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襲来

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今日もいい天気である。



珍しく朝に久臣さんがいたと思えば、暫く遠くの方に行くから帰れないという事を伝えたかったらしい。

暫く帰れない……。不安だ。燕さんが言っていた盗賊についてなにか新しい情報でも入ったからその調査にでも派遣されたのかもしれない。



未だに彼らがどんな家門であるのかわからないが、少なくとも七宝の中の分家というあたりはついている。あまり分家とも関わりを持ったことがないので具体的にどこの派閥かと言われてもわからないけれど、一般市民ではないだろう。

久臣さんがいない以上俺がしっかりこの屋敷を守らなければ。不安は尽きないが、やらなければならない。



久遠を一人にさせるような未来は絶対に回避する。



「しちゃしちゃ!!」

「どうしたのくーちゃん」



たまには静かに遊んだらいかがですか?と晴臣さんが引っ張ってきた囲碁で九郎と遊んでいると久遠がバタバタと走ってこちらにやってきた。

久遠は何やら晴臣さんと予定があったようで珍しく彼と二人で外に行っていた。だから九郎と遊んでいたのだが、その用事は終わったらしい。

どうしたのだろうと九郎と一緒にそちらを見ているとずいっと目の前に桜がついた枝が現れた。



「こえ!!」

「あ。桜?」

「う!はるちゃがとってくれたの!!あげう!」

「ありがとう」



枝ごと折って渡されるなんて思わなかったがにこにこ笑顔の久遠にそんな水を差すような事はいわない。

それを受け取ってどこに置こうかなと思っているとすぐに誰かがそれを受け取って預かっておきますとどこかに行った。



ふと、碁盤を見ると白蛇様が俺の黒の碁石を咥えてパチンパチンと動かしている。いつの間にか、俺の代わりに九郎と遊んでいたようだ。九郎は、白蛇様の碁石を見てむうっと唸る。



「そうくるかー。じゃあここ」



パチン。



「げ、やられた。今度はここだ!」



白蛇様はぶんぶんとご機嫌に尻尾を振って楽しんでいる。それを横目に、久遠が素早く俺の横に陣取ったのを見てそちらを向いた。先ほどの出来事を教えようと一生懸命口を動かしてくれる。だから俺は彼の話を聞く体勢に入ったのだ。



「きょおね、あ、の……」

「!? おい大丈夫か白蛇!!」



しかし、彼の言葉はそこで途切れた。表情が抜け落ちたような顔になりその変貌に驚くと同時に九郎の声に白蛇様をみた。白蛇様は咳き込みながら血を吐いている。慌てて彼の体をさすって状態を確認したかったが、次の瞬間久遠の悲鳴が上がった。



「きゃああああああああああああああっ!!!」

「!? くーちゃんどうし……っ!」

「伏せろ!!」



九郎の声に久遠にかぶさるように体を伏せると何かが頭上をよぎった。ばきばきっと支柱を壊す音がしてぶうんぶうんっと羽虫の音がする。



はっと身を起こしてそちらを見ると蜂がいた。



一匹大きな蜂とそれを囲むように小さな蜂が飛んでいる。

見たことがない妖魔だ。

思わず呆然とそれを見ていると、小さな蜂が大群で移動しながらこちらに向かってくる。応戦しなければと、久遠を背後に刀を手にするとその前に晴臣さんが入って風を起こす。



その風は壁になって向かってくる蜂を抑え、そして切り刻む。

突風に飛ばされないように白蛇様を懐に入れて晴臣さんを呼んだ。



「晴臣さん!!」

「若を連れて逃げてください!!」

「―――っ!」



俺も応戦した方がいいとか考えるよりも先に久遠の安全確保が大事だ。

彼の指示に従いすぐに久遠の手を引いてこの場を離れようとしたら隣にいた九郎が苦しみだした。



「九郎!?」

「あ、あがああああっ!!!!」

「っ!?」

「しちゃ!!!」



九郎が俺に掴みかかってきた。恐ろしい握力で俺の腕を掴んだと思えば引きずられ諸共、庭に転がり込んでしまう。抵抗しようにもものすごい力で抑えきれない。



ここは気絶させるしか……っ!!



そう思って思いっきり殴ろうとしたが、ふと大きな影が差す。

其方を見ると大きな蜂がこちらに飛んできて羽を動かす。強い突風にふわりと体が浮くと同時に九郎諸共勢いよく飛ばされた。



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