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晴臣さんの刀と俺が持っていたあの太刀とは長さも勿論だが重さも違う。とはいえ、そんなに気にすることではないが、一番は長さだろう。いつものように振っていると届かないなんてことがありそうだ。

うんうんと頷いて次は刀の入手をどうするかと考え込むと晴臣さんが質問をしてくる。



「しーちゃんは、誰から剣術を?」

「え?あ、独学です」

「そうですか、では剣術の師は募集していませんか?」

「え」



晴臣さんを見る。

ま、まさか、え?いや、まだ期待してはいけない。大体にして、名前すら明かしていない子供にそんな上等なものはつかないだろう。それに払える賃金もない。



「賃金も払えませんし、名前も明かせないような怪しい子供ですから、募集しても誰も来ませんよ」

「私が立候補しますが」

「え!」



まさか晴臣さんが!?いや佇まいが実力者であることは感じていたが、そんな提案されるなんて!てっきり誰かを紹介してくれるものだと思っていた!



「これでも弟子は数名いまして、実力はありますよ。お金も要りません」

「い、いや、でも、その、お、俺……っ」

「いいじゃん!晴兄に教えて貰えば!」



断った方がいいと思い口を開こうとしたら九郎が隣でそう言ってきた。彼の方を見ると、うんうんと頷いてそれから肩を叩かれる。



「万が一・・・があったら困るんだろー?だったら好意に甘えた方がよくない?」

「そ、れは……」

「いやになったらやめればいいしな!俺はしょっちゅうだぜ!」



それは、自慢げに言う事なんですか……?



そう思って彼を見る。彼は晴臣さんに拳骨を食らっていってーっと声をあげた。

まあ、うん、九郎が悪いかな……。



「九郎の様な子は困りますが、貴方のような弟子は大歓迎ですよ」

「……」



折角大歓迎してくれているのであればこれを利用した方がきっと久遠を守れる確率はあがるだろう。

一番の問題であるお金が発生しなかれば大抵のことはどうにかなりそうなので俺は頷いた。



「よ、よろしくお願いします」

「勿論です、しーちゃん。あ、無理に名前を言う必要はありませんからね」

「す、すみません……」



良い人なのに何も明かせない自分が嫌になってくる。

ここまで譲歩されているのに。でも、俺の名前を知ったらきっと……。

最悪な場面を想像してぶんぶん首を振った。俺が話さなければきっと漏れない情報だから大丈夫。



「では早速!基本的な構えを教えましょう」

「え!い、今から大丈夫なんですか!?」

「ええ!こういうのは早い方がいいと思いますし」



晴臣さんに手を引かれて、晴臣さんが自分の刀を俺に渡す。

何故渡されているのか分からずにとりあえず受け取ると彼は俺の後ろに回って握り方や姿勢を教えてくれた。

……え、いや、これで……?



「あ、の、こういう時って木刀とか……」

「しーちゃんの場合、軽すぎてすっぽ抜けそうなので逆に危ないと思いました」

「いや、でも、刀って大事なものじゃ……」

「別に私は武士もののふではありませんし、斬れれば何でも構わないので大丈夫です」



……こういう性格の人って結構厄介な気がする。時には刀をぶん投げてくるような戦法を取って殴ってきそうだ。

……俺も、よくそれするし。

後ろに回って姿勢を正してくれる晴臣さんに教えられながらその刀を振ると、ぴたりと晴臣さんの足元に久遠が張り付いた。



「くちゃも!はるちゃ、くちゃもやりたい!!」

「おやおや、若君。こんなお年から剣術に興味が出るとは嬉しい限りです。ですが若君、今の若君は小さすぎるのでできません」

「くちゃもやりたい!!」

「うーん、これは引かないな?」



曇りなき眼で久遠は晴臣さんを見つめる。晴臣さんは長年の勘からか久遠が引かないことを察したようで久遠をひょいっと小脇に抱えた。それからびゅんっと庭を走り回る。



「きゃあああああっ!!」

「風が気持ちいいですね~」



呑気な声をあげる晴臣さんと楽しそうな声をあげてきゃらきゃらと笑う久遠。それを見ている九郎と俺。

微笑ましい様に見えるが、小脇に抱えて走り出した晴臣さんは庭だけでなく塀にも跳んで走り屋根に飛び移ってくるくる回る。

だ、大丈夫か。大丈夫なのか……。

はらはらしながら俺はそれを見ていて、九郎はげんなりとした顔をしている。実際にやられたのかもしれない。俺もあれやられたら吐くかもしれん。

ただ、久遠が楽しそうなのは確かなので俺も習得すべきか……。

ふっと教えられたとおりに刀を振るいながらそんな事を思案すると彼らが戻ってきた。





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