あまりにも軽い斬撃だ。少し可哀想になって同情的な目を向けてしまうがどうにか表情を引き締める。
「軽いですね!護衛の仕事向いてませんよ!!」
久方ぶりに真剣同士の打ち合いだ。相手を傷つけないように慎重に力を抜きながらあまり動かないように気を付ける。真剣を持ってはいけないと言われてないから大丈夫だ。
「バカにしやがって!!」
「―――っ!!」
「しーちゃん!」
ぶん投げた男が法術を使ってきた。その射線上に拓海君がいるというのにいったい何をしているのか。この人達護衛に向いてなさ過ぎだろ。拓海君を抱えて素早く跳んで避けると俺と対峙していた男に向かって電撃が向かう。
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