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毘沙門家
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一先ず、このまま行ったら門前払いなので適当な傷を作らなければいけない。俺は刀を手にして思いっきり自分の身体を斬りつけた。
斬りつけたそばからどうしてか傷が治る。
あれ?
白蛇様を見る。白蛇様はびちびちと俺の肩を叩いていた。もう一度斬ってみる。治った。
「白蛇様?あの、このままじゃ俺家に帰れないんですけど……」
そう訴えると白蛇様はてしてしと尻尾で自分を叩く。任せろっという事だろうか。
「でも白蛇様、大丈夫なんですか……?」
血を吐いた場面を思い出して恐る恐るそう聞く。彼はそれでも変わらない態度で、まあ、追い出されたらその時考えようと思い直す。
俺はよろよろと歩きながら毘沙門の裏門の方に向かった。自分がこの家のものだということはできるだけ隠したいので少しでも目立たないようにするためだ。
晴臣さんや久遠と同じ家族だったら自慢するように堂々と入るんだけど……。俺はこのすごい人たちの血縁なんだぞ!みたいな……。
自分で想像しておいて、碌でもない大人になるだろうなと苦笑する。
裏門を控えめに叩くと使用人が「はーい」と言いながら開ける。しかし、俺を見た瞬間に顔は歪んでバタンッと何も言わずにすぐ閉じた。
これでいい。あとは勝手にあの使用人が話をして理央が可哀想だから入れてあげて?反省してるだろうしと言って中に招く。だからそれまでこの門のところに座り込んでいればいいのだ。門の隣の塀に背中を預けるように座り込む。前まではいつも一人で心細くて早く入れてくれないかと思っていたが、今は白蛇様もいるから寂しくない。
そう思っていたら父が現れた。
俺の姿を見てはっと鼻で笑う。
「何だその姿は。みすぼらしい」
いつものように俺が外から帰ってきた姿を見ると彼はそう言っていやそうに顔をゆがめた。
彼の言うみすぼらしい格好をしているだろうか。いつもよりかなり小綺麗なのだが……。
そう思ってちらっと懐に入っている白蛇様を見た。白蛇様は何だか得意げな顔をしている気がする。流石白蛇様だ。どうにかなったらしい。
すると、弟もやって来た。俺の姿を見るとふっと噴き出した後にぐいっと父の裾を掴む。
「お父様、兄さま可哀想ですよ。もう入れてあげましょう?きっと、何も食べられなくて困ってるはずです……」
「だがな……」
「新しい壺を買えばいいんですよ!ほら、兄さまが反省してお金になりそうなものを持って来たじゃないですか!」
「!」
そう言って弟は俺が背負っている刀を指さす。一瞬どきりとしたが、前はぼろい刀だって言って返してくれたから、多分大丈夫だ。
俺は背中からその刀を取って近づいてきた使用人に渡す。それを使用人は受け取って父に渡した。
父はじろじろとそれを見た後に鞘から刀を抜く。
「お、おおお!なんだこれは!」
「わーすごい!刃が光ってる!」
「……!」
俺にもそう見える。
おかしい。前は俺と父と弟で認識が違ったはずだった。
父は刃こぼれの酷い刀だと。弟は半分に折れた刀だと。俺には見事な刀身の大太刀にしか見えなかったのに。
だから少なくとも弟と俺で同じ刀に見えるのはおかしい。
「そうだな。これは、法術か?文字が刻まれているな。鑑定士を呼べ」
「あ、本当だ!これって最近習った上位法術を行うための文字だよお父様!えーっと、『焔 纏』かな?」
「何!?焔だと!?素晴らしい!この歳から解読できるなんて流石私の自慢の息子だ!」
「えへへ~」
文字?俺にはそんなものは見えない。
父は上機嫌にその刀を持って行ってしまう。それについていく理央がくるりと振り返った。
「お父様!反省した兄さまは入れてあげてもいいんじゃないですか?」
「ん?ああ、そうだな。適当に入れ」
「だって!良かったね、兄さま!」
「あ、りがとうございます……」
そう言って深々と頭を下げる。
まさか、刀を取られてしまうとは思わずどうしようと不安が押し寄せる。この前みたいな妖魔が現れたら丸腰で戦わなければいけない……。石だけではもう対抗できないだろう。
どう、しよう……。
ーーーー
軽いおしらせです。
あらすじにも記載しておりますがこちらムーンライトノベルズにも連載中です。
アルファポリスでは1話3000字以内を目指してるので短く切っております。
しかし、ムーンでは一気に見れますので早く続きが読みたい方はムーンの方に(笑)ただ、ムーンは1話が大体3000字以上ですので長い文章読むのが苦手な方は不向きになってます!
斬りつけたそばからどうしてか傷が治る。
あれ?
白蛇様を見る。白蛇様はびちびちと俺の肩を叩いていた。もう一度斬ってみる。治った。
「白蛇様?あの、このままじゃ俺家に帰れないんですけど……」
そう訴えると白蛇様はてしてしと尻尾で自分を叩く。任せろっという事だろうか。
「でも白蛇様、大丈夫なんですか……?」
血を吐いた場面を思い出して恐る恐るそう聞く。彼はそれでも変わらない態度で、まあ、追い出されたらその時考えようと思い直す。
俺はよろよろと歩きながら毘沙門の裏門の方に向かった。自分がこの家のものだということはできるだけ隠したいので少しでも目立たないようにするためだ。
晴臣さんや久遠と同じ家族だったら自慢するように堂々と入るんだけど……。俺はこのすごい人たちの血縁なんだぞ!みたいな……。
自分で想像しておいて、碌でもない大人になるだろうなと苦笑する。
裏門を控えめに叩くと使用人が「はーい」と言いながら開ける。しかし、俺を見た瞬間に顔は歪んでバタンッと何も言わずにすぐ閉じた。
これでいい。あとは勝手にあの使用人が話をして理央が可哀想だから入れてあげて?反省してるだろうしと言って中に招く。だからそれまでこの門のところに座り込んでいればいいのだ。門の隣の塀に背中を預けるように座り込む。前まではいつも一人で心細くて早く入れてくれないかと思っていたが、今は白蛇様もいるから寂しくない。
そう思っていたら父が現れた。
俺の姿を見てはっと鼻で笑う。
「何だその姿は。みすぼらしい」
いつものように俺が外から帰ってきた姿を見ると彼はそう言っていやそうに顔をゆがめた。
彼の言うみすぼらしい格好をしているだろうか。いつもよりかなり小綺麗なのだが……。
そう思ってちらっと懐に入っている白蛇様を見た。白蛇様は何だか得意げな顔をしている気がする。流石白蛇様だ。どうにかなったらしい。
すると、弟もやって来た。俺の姿を見るとふっと噴き出した後にぐいっと父の裾を掴む。
「お父様、兄さま可哀想ですよ。もう入れてあげましょう?きっと、何も食べられなくて困ってるはずです……」
「だがな……」
「新しい壺を買えばいいんですよ!ほら、兄さまが反省してお金になりそうなものを持って来たじゃないですか!」
「!」
そう言って弟は俺が背負っている刀を指さす。一瞬どきりとしたが、前はぼろい刀だって言って返してくれたから、多分大丈夫だ。
俺は背中からその刀を取って近づいてきた使用人に渡す。それを使用人は受け取って父に渡した。
父はじろじろとそれを見た後に鞘から刀を抜く。
「お、おおお!なんだこれは!」
「わーすごい!刃が光ってる!」
「……!」
俺にもそう見える。
おかしい。前は俺と父と弟で認識が違ったはずだった。
父は刃こぼれの酷い刀だと。弟は半分に折れた刀だと。俺には見事な刀身の大太刀にしか見えなかったのに。
だから少なくとも弟と俺で同じ刀に見えるのはおかしい。
「そうだな。これは、法術か?文字が刻まれているな。鑑定士を呼べ」
「あ、本当だ!これって最近習った上位法術を行うための文字だよお父様!えーっと、『焔 纏』かな?」
「何!?焔だと!?素晴らしい!この歳から解読できるなんて流石私の自慢の息子だ!」
「えへへ~」
文字?俺にはそんなものは見えない。
父は上機嫌にその刀を持って行ってしまう。それについていく理央がくるりと振り返った。
「お父様!反省した兄さまは入れてあげてもいいんじゃないですか?」
「ん?ああ、そうだな。適当に入れ」
「だって!良かったね、兄さま!」
「あ、りがとうございます……」
そう言って深々と頭を下げる。
まさか、刀を取られてしまうとは思わずどうしようと不安が押し寄せる。この前みたいな妖魔が現れたら丸腰で戦わなければいけない……。石だけではもう対抗できないだろう。
どう、しよう……。
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軽いおしらせです。
あらすじにも記載しておりますがこちらムーンライトノベルズにも連載中です。
アルファポリスでは1話3000字以内を目指してるので短く切っております。
しかし、ムーンでは一気に見れますので早く続きが読みたい方はムーンの方に(笑)ただ、ムーンは1話が大体3000字以上ですので長い文章読むのが苦手な方は不向きになってます!
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