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兄弟?
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はっと目が責めると間近に久遠の顔があった。俺と目が合うとぱああっと顔を明るくさせてにっこり笑顔になる。
「しちゃ!!おはおう!」
「あ、お、おはよう」
「ん!」
よいしょっと体を起こした久遠が今度は近くにあった桶に手を突っ込んだ。俺は慌ててそちらに向かうと桶には水と手拭いがある。久遠は水の含んだ手拭いを手にして俺の顔にべちゃっとつける。
「ふきふき!!」
「ちょ、まって、くーちゃん。一旦絞ってから、ね?」
「う?」
久遠からその手拭いを取って絞ってから自分の顔を拭く。水だが、全く冷たくない。少し温かくていつも冷たい井戸水で顔を洗っていた俺に驚きの代物だ。これも法術の何かだろうか。俺にはないから水を温めるには火を起こす必要があり、一度の洗顔にその手間と資源を考えれば必要ないものだ。俺にとっては。
「しちゃ!めし!」
「お、え?」
「めし!!」
飯ってご飯の事でいいのかな?え?飯って久遠に教えたの誰?いやでも違うめしの場合もあるかもしれないし、早合点すぎるだろうか。
久遠に手を引かれながら廊下に出ると足音が聞こえ、角から大人の人が出てきた。
「若様。おはようございます」
出てきたのは黒い短髪の男の人である。にこにこ笑顔で快活そうな人に見える。
若様、というのは久遠のことだろうか。こんな立派な屋敷に住んでいるんだからその呼び方に不自然はないが改めて久遠はかなりいいところの子供なんだと思う。
そんな事を考えていたらその男の人がじっと俺を見た。
「新しい使用人ですか?」
「あ、いえ、僕は……」
「君には聞いてないから大丈夫だよ」
「失礼いたしました」
しまった。沙織さんと久臣さんが優しいから勘違いしていた。本来はこうされる身分だから出しゃばらないようにしないと。
膝をついて頭を下げようとしたら、ぱんっと何かがはじけた音がした。その音の方を見ると彼は右耳を抑えている。その手から軽く血が流れていてぎょっとした。
「え、と、若様?」
「……」
「申し訳ありません。私はこれで失礼致しますね」
久遠の表情は無かった。じっと黒い瞳が何の感情もなく彼を見つめており、一言も話すことなく俺の腰に抱き着いて彼が去るのを待っていた。
耳大丈夫だろうか。何があったのか丁度視線を下にしていたんで分からなかった。まさか久遠がやったわけでもないだろうし……。
「しちゃぁ、だーじょぶ?」
「え?あ、僕は大丈夫だよ……?」
俺よりさっきの人の方が怪我してるし、大丈夫ではないんじゃないか?俺は何もされてないし……。
そう思って首をかしげるとぎゅっともう一度抱きしめられた後に手を握ってこっちと連れていかれる。
連れていかれた場所は昨日の場所である。多分、俺の分と久遠の分、あと一つあって誰の分だろうと思ったが、もしや俺の分がなくて他の人のものでは?という可能性も……。
「しちゃここ!」
「あ、うん、ありがとう」
久遠は俺の場所をばしばし叩くのでそこに座る。またしても美味しいご飯にありつけるようだ。かなり嬉しい。この恩はどこかで返さなければ!
そう思っていたら廊下が騒がしい。
「あーもーうるさいなー!!なんでお前がここにいんだよ!」
「九郎様、これも貴方の為で……」
「うるさいってば!どっか行けよ!これ命令!!」
「承知いたしました……」
先ほどの男の人の声と少年の声だ。
ずんずんっと足音は此方に近づいてきてすぱんっと襖が開く。
「しちゃ!!おはおう!」
「あ、お、おはよう」
「ん!」
よいしょっと体を起こした久遠が今度は近くにあった桶に手を突っ込んだ。俺は慌ててそちらに向かうと桶には水と手拭いがある。久遠は水の含んだ手拭いを手にして俺の顔にべちゃっとつける。
「ふきふき!!」
「ちょ、まって、くーちゃん。一旦絞ってから、ね?」
「う?」
久遠からその手拭いを取って絞ってから自分の顔を拭く。水だが、全く冷たくない。少し温かくていつも冷たい井戸水で顔を洗っていた俺に驚きの代物だ。これも法術の何かだろうか。俺にはないから水を温めるには火を起こす必要があり、一度の洗顔にその手間と資源を考えれば必要ないものだ。俺にとっては。
「しちゃ!めし!」
「お、え?」
「めし!!」
飯ってご飯の事でいいのかな?え?飯って久遠に教えたの誰?いやでも違うめしの場合もあるかもしれないし、早合点すぎるだろうか。
久遠に手を引かれながら廊下に出ると足音が聞こえ、角から大人の人が出てきた。
「若様。おはようございます」
出てきたのは黒い短髪の男の人である。にこにこ笑顔で快活そうな人に見える。
若様、というのは久遠のことだろうか。こんな立派な屋敷に住んでいるんだからその呼び方に不自然はないが改めて久遠はかなりいいところの子供なんだと思う。
そんな事を考えていたらその男の人がじっと俺を見た。
「新しい使用人ですか?」
「あ、いえ、僕は……」
「君には聞いてないから大丈夫だよ」
「失礼いたしました」
しまった。沙織さんと久臣さんが優しいから勘違いしていた。本来はこうされる身分だから出しゃばらないようにしないと。
膝をついて頭を下げようとしたら、ぱんっと何かがはじけた音がした。その音の方を見ると彼は右耳を抑えている。その手から軽く血が流れていてぎょっとした。
「え、と、若様?」
「……」
「申し訳ありません。私はこれで失礼致しますね」
久遠の表情は無かった。じっと黒い瞳が何の感情もなく彼を見つめており、一言も話すことなく俺の腰に抱き着いて彼が去るのを待っていた。
耳大丈夫だろうか。何があったのか丁度視線を下にしていたんで分からなかった。まさか久遠がやったわけでもないだろうし……。
「しちゃぁ、だーじょぶ?」
「え?あ、僕は大丈夫だよ……?」
俺よりさっきの人の方が怪我してるし、大丈夫ではないんじゃないか?俺は何もされてないし……。
そう思って首をかしげるとぎゅっともう一度抱きしめられた後に手を握ってこっちと連れていかれる。
連れていかれた場所は昨日の場所である。多分、俺の分と久遠の分、あと一つあって誰の分だろうと思ったが、もしや俺の分がなくて他の人のものでは?という可能性も……。
「しちゃここ!」
「あ、うん、ありがとう」
久遠は俺の場所をばしばし叩くのでそこに座る。またしても美味しいご飯にありつけるようだ。かなり嬉しい。この恩はどこかで返さなければ!
そう思っていたら廊下が騒がしい。
「あーもーうるさいなー!!なんでお前がここにいんだよ!」
「九郎様、これも貴方の為で……」
「うるさいってば!どっか行けよ!これ命令!!」
「承知いたしました……」
先ほどの男の人の声と少年の声だ。
ずんずんっと足音は此方に近づいてきてすぱんっと襖が開く。
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