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「ねーねー窓から出てきたしーちゃん。さっきの子誰?」

「!」



振り返ると打ち合いが終わったようで手拭いで汗を拭きながらこちらに柊君がやって来た。その後ろで同じような恰好をして月彦君が駆け寄ってくる。



「師範には内緒にするが、何でそう窓から出たがるんだしーちゃん」

「そっちのほうが、楽で……」



まさか見られていたとは思わなかった。晴臣さんが見ていなくてよかった!

月彦君の質問にそう返すと彼ははっとした。



「成程!日々鍛錬という事か!!俺も今度からは窓を活用することにする!!」

「真似はしない方がいいと……」

「そうだよ。月彦受け身下手くそだからまずそれから始めた方がいいよ」

「いや助言をするのではなく……」

「確かに!!」

「あ、あああああ……」



ここに尊君がいれば諫めてくれるのに、俺がいくら危ないからと言ってもいや!お前のように強くなりたい!と月彦君は頑固なので聞いてくれない。柊君は基本的に止めないし……。そもそも俺のように強くって俺別に月彦君の前で刀を振るった覚えはないんだけどな……。



「で、さっきの子誰?」

「あ、尊君の弟の拓海君です」

「え!?あの子が!?」



話は流れてしまい、俺は柊君の質問にそう答える。すると彼は大変驚いてがしりと肩を掴まれた。



「大丈夫!?何もされてない!?」

「え?大丈夫ですよ……?」

「本当に!?尊から聞いた話だと性格悪いって!いつも護衛に囲まれてて自分と比べてバカにしてるって聞いたけど!!」

「ええ……?」



どう聞いてもお兄ちゃん大好き自慢だったけど……。あれは流石に演技ではないよね?第一さっき会ったばかりだし、弟と違って何の利益もない人にそんな猫かぶりをするような事はしないと思うけど。

そう考えていたら俺の表情から柊君がこういう。



「……そんなでもない?」

「はい。寧ろ尊君のことが大好きみたいで、すかさず尊君自慢をされましたが……」

「そ、そうなの?うーん。まあ、会ってもいない子をとやかく言って痛い目に遭ったのでこの話は終わりにしよう」

「そうですね」



そんな風に尊君が拓海君を思っていたなんて。だから嬉しくなさそうだって言ってたのか。でも、拓海君は尊君が大好きなんだよね?このままでいるのは良くない気がする……。ただ、まだ彼らのことをよく知らないので慎重に判断した方がいいだろう。第三者がいてこじれてしまうこともあるから。



「ところで、部屋に戻らなくていいのか?」

「え?」

「いや、くーちゃんが目を覚ましたら……」

「しちゃない――――――っ!!」



月彦君が言い終わる前に久遠の叫び声が響いた。俺ははっとして慌てて飛んで瓦を掴み、よじ登る。それから部屋に駆け込むがその前に晴臣さんが窓の前で仁王立ちをしていた。



「しーちゃん?なんで窓から帰ってきたんです?」

「あ、う……」

「輝夜に報告します」

「そ、それだけは!!」



最近動いてもいいって言われたばかりなのに!思わず晴臣さんに縋りつこうとしたがその前にびゅんっと久遠に抱き着かれた。そして、びしっと俺を指さす。



「しちゃ、きししん!しちゃだけ、でない!!」

「ご、ごめんね。もうしないから、くーちゃん……」

「めっ!かぐしぇしぇにゆー!!」

「そ、そんな……っ!!」



ふくれっ面で絶対に許さないという表情でぐりぐり頭を腹にこすられる。唯一晴臣さんに対抗できる手段だったのに。一縷の望みにかけて晴臣さんを見ると、すでに紙に何か書いておりそれが鳥の形に折られ、すーっと窓から出ていってしまう。そして俺と目が合うとニッコリ笑顔になった。



「報告しました」

「……」



次の日、終始見ていた月彦君と柊君の証言で二階から塀に飛び降りた挙句そのまま外に降り立ったという俺の行動が発覚。輝夜先生は大層ご立腹で「お前は具体的に行動範囲を言わないと分かんねえのか、このドアホがぁ!!」と最後に暴言を吐いてしまった。俺が悪いのに瑠奈お姉ちゃんに逆さづりにされてしまった。



お、おろして、おろしてあげてください……。

ーーーー
前回告知を忘れておりました。

改稿した際にやり直し前の話を消しましたが、新たには別作品枠であげております。多少加筆しました。
if話も書いたのでお読みいただけると私が嬉しいです(笑)
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