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「……?」
恐る恐る目を開けると眼前には白い何かが映っている。
何だろうかこれは。そう思って体を起こし周りを見ると俺は白い鳥のような何かに乗せられている。それはゆっくりと地面に降りて、首を下に動かした。俺が下りやすいようにしてくれていると思い、俺は慌ててその白い鳥から地面に移ると「晴兄!」と九郎の声がした。
「初心者のしーちゃんをあんな高くまで投げなくていいでしょ!」
「ご、ごめんなさい。そこまで高く飛ばしたつもりはなかったんですが、その、思いのほか軽くて……ご飯食べてます?」
「責任転換すんな!!!晴兄が悪い!!!!」
「も、勿論私が悪いですぅ!!」
九郎が、いつもは晴臣さんに怒られている九郎が、晴臣さんを叱っている。
その不思議な光景をまじまじと見ていると久遠が慌てて俺に近づいてきた。顔は青白く、大きな瞳はぐしゅぐしゅと涙をためている。
「ごえんなじゃい……っ!!じーちゃ、ごべんなじぃ……っ!!」
「だ、大丈夫だよ?ほら怪我無いし!」
あああああっ!!と久遠は泣き叫んでいる、ひっくひっくとしゃくりをあげて呼吸がしずらくなっているようだ。
少しでも落ち着かせようとするがおろおろするだけで何もできない。とりあえず抱きしめた方がいいだろうかと思っているとひょいっと久遠が燕さんに抱きしめられた。
「はいはい、若。しーちゃん様は無事ですよー。ほーら、ゆらゆら~」
「ぅ、くっ、ひっ、ぅ……っ」
燕さんが久遠を抱っこしながらゆらゆら揺れて久遠を宥める。ひっひっと呼吸が浅くなっていたが、暫くして落ち着いたものになっていった。
それにほっとしながら燕さんを見る。彼は中々手際よく彼を宥めていた。経験があるのだろうか?
「燕さん、慣れてますね」
「え、あーそうですね。妹がいるからですかね」
「妹さん?」
「はい」
成程。妹さんも久遠みたいに激しく泣いたことがあるからきっと手慣れているのだろう。
「よく泣くんですか?あ、敬語大丈夫ですよ」
「あ、本当?ありがとう、得意じゃないから助かるよ。それで君の質問だけど、妹はあまり泣かないかなー」
「え?」
あやしたがうまいからそうだと思ったが、違うようだ。じゃあ違う兄弟とか?それとも子供と触れ合う機会が多いからとか?
うんうんと悩んでいると俺の考えが伝わったのか燕さんが少し笑う。
「いやあ、うちの妹、目に入れてもいたくないくらい可愛いんだけど、ちょーっと我慢強くてねー。ぎりぎりになるまでため込んじゃってよくこうなっちゃうんだよね~」
「そうなんですか」
「そうそう。しーちゃん様と同じくらいの歳だからついあんなことして……。本当にごめんね」
「いいえ。燕さんの優しさは伝わってましたので」
「……しーちゃん様、ああいうときはふざけんじゃねえって言ってぶん殴っていいんだよ?」
「それ相応のことをした人にはそうします」
「……」
燕さんが疑い深い目で俺を見ている。
な、なんですかその顔。俺だってやるときはやるんですよ……?
「つまちゃ、もうい」
「あ、分かりました」
久遠がごしごしと目をこするので慌てて燕さんが法術で濡らした手拭いを久遠の目元に置く。しかし、久遠はそれが嫌なのかぺっとそれを投げ捨てる。それを地面に落ちる前に拾う燕さん。
「いなないー!!」
「だめですよ。腫れちゃいますから」
「しちゃないー!!」
「俺はいるから。手つないであそこに座ろ」
「んむぅ……」
久遠は渋々と言ったように俺と手を先に繋いだ後に縁側まで歩いて座る。そして目をつぶって早くしろっとくいっと顔を動かした。燕さんはその久遠の目元に手拭いを置いて、傍に控える。流石だ。こういうのにも慣れているのだろう。
それにしても、空中であんなに動けなくなるとは……。これは少し考えないといけないな。今後の活動に支障をきたすかもしれない。
そう思ってどう空中で立ち回れるかを考えていると「しーちゃん!!」と晴臣さんに呼ばれた。
「ほんと―にごめんなさい!!」
「え!?晴臣さん大丈夫ですよ!!俺も怪我無いし、立ってください!!」
九郎に怒られていた晴臣さんがこちらに来て土下座する。庭で外の地面なのに服が汚れてしまう。
そう思って晴臣さんをどうにか立たせる。九郎にもこってり怒られていたのを見ているのでそれ以上俺が何か言うことはない。それに、俺に足りないところも見つかったし。
「ほ、本当にごめんなさい!!怖い思いをさせましたよね!?」
「いえ、俺の修行不足でした。それに助けてくださったでしょう?」
多分晴臣さんの式神だと思ってそう言うと彼はふるふると首を振る。そして九郎を見た。
「あの式神は九郎です」
「え!」
「ふふん。すごいだろ。俺の母さんが都一の式神使いだからな!」
「凄い!九郎ありがとう!」
「どーいたしまして!」
まさか九郎の式神だとは思わず俺がそう言って称賛すると彼は得意げな顔をしていた。そうなるのも分かる。式神使いはそう多くない。理由は詳しくは知らないが、法術の中で一番難しい術だと聞く。だから使えるものが少ないという。結果、式神使いは重用される。
才能だけで言えば、七宝に選ばれてもおかしくない。
そういえば、九郎の苗字って……。
そこまで考えて頭を振った。
自分自身一番詮索されたくないところだ。じゃあしーちゃんは?と聞かれたら答えられない。
だから俺もこれ以上は考えない。
恐る恐る目を開けると眼前には白い何かが映っている。
何だろうかこれは。そう思って体を起こし周りを見ると俺は白い鳥のような何かに乗せられている。それはゆっくりと地面に降りて、首を下に動かした。俺が下りやすいようにしてくれていると思い、俺は慌ててその白い鳥から地面に移ると「晴兄!」と九郎の声がした。
「初心者のしーちゃんをあんな高くまで投げなくていいでしょ!」
「ご、ごめんなさい。そこまで高く飛ばしたつもりはなかったんですが、その、思いのほか軽くて……ご飯食べてます?」
「責任転換すんな!!!晴兄が悪い!!!!」
「も、勿論私が悪いですぅ!!」
九郎が、いつもは晴臣さんに怒られている九郎が、晴臣さんを叱っている。
その不思議な光景をまじまじと見ていると久遠が慌てて俺に近づいてきた。顔は青白く、大きな瞳はぐしゅぐしゅと涙をためている。
「ごえんなじゃい……っ!!じーちゃ、ごべんなじぃ……っ!!」
「だ、大丈夫だよ?ほら怪我無いし!」
あああああっ!!と久遠は泣き叫んでいる、ひっくひっくとしゃくりをあげて呼吸がしずらくなっているようだ。
少しでも落ち着かせようとするがおろおろするだけで何もできない。とりあえず抱きしめた方がいいだろうかと思っているとひょいっと久遠が燕さんに抱きしめられた。
「はいはい、若。しーちゃん様は無事ですよー。ほーら、ゆらゆら~」
「ぅ、くっ、ひっ、ぅ……っ」
燕さんが久遠を抱っこしながらゆらゆら揺れて久遠を宥める。ひっひっと呼吸が浅くなっていたが、暫くして落ち着いたものになっていった。
それにほっとしながら燕さんを見る。彼は中々手際よく彼を宥めていた。経験があるのだろうか?
「燕さん、慣れてますね」
「え、あーそうですね。妹がいるからですかね」
「妹さん?」
「はい」
成程。妹さんも久遠みたいに激しく泣いたことがあるからきっと手慣れているのだろう。
「よく泣くんですか?あ、敬語大丈夫ですよ」
「あ、本当?ありがとう、得意じゃないから助かるよ。それで君の質問だけど、妹はあまり泣かないかなー」
「え?」
あやしたがうまいからそうだと思ったが、違うようだ。じゃあ違う兄弟とか?それとも子供と触れ合う機会が多いからとか?
うんうんと悩んでいると俺の考えが伝わったのか燕さんが少し笑う。
「いやあ、うちの妹、目に入れてもいたくないくらい可愛いんだけど、ちょーっと我慢強くてねー。ぎりぎりになるまでため込んじゃってよくこうなっちゃうんだよね~」
「そうなんですか」
「そうそう。しーちゃん様と同じくらいの歳だからついあんなことして……。本当にごめんね」
「いいえ。燕さんの優しさは伝わってましたので」
「……しーちゃん様、ああいうときはふざけんじゃねえって言ってぶん殴っていいんだよ?」
「それ相応のことをした人にはそうします」
「……」
燕さんが疑い深い目で俺を見ている。
な、なんですかその顔。俺だってやるときはやるんですよ……?
「つまちゃ、もうい」
「あ、分かりました」
久遠がごしごしと目をこするので慌てて燕さんが法術で濡らした手拭いを久遠の目元に置く。しかし、久遠はそれが嫌なのかぺっとそれを投げ捨てる。それを地面に落ちる前に拾う燕さん。
「いなないー!!」
「だめですよ。腫れちゃいますから」
「しちゃないー!!」
「俺はいるから。手つないであそこに座ろ」
「んむぅ……」
久遠は渋々と言ったように俺と手を先に繋いだ後に縁側まで歩いて座る。そして目をつぶって早くしろっとくいっと顔を動かした。燕さんはその久遠の目元に手拭いを置いて、傍に控える。流石だ。こういうのにも慣れているのだろう。
それにしても、空中であんなに動けなくなるとは……。これは少し考えないといけないな。今後の活動に支障をきたすかもしれない。
そう思ってどう空中で立ち回れるかを考えていると「しーちゃん!!」と晴臣さんに呼ばれた。
「ほんと―にごめんなさい!!」
「え!?晴臣さん大丈夫ですよ!!俺も怪我無いし、立ってください!!」
九郎に怒られていた晴臣さんがこちらに来て土下座する。庭で外の地面なのに服が汚れてしまう。
そう思って晴臣さんをどうにか立たせる。九郎にもこってり怒られていたのを見ているのでそれ以上俺が何か言うことはない。それに、俺に足りないところも見つかったし。
「ほ、本当にごめんなさい!!怖い思いをさせましたよね!?」
「いえ、俺の修行不足でした。それに助けてくださったでしょう?」
多分晴臣さんの式神だと思ってそう言うと彼はふるふると首を振る。そして九郎を見た。
「あの式神は九郎です」
「え!」
「ふふん。すごいだろ。俺の母さんが都一の式神使いだからな!」
「凄い!九郎ありがとう!」
「どーいたしまして!」
まさか九郎の式神だとは思わず俺がそう言って称賛すると彼は得意げな顔をしていた。そうなるのも分かる。式神使いはそう多くない。理由は詳しくは知らないが、法術の中で一番難しい術だと聞く。だから使えるものが少ないという。結果、式神使いは重用される。
才能だけで言えば、七宝に選ばれてもおかしくない。
そういえば、九郎の苗字って……。
そこまで考えて頭を振った。
自分自身一番詮索されたくないところだ。じゃあしーちゃんは?と聞かれたら答えられない。
だから俺もこれ以上は考えない。
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